02.滅亡した国(笑)
今更ですが、この「滅亡国の大魔術師(笑)」を観覧して下さってありがとうございます。感想は制限なしと設定してありますので、もし宜しければ感想をくれると有難いです。
勿論アドバイスや修正箇所の報告などもお待ちしております。
さて、これからここで生きていく訳だが、いつまでもこの城の中で引き篭もっている訳にはいかない。いくら食べたり飲んだりしなくても死なないとは言えだ。
「ネシム、このマップに生存する魔物はどれ位強いのか分かる?」
『はい。一番弱い者でLevel.62、一番強い者だとLevel.96になります』
それはつまり、このマップは相当Levelを上げないと来れないと言う事だろう。隠しマップと言うからには、ここを見つける条件がある筈だ。もしかしたら、その条件とは一定のLevelへ上がったら…と言うものかもしれない。
「その魔物達の数は?」
『全て合わせて約300の魔物がいます。その中でLevel.96の強い魔物は、10%程です』
「結構居るんだね。因みに僕はどれ位強いか分かるかな?」
『ステータスを表示します。
名前:アサーティル・クード
職業:偉大なる大魔術師
所持金:0G
Level:1(次のLevelまで7)
HP:18(+68000)
MP:16(+73000)
物攻:4(+68000)
魔攻:17(+68000)
物防:6(+73400)
魔防:12(+73400)
命中:5(+68000)
回避:6(+68000)
装備
武器:
頭:
胴:古代のローブ(各防:+2700)
腕:
足:古代の靴(各防:+2700)
装飾:
スキル:魔術の才能(各精霊より懐かれやすい)
オプション:No.410(各ステータス:+68000)(MP:+5000)』
チートのおかげでステータス補正が凄い事になっている。その上古代のローブや靴でさらに防御が上がっているので、ある適度の敵からならば攻撃を受けずに済むだろう。
けれど、武器を持っていないのは痛い。
どこかから入手しろって事なんだろうけどな…。
この城の中で僕が知ってるのは今使ってる寝室のみだし、他の部屋を見てみない事には分からないけど、何となくこの城の中に武器がありそうだ。
僕はアンティーク調の椅子から腰を上げ、まだ昼間だが念の為にとカンテラを持って寝室の扉を開けた。
寝室から出たところで周りを見渡し地図を発動させると、一気に城内の様子が見える。
因みにネシム、この寝室って誰の部屋なのかな?
『この部屋は王子の部屋だったそうです。因みに部屋に入って左側から二つ目の本棚に、いかがわしい本が隠されているのを発見しました』
「いや、その情報は要らないからね?」
『そうそう。Mr.クードの部屋は、設定上一つ下の階にあるそうです』
「無視は酷いと思うな……へぇ、一つ下の階にか。取り敢えず僕の部屋とやらに行ってみよう」
『了解しました。ナビをした方がいいですか?』
「うん、お願い」
『了解しました。では真っ直ぐ進んで、階段を下ってください』
ネシムの言う通り、左右に部屋がある廊下を真っ直ぐ進んで行く。時々広い間隔で豪華な扉が目につくが、きっとこれらは全部王族の部屋なのだろう。地図上で確認すると、この階には計六つの部屋が確認出来る。相当広い部屋が王族には当てられていたようだ。
だがそこらの部屋には入らず、真っ直ぐ階段へと進む。何だか王族の部屋へ入るのは躊躇するのだ。
そう思いつつ暫く歩くと、手すりの付いた階段があり、それは下へと伸びていた。
赤い絨毯が敷き詰められたその階段を、ネシムのナビに従って下る。
「ネシム。僕の部屋へ向かう前に、この部屋は見ておいた方が良いという部屋はある?」
『そうですね…ではUの字に伸びている廊下を左に進んで下さい』
「分かった」
言われた通りに左へ進むとまた左右に部屋が分かれており、ズラリと扉が並んでいる。しかし先ほどの階よりも扉と扉の間隔が短く、幾らか豪華さがなくなっていた。
まぁそれでも僕からすれば十分に豪華だけど。
『Mr.クードから見て右側から四つ目の部屋が目当ての部屋です』
そう言われ、一つ二つと扉を数えて進む。しかしどの部屋も同じ扉なのだが、当時の人達は迷わなかったのだろうか。
僕だったら絶対迷うなと考えたところで、四つ目の扉へたどり着いた。
どんな部屋なのかと多少の期待を胸にギギギと古びた音を立てて扉を開けると、そこは紙と埃の山だった。
「何…これ…?」
『ここは資料室です。整理する筈の人物が面倒くさがり屋で、整理していなかった結果がコレですね』
あぁ、確かにそう言われれば本棚がところ狭しと並んでいるな。最も、その役目は果たされていないけれど。
予想外すぎる展開にヒクリと口元が引き攣りそうなのを、笑みを浮かべる事で耐える。
『思いっきり引き攣ってますよ』
「………ところでネシム。ここで僕に何をしろと?」
まさかここを掃除しろとか言わないよなという問いも含んで、そう問う。この状態がどれ程続いたのかは知らないが、それでもそうそうこうはならないだろう。いっそのことゴミ収集部屋と言った方がしっくりくるであろう部屋だ。一体どれだけの時間を費やして掃除をしろと言うのか。
『この部屋に、他国に関しての資料がある筈です。なのでそれを探し出し、勉強しましょう』
「簡単に言うけどさ。ここからその資料を探し出すのって相当大変だよね?」
『そこはほら…気合と根性で何とかしましょう!』
自分はやらないからって他人事だと思って…。
思わずため息を吐いて、ローブの袖をまくる。
『何だかんだ言って、やる気満々じゃないですか』
「まぁ、やらないと始まらないからね」
『流石はMr.クードです。ここを整理する筈だった人物にも言って聞かせたい程ですよ』
もうその人は亡くなってますがと脳内で呟くネシムの声を聞き流しながら、紙と埃の山を一気に崩すと埃が舞ってしまうので、少しつづ崩していく。崩しては紙を一枚一枚確認し、それを分野ごとに振り分けていく。まるで事務の仕事をしているみたいだとも思わなくもない。
…それにしても、何でこれらの字が読めるのかな。
明らかに日本語ではない、激しくうねったミミズのような字なのだが、何故かそれらが読めるのだ。もしかしたらこれもチートのおかげなのかもしれない。
また今度機会があったら、この文字を書けるか確かめてみようと思いつつ、手を休める事なく動かし続ける。
何かの請求書や魔物の出現情報と言った重要な書類から、誰かの落書きや恋人へ宛てた手紙など、どうでもいいものまで様々なものがあるが、これと言って目ざましいものは見当たらない。
『もしかしたら、もっと重要な書類は別の場所にあるのかもしれませんね』
「かもね。でもまぁ、これで文字の勉強は出来そうだから無駄足ではなかったかな」
ふぅと息を吐いて、数枚の書類を手にする。多少埃やらの長年の汚れで薄汚れているが、勉強するには大した支障でもないだろう。
それよりもと、立ち上がって埃まみれになったローブを手で軽く叩く。そうすると面白い程に埃が舞った。
『え、文字の勉強ですか?』
きょとんとしたネシムの声に一瞬手を止めるも、胸、腹、太もも…と上から下へと叩いていく。
だが、ネシムに返答するのも忘れない。
「そうだよ。読むのは出来るけど、これを発音出来て、書けるかはまた別だからね」
だから勉強するんだよと言いつつ、ローブの背中側を体を捻って確認する。どうやら酷く汚れたのは前側だけだったらしく、後ろはそれ程汚れていない。念の為にと背中も軽く叩くと、換気をするために窓を開ける。長年開けていなかったのかかなり固く、開けるのに苦労したがギギッと音を立てて開けると、ふわりと草木の香りが風によって運ばれて来て鼻孔をくすぐった。
窓の外に見える景色も中々のもので、青々と茂る草木と白い瓦礫が何とも美しい。まるで絵画のようだ。
そんな景色に見惚れている僕に気を遣ったのか、部屋から出ようと踵を返した後にネシムの声は響いた。
『…何を言ってるんですか。もうその国言葉喋ってますよ』
「………え?本当に?」
そんな言葉に思わず止まった歩みを再開し部屋を出る。
換気の為に部屋の扉は少し開けておこう。
『えぇ本当にです。基本的にこの国の言語や基本知識はMr.クードの頭の中にダウンロードされています』
「それ、初めて知ったんだけど…?」
『…もう既に知ってるものかと思ってました。となると、クエストの事も知りませんよね?』
「うん、知らない」
それ自慢気に言うところじゃないですよと呆れ気味に言うネシムに、彼女…声が女性のものだからそうだと思っているが。本当に彼女がシステムなのかと疑いたくなる程、会話も音声もリアリティーだ。だからこそ自分一人じゃないと思え、不安や恐怖心が湧かないのだろう。
「それで?クエストって何?」
『はい、よく聞いて下さいね。クエストとは本来プレイヤーのみが受注出来るものなのですが、Mr.クードにはこのゲームの作成者から特別に「己の記憶クエスト」というものが配信されています。因みにそのクエストは必ずやらないといけないみたいです』
「……………」
前言撤回。
どんなに頼れる相棒が居ても、不安は嫌って程に感じるらしい。