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レクイエム・ロード  作者: 捨石凞
第1章 名も無き亡霊編
9/26

事後整理と状況確認

[おい、いつまで寝ているつもりだ。 早く起きろ!]

 自分の知らない声に起こされて、正道はうっすらとその目を開いた。

「う、ううん……ここは?」

 正道は起き上がって、自分の身の周りのことを確認する。

 (確か未久の注文で、シチューの材料を買いに行って、その帰り道で誰かの悲鳴を聞いて……)

 そこまで思い出して、ようやく正道は一連のことを思い出した。

 (死体は?)

 辺りを見渡して、最初に目撃したところと同じ場所に遺体があるのを確認し、これが現実に起こったことだと再確認した。

[ようやく目を覚ましたようだな。 全く、いつまでも起きないから死んだのかと思ったぜ]

 そこで、正道は再び声を聞いた。

 その声は正道の脳に直接語りかけているように聞こえる。

 (お前、なんなんだ?一体何者だ?)

[まあ聞きたいことは山ほどあるだろうが、まずは落ち着ける場所に移動するのが先じゃないか?]

 声に指摘されて、正道は自分の置かれている状況を把握した。

 こんな場所にいつまでもいたら、誰かに見られた際面倒なことになるのは分かりきったことだ。

 (分かった、じゃあ一旦家に帰るとしよう。 そこでさっきの質問に答えてもらうぞ)

[ああ、今知りたいことは大方答えてやるから心配しなさんな]

 (……)

 その言葉を信じていいものか迷ったが、疑ってもどうしようもないと判断し、正道はこの話を一旦終わりにした。

 公園にある時計を確認したとき、既に10時をまわっていた。

 つまり、あの場で3時間近く気絶していたようだ。

 こんなに遅く帰宅することは今までなかったため、さぞ未久は腹を空かせながら呪言をはいていることだろう。

 (そう考えると帰りたくなくなるが……そうも言ってられないよな)

 正道は一抹の不安を抱えながらも、自宅への家路を急ぐことにした。



「……遅い」

「いや、申し訳ない」

 家に帰ってリビングに入ると、予想通りの状態となっていた。

「ごめんな。 今から作るから……」

「もう食べちゃったよ」

「え、そうなのか?」

「あんまり遅いからカップ麺をね。 ねえ、どうしてこんな遅くなっちゃったの? 電話やLI○Eに連絡しても全然応答ないし……」

「すまない、実はな……」

 俺は隠しても仕方ないと思い、一連のことを話すことにした。

 ただし、声のことや左手のひらから刀を取り出したなどのことは混乱を招くと思い、この場では伏せておいた。

 話を聞いている未久は、段々とその顔が青ざめていく。

「そんな……確かに噂もあったし、昨日も変死体が発見されたとか言われてたけど、まさかお兄ちゃんが狙われるなんて……」

「いや、正確に言えば自分から巻き込まれに行ったってのが正しいかな? 悲鳴を聞いた時、近づかずにすぐ離れるべきだったのに……」

「でも、良かった。 お兄ちゃんがこうして無事に戻ってくれて」

 未久は心底安心したというようにそう言った。

「でも、気を付けないと。 明日は学校休んだ方が良いんじゃないの?」

「うーん、いや明日も行くよ。 どこか怪我したとかってのはないし、至って健康だしね」

「そう、でも無理しないでね。 それで倒れたりなんかしたら元も子もないんだから」

「ありがとう、でも大丈夫だからさ。 気持ちだけ受け取っておくよ」

「うん。 それじゃ私、お風呂入ったらそのまま寝ちゃうね」

「おう、って風呂入れてくれたのか?」

「ううん、これからだけど」

「じゃあ、俺が……」

「お兄ちゃん?」

 未久が諌めるようにそう言う。 今日のところは任せてしまった方がいいだろう。

「分かったよ。 今日のところは未久に任せるからそんな恐い顔しないでくれ」

「別に恐い顔なんてしてないもん。 それじゃ、お休み」

「ああ、お休み」

 未久はそのまま風呂を掃除しに行ったようだ。

 (さて、飯を食べて……)

[ふーん、あれがお前の妹か]

 ……そうだった。 この謎の多い、いや今のところ全て謎な奴のことを忘れていた。

 (話は俺の部屋でする。 そこならゆっくり話せるはずだ)

[おお、ピリピリしちゃって。 そんなに妹について話したくないのかい?]

 (お前が危険じゃないって分かったなら、俺の家族の話をしてもいい。だけど、今のところお前は危険な奴でしかない)

[信用ゼロってことか。 まあいいさ、それじゃ話していく中で絆でも築いていこうじゃないか]

 くっく、とそいつはさも可笑しそうに笑っていた。

 何がそんなに愉快なのか、俺はそれに反比例するように不機嫌になっていた。



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