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始動

「ホットココアのMと季節の彩りパフェください」


僕は予定通りにハンバーガーを食した後、馴染みの喫茶店へと向かい、五分ほど悩んだ後注文を告げた。

この喫茶店は僕の町で一番大きい商店街の一角にあり、大学生や休憩中のサラリーマン、夕方になると近くの高校の生徒たちで賑わっている。

その為店内は常にガヤガヤとしている。その雑音は読書や考え事をするのによく馴染んだ。

やたら無愛想な店員から商品を受け取ると、お盆を持ち二階へと上がった。

僕はいつもの窓際から二番目の席に腰掛けた。通りが一望できるこの席は僕の数少ない好きなものの一つだった。

「さて…」

僕はパフェを口に運びながら今朝の決意について思いを馳せ始めた。


恋人をつくためには何が必要か。

それは言うまでもなく出会いだ。出会いがなければ恋も始まらない。だが仕事を辞めた今出会いの幅は極限まで減ったと考えるべきだろう。

そこでいくつかの出会いの方法を想像してみた。

①ナンパ

②習い事

③婚活サイト

④友達の紹介

一つ一つ検討してみよう。

まずナンパ。論外だ。ナンパしようと思って出来るくらいならとっくに恋人は出来ている。

次に習い事。これも厳しい。まず習い事をするまでの趣味がない。好きでもない習い事を始めて、そこから交流が生まれるとも思えない。

次に婚活サイト。これもどうだろう。僕は恋人が欲しいのであって結婚したい訳ではない。そのような気持ちだと相手の女性にも失礼になるだろう

最後に友達の紹介。こればかりは友達がいないのだからどうしようもない。昔はいたが仕事が多忙なのもありだんだんと疎遠になっていった。

まさか女性を紹介してもらう為に新しく友達をつくるわけにもいくまい。そもそも恋人をつくるのにもいっぱいいっぱいなのに友達つくりまで手を広げられるわけがない。

そこまで考えてふとあることに気付いた。

待てよ。

ある程度の積極性が求められ、同じ目的で集まり、ネットを活用し、紹介がシステムとして組み込まれてるものといえば。

「出会い系サイトだ」

幸いにしてお金ならある。未来の彼女への先行投資と考えれば少しくらい安いものだろう。

今になってみれば馬鹿な考えだが、当時の僕からすれば、まさしくそれは天啓だった。

思いついてしまったらいても立ってもいられず、僕はパフェを掻っ込み、それをココアで流し込むと席を立った。


これから僕の恋が始まるんだ。

そう思うと僕は胸の奥が熱くなるのを感じた。

ココアは温くなっていた。

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