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『霧島華音』 ~不思議の依頼お受け致します。~  作者: hermina
第1章 『願いを叶えてくれるコイン』
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『願いを叶えてくれるコイン』 其の一

「ただいま〜」


私は『霧島華音きりしまかのん』の扉を開け、中に入る。


「おかえりなさい。香奈ちゃん」(おかえり、香奈。)


見た目は今時のオシャレ小学生な『花子』さん、そして、黒猫の『かのん』さんに出迎えられる。

おっととと・・・私は入口の札を営業中に変える。

大学に通っている私が、この店を開けるのは基本的に夕方から。


『霧島華音』


前の店主の名前がそのままついたお店。

取り扱うものは、不思議な出来事。

表の看板にも、『不思議な事、何でも解決致します。』と書かれている。

不思議のトラブルに巻き込まれた人を助けたり、助けになる物を売ったりしている。

そう・・・不思議の万屋さんみたいなものだね。


「花子さん、何か変わった事はあったかな?」


「いいえ。何時も通りだよ。」


何時も通り。要は暇だったという事。

店が開いてないんだからお客さんが来るって事も・・・そう無いとは思うんだけどね。

まあ・・・開いていても暇なんだけどさ。


「花子さん。着替えるから宜しく。」


「は〜い。」


花子さんが奥の扉を開ける。

其処は衣裳部屋。

私は其処に入ると、ゴスロリ調のドレスに着替える。

華音さんも愛用していたこのドレス・・・華音さんは『ゴシックプリンセス』って呼んでたけど・・・は、私の仕事着みたいなもの。

この服に着替えると気持ちも切り替わる。

私は『桃井香奈ももいかな』。この霧島華音の店主です。



−−−−−−−−−−



こんこんっ


「は〜い。」


店の扉がノックされる。

この店にインターホンは無い。何で?って言われても、付いていない物は仕方がない。

・・・新築なんだけどね。

ノックが2回だったので、花子さんが対応する。


がちゃっと扉を開け、「何か用ですか?」と声を掛けた。

あ、花子さんの方じゃなくて、お客様みたいだね。


「えっと・・・不思議な事を何でも解決してくれるって聞いて来たんだけど・・・」


声からして・・・女の子みたい。


「花子さん、お通ししてください。」


私は花子さんに通すように伝える。


「はーい。では、お入りください。」


花子さんに連れられ・・・高校生くらいかな?・・・の女の子が入ってきた。

私は、奥に居るかのんさんに声を掛け、抱きかかえると応接室に入り、ちょっとだけ奮発して買ったソファーに遠慮がちに座る女の子の向かい側に座る。


「霧島華音へ来たという事は、不思議の依頼だね?」

「私は、桃井香奈。霧島華音の店主です。」

「先ずは・・・お名前をお聞きしてもいいかな?」


「私の名前は・・・瀬川依子せがわよりこです。」

「この・・・願いを叶えてくれるコインを・・・いえ、コインの呪いを解いて貰いたくて来ました。」


「・・・詳しくお話を聞かせて貰えますか?」


「はい。」



−−−−−−−−−−



始まりは、昨日のお昼休み。

教室で読書をしていた私に、親しくないクラスメートが話しかけてきた。

内容は願いを叶えてくれるコインを買って欲しいとの事。

正直面倒くさい私は、遠慮しておくわと突っぱねたんだけど、あまりにもしつこいので、話を聞いてしまった。

聞くとそれは、おまじないの様なモノ・・・だと、その時は思い、1円で買ってしまった。

それが間違いだった。

・・・それが、本当に願いを叶えてくれるコインだとは思わなかった。

コインは語り掛ける。


「お前の願いは何だ?」


「え?まさか本物!?」


「如何にも。」


どんな願いでも・・・私はこの時、魔が差したのかも知れません。

こんな美味しい話なんて、ある筈も無いのに。


「私は変わりたい。もっと明るく・・・そう、友達が沢山出来る様に。」


面倒くさいと思っていたあのクラスメート達。でも本当は・・・うらやましかった。

内向的な私は、友達が少ない。クラスで仲のいい子も一人しかいない。

お昼休みも本当は読書をするだけじゃなくて、友達とおしゃべりがしたい。


「お前の願いは聞いた。」

「条件は、3日以内にコインを所有した事が無い相手に、買った額より低い額で売る事だ。」


「え?条件??」


買った時の金額・・・つまりは1円。

え?1円で買ってしまった私は、其れより安く売るのは・・・


「もし、3日以内に売る事が出来なかったらどうなるの?」


「お前の魂を貰う。」

「それが・・・悪魔との契約というモノだろう。ククククク。」


「あ、悪魔!?そんなの聞いていないわ!!」


つまりあのクラスメート達は、次に売る値段が1円になるから、友達でも何でもない私に売りつけたのだ。


「ほう・・・お前は相当安い金額で買ってしまったようだな。」

「これは、よい魂が手に入りそうだ・・・ククククク・・・」

「いいな、3日以内だぞ・・・」


それきり、コインが話す事は無かった。

そして、気持ちを落ち着かせようと、お風呂に入りました。

その時鏡を見たら・・・背中に・・・変な模様があったんです。

呪われてしまったと、私は考えました。

今日は学校を休んで、いろいろと調べたり、そこの神社にも行ってお祓いをお願いしました。

でも、結果は・・・その時に、神主さんからこの店の事を聞きました。


「ここは、不思議な事を何でも解決してくれる。と。」



−−−−−−−−−−



「大体の事情は呑み込めたよ。・・・その不思議の依頼お受け致します。」

「一応・・・背中、見せて貰える?それと、コインも持って来てるかな?」


「はい。持って来ています。」


依子ちゃんは、制服を脱ぎ背中を見せる。

白い背中に、黒い墨の様なモノで禍々しい紋様の様なモノが描かれている様に見える。


「かのんさん。どう思いますか?」


(うむ、この子も言っていた様に、低級の悪魔の仕業だろう。)


「え?猫が・・・喋った!?」


依子ちゃんのツッコミはスルーして・・・花子さんが「腹話術ですよー」って誤魔化しているけど・・・私はコインの確認を行う。

古いコインだ。文字も読める文字じゃない。この模様は・・・さっき依子ちゃんの背中にあったものと同じだ。

今は気配を消しているのだろうけど、僅かながらに『チカラ』を感じる。

かのんさんの言う通り、低級の悪魔の仕業で間違いなさそう。


「そうだね。貴女・・・依子ちゃんって呼んでも良いかな?」


「あ、はい。」


「依子ちゃんがコインから聞いた通り、悪魔だね。このコインは。」

「呪われてるってのも、まあ・・・そんな解釈でいいと思うよ。」

「で、解決策なんだけど・・・」


「え!?呪いが解けるんですか!?」


「んーとりあえず解決策は3つあるよ。」



1、コインを他の人に売る。



「ですが、私は1円で買ったんですよ?」


「・・・本当は分かってるんでしょ?1円より安い通貨なんて幾らでもあるよ。」

「それに、頼子ちゃん。本当は適当な事を言って、私にコインを売るつもりだった・・・でしょう?」


依子ちゃんは、願いを叶えてくれるコインを・・・と言ってから言い直した。

呪いを解いて欲しいと。

私の店では、不思議なモノの販売や買い取りも行っている。

外の看板にだって、その旨が書いてあるのだから。


「・・・はい。御見通しだったんですね。」


「まあ、詳しい内容を聞いたら、誰も買ってくれないよね。」

「それでも、助かりたいのなら・・・別の誰か・・・友達にコインを売ればいい。」


「はいっ」っと私は、一枚の紙幣を渡す。


「コレを今日の内にでも友達にあげて、明日になったら、やっぱり必要になったからと言って、このコインで売ってくれって言えばいいと思うよ。」


ばんっ


「そんな事出来るわけないでしょう!!」


机を叩き、勢いよく立ち上がる依子ちゃん。


「だよね。私だってやりたくないもん。」

「ごめんね。ちょっと試させてもらったの。依子ちゃんの友達を思う気持ちをね。」


依子ちゃんは私に似ている。

華音さんに会う前の私、友達が居なかった頃の私に。

今は大事な友達がいる。私が依子ちゃんの立場だったらこの選択肢は絶対に選ばない。


「で、赤の他人に売って、その人が死んじゃうのもイヤなんだね。」


「はい・・・」


其れは、言い直したから明白だ。


「じゃあ、他の手段だね。」



2、悪魔を封印する。



「そんな事出来るんですか?」


「うん、呪いを解く事は・・・まあ、難しいんだけどね。封印だったら出来るよ。」


呪いは複雑な呪術。掛けた本人でもない限り解くのは困難。

解ける人の心当たりが無い事も無いんだけど・・今は無理。

なら・・・


「はい、この『壺』を買ってください。」

「これで、悪魔は封印できます。封印の儀式に関する御代は・・・サービスでいいよ。」


それは、私が華音さんと出会う事になったきっかけの壺。

今は封印の壺として、霧島華音で売り出している。


「これって・・・幾らなんですか?」


「んー1000万円(税別)かな。」


「そ、そんな・・・無理です・・・」


「だよね。」

「じゃあもう、最後の手段しかないね。」


「最後の手段って・・・」



3、悪魔をぶちのめす。






−−−−−−−−−−




基本的に1週間に1回の更新になります。

次回更新は 5月 8日の14時30分頃になります。

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