『願いを叶えてくれるコイン』 序
この世に不思議な事は結構ある。
例えば魔術だってあるし、願いを叶えてくれるコインだってある。
そんな不思議な出来事を取り扱う何でも屋があるのは、不思議じゃないのかも知れない。
「ねぇ、頼子。願いを叶えてくれるってコインがあるんだけど、買わない?」
「・・・何それ?」
親しくも無いクラスメートから、話しかけられた。
内容も胡散臭い。新手のいじめか何かだろうか?
何にせよ、要らぬトラブルは回避したい。
私は静かに本でも読んで過ごしたいんだ。
「遠慮しておくわ。」
私は其れだけ言うと、目線を文庫本に戻す。
「ちょ、ちょっと!話だけでも聞いてよ!!」
「そうよ、話くらい聞きなさいよ!」
さらに親しくも無いクラスメートが増えた。
わいのわいのと騒ぎ出す。
正直面倒くさい。願いを叶えてくれるコインがあるのならば、こいつ等を黙らせて欲しい。
そう、私、瀬川依子は友達が少ない。
このクラスに居る唯一の友達と言ったら、入間志保位なものだ。
そりゃあ友達がもっと欲しいと思った事だってある。
それこそ、神頼みと神社でお願いだってした事がある。
でも、多い少ないじゃないと気が付いた。
気付かせてくれた友達がいる。
だから・・・
「ちょっと、無視しないでよ!」
あ〜もう、五月蝿い。
「聞くだけよ。」
そして、聞きたくも無い話を聞かされる事になる。
やれ、彼氏が出来ただの何だの・・・
「これが、その願いを叶えてくれるコインよ。」
クラスメートは、一枚の古いコインを取り出す。
私の知識の範疇でだが見た事が無いコインだ。
「それでね。願いを叶えて貰うには、このコインを誰かに売らないといけないのよ。」
つまり、願いを言ってコインを売るっていう、おまじないみたいなモノだそうだ。
最初からそういえばいい。それならこんな面倒くさい事にならなくて済んだのだ。
「ね?1円でいいからさ。」
何処の激安セールよ・・・
正直このクラスメートにこれ以上付き合って、貴重な昼休みを消費したくない私は、「・・・はい。」と1円を置いた。
クラスメートは、コインを置くと1円を掻っ攫うかの様に取る。
「いい?売ったからね?文句は一切受け付けないからね!」
そう言い残すと、足早に席に戻っていった。
「・・・何あれ?」
ちょうどその時、教室に戻った志保が私の元にやってくる。
「さあ?」
この後、私は後悔する事となる。
何故、親しくも無いクラスメートが私にコインを売りつけたのか、その意味を知った後で・・・