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レクイエム・ロード  作者: 捨石凞
第1章 名も無き亡霊編
23/26

変わらない日常の一コマ

今度起きた時は、いつも起きてる時間だった。支度をし、未久と朝ごはんを食べ、学校に向かった。

未久は終始、一言も話さずに正道のことをなんともいえない目で見つめ続けるだけだった。

(昨日のこと引きずってるのかな?)

[あの年頃は色々複雑だからな、考えても分からないよ。とりあえず、幼馴染の家に暮らすことに賛成してくれたんだから大丈夫だろ]

(まあ、今はそう思うしかないか)



授業中になっても正直集中できず、一応ノートはとるものの先生の話も上の空で頭の中にはなにも入ってこなかった。

昨日の戦闘の疲れと、変な夢を見たせいで睡眠不足なのも相まって、とても授業を受けられる状態ではなかった。

(ねむい…寝ちまおうかな)

ちら、と遊佐の席を見てみると意外にも真面目にノートをとっていたかに見えた。

しかし、明らかに先生が話をしている時も変わらず何か書いていたので、別のことをしているのが丸分かりだった。恐らくどこかの部活のレポートをまとめているのだろう。もしかしたら不審死のことかもしれないので、そうだったときは何か新しい情報が入ったか聞いてみよう。

と、気づいたときにはチャイムが鳴っていた。

ボーッとしてるあいだに放課後になっていたみたいだ。

「正道、疲れてるのか?なんか一日中心ここに在らずみたいだったが」

遊佐が心配そうに声をかけてきた。

「ああ、大丈夫。ちょっとこのごろ立て込んでて、あんまり眠れてなくてさ」

「事件のことまだ調べてんのか?犠牲者もあれからまた増えてるし、あんまり深入りしない方がいいんじゃないのか?」

「まあそうなんだけどさ。なるべく気をつけるから」

(もう引き返せないくらい深く入り込んじゃってるけどな)

遊佐にはこうして心配してもらっているのにと、隠し事をしている自分に自己嫌悪してしまう正道。

「遊佐、そういうお前の方は調べてるのか?」

「まあ、素人でも調べられる限りでな。俺だって何も知らないうちに巻き込まれる可能性あるし、最低限犯人のことは知っておきたいんだけど、亡くなった人の数が増えても犯人に関しての情報があまりにも少ない、いやほぼ皆無なんだ」

「そう…なのか」

理由を知っているため、曖昧な返事で返してしまう正道にレスが割り込んできた。

[犯人が犯人だ。まともな方法で調べても出てくるわけがない、なんて言えるわけないか]

(言えるか。そんなの犯人を知っているぞって言ってるようなもんだ)

「まあこっちはこっちでもう少し調べてみるつもりだ。何か分かったら連絡するよ」

「ありがとう。こっちも何か分かったら教えるから」

「サンキュ、お前の家は大変だよな。親が忙しくてほとんど家にいないんだろ」

「ああ、それでしばらくの間幼馴染の家で過ごすことになってさ」

「幼馴染って…もしかして橋田さん?」

「あ、ああそうだよ」

正道がそう答えた途端に、遊佐はニヤニヤと下卑た笑いをしだした。

「ほほう、どさくさに紛れてやることやってるじゃないですか、兄さん」

「黙れ、それと兄さん呼ぶな」

「いやいや、羨ましい限りだよ。中学の頃、完全に夫婦だの親公認の仲だの言われてたからな」

「所詮噂だろ。実際はただの幼馴染止まりだから」

「ふーん」

遊佐は納得してないような顔をして

「そんなに仲よかったのに、なんで同じ学校行かなかったんだ?」

「それは…単純に俺がバカだったから」

「あー、そういえば彼女入ったところめちゃくちゃレベル高かったもんな。それこそ学年トップくらいの成績じゃないと話にならないって言われてたような」

「…本当、昔から頭は良かったんだよなアイツ」

しみじみと沙英のことを語る正道。

遊佐はそんな正道を見てさらに苛ついてくるような笑みをする。

「それでも学校が別になった位じゃ障害にはならないか」

「やかましい!家に泊まるのも事件のほとぼりが冷める短い期間だけだ。やましいところなどあるわけ…」

「本当にないのか?」

遊佐が正道の言葉を遮って聞いてきた。

「あ…当たり前だろ。泊まるくらい小さい頃はよくしてたし」

「分かったよ、しつこく聞いて悪かったな。お前、高校入ってからは浮いた話とか聞かなかったからちょっと心配してたんだよ」

遊佐はもう聞かないからと念を押して言った。なんだかんだで、自分のことを気にしていることには正道は感謝していた。

「大きなお世話だ。だいだい、お前こそたくさん部に入ってるのに彼女が出来たとか聞いたことないんだが」

「う、うっさい!交流はしてるんだ。してるんだが…何故かその先へは進まないんだ」

「すまん、触れてはいけないところだったな」

「かわいそうな人みたいな目で見ないでくれ!みじめになるじゃないか」

遊佐は泣きそうな声で言う。見た目もそんなに悪くない上に、明るくて社交的な奴がなぜモテないのか。正道は不思議でたまらなかった。


「あっと、そろそろ行かないと。帰ったらすぐ移動するって妹に言ってあるんだ」

「そうか、じゃあ気をつけてな」

「おう!」

正道は遊佐と別れ、急いで家に帰る。




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