放課後の日常
そして放課後になった。
部活には入っていない俺は学校にいてもやることがないため、そのまま帰ることにした。
ちなみに遊佐は文化部を複数掛け持ちしてるらしく、毎日違う部の活動をしてる。
「今日は何部の活動をするんだ?」
「ふっふふ、今日は推理小説部の活動だ。 いいネタが入ってるからな」
「いくら部の活動とはいえ、人の死を喜ぶものじゃないよ」
「なーに言ってんだ! 正論だけじゃなあ、このご時世、腹は膨れないんだよ!」
「お前、まだ学生じゃん……」
「とにかく!俺は今日忙しい。真相究明のために動かなければ‼︎」
「はいはい、がんばってねー」
「うむ。 任務を遂行してくる」
どこの部隊だ、お前は。
アホ過ぎるやりとりに疲れた俺はさっさと遊佐と別れることにした。
(あれ以上やってたら、俺も巻き込まれる可能性あるし……)
校門を出るときにスマホが振動した。 どうやら誰かLI○Eに書き込んだようだ。
ボタンを押すと未久からのようで、「今日はシチューが食べたい!」とのことだった。
(今日はカレーの予定だったが……まあいっか。 あ、でもシチューの素買ってこないと)
こんな風に妹に振り回されているが、そんなのも悪くないと思ってしまう辺り、相当なシスコンだなと苦笑してしまう。
そういうわけで、急いで最寄りのスーパーに買い出しに行った。
(金足りるかなぁ……)
スーパーで買い物してる時に、見覚えのある後姿を発見した。
「よう、沙英」
「え?」
振り返った沙英は俺のことに気づいて、
「あ、正くん久しぶり」
「ああ」
こいつは橋田沙英。 家が近所のよく言う幼馴染というやつだ。
高校からは学校が別になり、昔と比べて会うことは少なくなったが、お互い引越しなどしてないため、こうして買い物に来た際に会うことは多い。
「正くんは、夕食の買い物に来たの?」
「ああ、我が妹君が今夜はシチューが食べたいというので急遽ね」
「あはは、相変わらずだね未久ちゃん」
「全くだ。 そっちは菓子でも買いにきたのか?」
「う……やっぱり分かっちゃう?」
「そりゃあ、会う度にカゴに入ってれば誰でもそう思うだろ」
「そうだよね。 私もお菓子は控えようと思ってるんだけど、癖になっちゃってるのか気付くとカゴにいくつか入っちゃってて……」
「昔からよく菓子を食べる奴だとは思ってたけど、そこまでか……」
「うー、いじらないでよー。 私だって抑えようと努力はしてるんだからー」
「いや、その様子じゃ今のところ全く成果無いだろ」
「これからなの! 将来に期待なの!」
「分かった分かった、将来に期待しよう。 うんうん」
「絶対してない顔してる。 もういいもん」
どうやら拗ねてしまったようだ。 まいったなぁ……
「あ、そうだ。 今日は一人で来たのか?」
「え? ううん、お母さんと一緒だけど…」
「そうか、どうもここ最近この街物騒な感じだからさ、あまり一人で行動しない方がいいぞって言おうと思ったんだが……」
「大丈夫だよ。 心配してくれたんだね、ありがとう」
えへへ、と照れながら沙英ははにかんだ。
なんだか照れくさくなってしまったので、「まあ、あとはお菓子を食べすぎないようにな」と余計な一言を言ってしまう。
「もう!分かってるよ‼︎」
また、怒らせてしまった。 どうも、彼女に対してはポロポロと本音をこぼしてしまうな。
まあ長い付き合いだし、相手も冗談で言ってるって分かってるよな。
「ふんだ。 正くんなんて知らない」
分かってる……よな?