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『霧島華音』 ~不思議の依頼お受け致します。~  作者: hermina
第1章 『願いを叶えてくれるコイン』
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『願いを叶えてくれるコイン』 其の二

「え?ぶちのめすって・・・」


「ん?言葉通りの意味だよ?」


私のぶちのめす発言に驚く依子ちゃん。

・・・ああ、私も初めて華音さんにあった時に悪魔を倒すの見て驚いたっけね。


「えっと・・・そんな事出来るんですか?」


「出来るよ?」


正直楽勝だと思う。

この『コインの悪魔』はっきり言えば雑魚だと思う。

私が遭遇した『壺の悪魔』は、その場で願いを叶えられた。そして叶えた分だけ魂を取られるってヤツ。

つまりは最初からその位のチカラは備えているって事。

でもこのコインの悪魔は、条件を突き付けてその場では叶えない。

・・・ひょっとしたら、叶えるチカラすら無いのかも知れない。

まあ、人の欲望をチカラにとか、絶望させておいて・・・とか、無い事も無いけどね。

兎に角、コインの悪魔は壺の悪魔より数段格下って事ね。

当然、雑魚だからって侮ったりはしない。

私もチカラをつけて間もないからね。


「ま、サクサクやっちゃおうか。」

「先ずはそうだね・・・そのコインを私に売ってくれないかな?」


はいっと依子ちゃんに硬貨を手渡す。


「えっと、これは?」


「1銭。1円の1/100だよ。」


依子ちゃんは恐る恐るコインを差し出す。


「ん、これで契約成立ね。」

「花子さん。結界の部屋に。」


「はーい。」


がちゃっと、先程、衣裳部屋に通じていた部屋の扉を開ける。

でも、”繋がった”先は広い石作りのホール・・・『結界部屋』。


「え?ここ・・・店の中・・・なんですか?」


依子ちゃんの疑問は尤もだ。

そもそも、この広さのホールが『霧島華音』の中にある筈が無い。


「勿論違うよ。」


『扉があれば何処にでも移動できる』


通称、どこでも・・・コホン。

厠神かわやがみ・・・トイレの花子さんである花子さんのチカラ。


さてと・・・

私はぽいっとコインを投げ、すたすたと歩み寄り・・・ふみっ・・・踏みつける。


「ほら、あの子はコインを私に売ったよ?」

「さっさと、あの子の願いを叶えたらどうかな?」


もわっ


私の足の下で、瘴気が生まれる。


「ククク・・・そんなものは知らん。」

「大体、願いを聞くとは言ったが、叶えるとは一言も言ってない。」


「あ〜〜そういう系ね。」

「屁理屈で、有耶無耶にして、そんなチカラ最初から無いもんねぇ♪」


ぐりぐりぐり・・・


「うわ〜香奈ちゃんSだねぇ」


「そお?『女の子に踏みつけられるのはご褒美』って何かで読んだ気もするけど?」


「それ、一部の人にだけだからね?」


ぐりぐりぐりぐり・・・

足蹴にしながら、『魔術』の詠唱を始める。


「えっと・・・ものすごーく緊張感が無い気がするんですけど?」


私と花子さんの会話に依子ちゃんのツッコミが入る。


「そうかな?気のせいだよ??」


緊張感が無い様に見えるかもしれないけど、別に油断とかしている訳じゃない。

現に、足でぐりぐりしながらコインの瘴気を散らしているのだ。

実は、ぐいっぐいっとコインも抵抗をしていたりするのよね。


「おま、足をどけぬか!」


「あら、失礼。女の子の足すら退けられぬ程の弱者だとは思わなかったわ。」


悲しいかな、抵抗すら出来て無いんだけどね。

魔術の詠唱が完了する。実は会話しながらも、ちまちまやっていたのよね。

私は足を退け、コインを拾い上げる。


「これでいいかな?」


「お前!この俺様を足蹴にした罪・・・」


「あーもう、面倒くさいな。」


ぴーんとコインを指で上に弾く。

・・・そして、狙いを定め魔法を発動する。


閃熱爆炎メガブレイズ


私の右手から放たれた熱線は、コインに触れると轟炎となる。

華音さんが最も得意としていた魔術だ。


「ちょ、ま・・・」


ぶしゅう。


コインは跡形も無く消滅した。


「あ、私の願いを言ってなかったよね。・・・消滅して下さい。」


私は思い出したかのように言うと、くるりと振り向き、そのまま元の部屋に戻った。



−−−−−−−−−−



「はい、これで依頼は完了だね。」


「あ、ありがとうございます。」


まだ、ぽかーんっとしている依子ちゃん。

そして、はっした表情になる。


「あ、報酬の事・・・聞いてなかったんですけど・・・いくら払えば・・・」


「そうだね・・・」


私は考える”フリ”をする。

ちらっと『壺』の方を見たりもする。


「えっと、その・・・私、バイトして払いますから、絶対払いますから・・・」


あ、あれ??ちょっと怖がってる!?

ぶっちゃけ、報酬とか貰う気なんて全く無いんだけど!?

何か依子ちゃん・・・華音さんに会う前の私みたいで・・・他人って気がしないし。


「もう、香奈ちゃん。悪ふざけが過ぎます。」

「まったく、こんな所は華音様の真似をしなくても良いんだからね。」


「あはは・・・えっと・・・いっつかなじょーく?」


「え?じょーく??」


あ、また訳が分からないって顔してる。

私は慌てて続ける。


「えっと・・・そうね、報酬はさっきの1銭と紙幣でいいわ。」


「え?それって・・・」


「うん、別に大した事してないしね。」


(うむ、香奈の魔術の練習にちょうど良かった。)


「また猫が喋った!?」


「ふ、腹話術でーっす」


私はかのんさんを抱き上げ、「ソウナンダヨー」っと腹話術の真似事をする。

・・・誤魔化せたかな?

依子ちゃんを見る。


クスクスクス・・・


「あはは、はい。これは報酬です。」


依子ちゃんは笑いながら、1銭と紙幣を差し出す。

そして・・・


「香奈さんと花子さんのチカラと、喋る猫の事は秘密にしてあげます。」

「その代り・・・また、遊びに来ても良いですか?」


っと、にっこり笑って言った。

私の答えは当然・・・


「勿論だよ。」


私も笑いながら言った。






−−−−−−−−−−




次回の更新は1章のエピローグになります。

次回更新は今日の夕方16時30分頃になります。

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