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レクイエム・ロード  作者: 捨石凞
第1章 名も無き亡霊編
15/26

特訓、そして再び動き出す凶刃

 しばらく学校行って、終わったら特訓という日々が続いた。

 未久には不審な目で見られている上、会話もめっきり減ってしまった。仕方のない事だけど、正直キツい。

 不審死の方は俺が襲われた以降一件も起こっていない。 レスが言ってたように、向こうも警戒しているのかもしれない。 とはいえ、いつでも動けるように用心している。

 特訓の最中偶然沙英に会って焦ったが、適当に誤魔化しといた。 また余計な心配をかけるわけにもいかないしな。

 肝心の成果は……今のところ体力が少し上がった以外は変化があったように感じない。

 レスが言うには成果が出ているようだが、実戦のときのような憑依して動くことは危険という理由で一度もしていない。 下手をすると乗っ取ってしまうらしいのだが、何故かそんなことにはならない気がしていた。

 こんな感じで、レスがいつも近くにいる奇妙な日々は何の問題もなく過ぎていった。


 しかし、そんな日々も長くは続かなかった。再び、ヤツが動き出したのだ。

 それに気付いたのも、レスの力によるものだった。

[お前と会った当初よりも、ヤツの反応を察知できるようになってる。 特訓の成果が出てる証拠だ]

(そんな特訓してたっけ?)

[基礎体力の向上は全体の能力の向上に繋がる。 だから、専門の訓練をしてなくても上がることはあり得るさ]

 顔が見れないから分からないが、きっとドヤ顔をしていることだろう。

 (そんなものか。 それで、ヤツは今どの辺りにいる?)

[ああ、こっちの方だ……]

 レスが見つけたヤツの居所を聞いて、俺は凍りついた。

 (まずい……そこは沙英の家の方だ!)

[……そういうことか]

 (急ぐぞ、レス!)

 正道は、急いで目的地へと向かった。


 道中、気になることを呟いたレスに聞いてみた。

 (レス、さっきなんか気付いたみたいだがどうした?)

[まだ推測に過ぎないから、あまり言いたくないが……]

 そう前置きをしてから、レスは恐ろしい仮説を出した。

[ヤツの殺しのパターンが変わったかもしれない。 具体的に言うと、お前の周囲の人間を中心に狙うんじゃないかってことだ]

 (な……)

 絶句した。

 誰も巻き込まないようにしていたのに、それがこんな形で巻き込んでしまう形になるなんて……

[いま言ったことはまだ、憶測に過ぎない。 俺が言っておいてなんだが、なんでも物事を悪い方へ考えないほうがいい]

 (ああ……)

 そうして走ること数分が経ち、正道は目的地へ到着するが……

「うっ……」

[……手遅れだったか]

 そこには、既に冷たくなっていた遺体が残っているだけだった。

 見つかった時点で、原型はほとんど留めておらず、前回正道が見つけた時同様ズタズタに斬り裂かれていた。

「おぇぇ……はぁ、はぁ……うっ、ううぅ」

 正道は堪えきれず、近くの下水路に戻してしまう。

[今後も、遺体は見ていくことになる。 吐いたりするのは我慢できるようにしとけ]

(無茶言うなよ。 こっちはこういうこととは無縁の生活を送ってたんだぞ。 いきなり慣れたり出来るものか)

 正道の弱音など聞く耳持たないレスは、すぐに別の話題を切り出す。

[近くには誰もいないな。 逃げられたか……]

 (向こうもこっちが来るのを知って逃げたんだろうか?)

[……そうだといいがな]

 (?)

 いまいちはっきりしないレスの言葉を気にしていたが、他の人間に目撃される前にこの場を退散することにした。


 帰り道、特訓ついでに走り込んでいると再び沙英に会った。

「正くん、また会ったね」

「あ、ああ。 いつもこの時間には走ってるから」

「でも、程々にしたほうがいいかもよ。 未久ちゃんとも会ったんだけど、最近お兄ちゃんが家にいないことが多いってぼやいてたから」

「そ、そうか。 気をつけないとな」

「? 正くん、何かあったの」

 さすがに様子がおかしいと思ったのだろう、沙英が心配そうにしていた。

 (レス、今回は結局赤の他人が被害者だったわけだが、今後もそうとは限らないだろ?)

[そうだな、次狙われるのはこの子の可能性もある]

(だけど、確実かどうか分からない……か)

 沙英に、自分の身に起こっていることを話しておくべきか悩んでいた正道だが、

(レスの仮説が正しい可能性も捨てきれない。 犯人はまだ俺を狙っているかもしれないんだから)

「沙英、今時間あるか?」

「え、どうしたの急に?」

「……話しておきたいことがあるんだ」

 沙英は驚いていたようだが、正道が真剣な顔をしていたからだろう、すぐに頷いてくれた。

「とりあえず、ウチ来る? 部屋で話した方が落ち着いて出来ると思うし」

「ありがとう、すまないこんな時間に」

「ううん、正くんだったら親も反対しないだろうし大丈夫だよ」

 沙英の発言から、自分がいかに信頼されてるか正道は実感していた。

 それと同時に自分と関わってしまったことで、幼馴染を巻き込んでしまう罪悪感も感じていた。

 自分の選んだことが果たして正しかったのか、疑問を抱きながらも沙英の家に向かうことにした。



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