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滅亡国の大魔術師(笑)  作者: 黒いもふもふ
*****、世界
21/22

16.大魔術師(笑)の分からない事



夜の町というのはとても危ない。スリに人攫いに通り魔が出現しやすくなる時間帯である夜は、町に外灯がほぼない為暗くなる。そしてその闇を利用して悪事を働こうとする者達が必ずいるのだ。例えばこんな風に。


「おっと…」


後ろから走って来た子供にぶつからないようにと避けると、微かな舌打ちが聞こえた。子供はそのまま走り去って行ったが、あれはスリだ。僕は腰に財布代わりである袋を下げていないので取られずに済んだが、今道を歩いている人の中には取られたという人物もいるだろう。だからと言ってあの子供を捕らえたりなどしないが。

何もなかったかのように歩き続けて青い屋根の本屋を見つけると、中へ入って本棚に入れられた本達を見る。絵本や物語小説など娯楽目的の物もあれば、魔物一覧書や剣術書など実用的な物もある中僕はかなり分厚い各国の歴史書と、それなりの厚さの魔法書に目がいった。まずはと歴史書を手に取り目次ページを開いて見てみると、そこから読み取れるにこの本には古代から現代のものまで書いてあるようだった。

随分と役に立ちそうだしこれは是非とも買いたいな。

チラリと値段を見てみてもそこまで高くはないようなので、脇に挟みながら魔法書も手に取る。こちらはどうやら初心者向けの魔法書らしく、ファイヤーボールやアクアスラッシュと言った如何にもな魔法が書いてあった。魔法陣と詠唱…僕が唱えるスペルとはまた別の長ったらしい呪文が書かれたこの本は一度本棚に戻して、本来の目的であった魔術に関しての本をもう一度探す。

棚の上の方や下の方、裏側や別の棚など色々探し回ったが魔術の本は一冊も見当たらない。かなりの冊数がある中で、魔術に関しての本だけが偶々無いなんて事はあり得ないだろう。なら相当な高級品として貴族街などでしか扱われていないのか、何らかの理由で売買するのを禁止されている…若しくは魔術書が、あの武器屋で店主が言っていた遺跡とやらから見つかっていないかだ。そうなると魔術を使うのは控えた方がいいのかもしれない。

さっき手にした魔法書の初心者向けと熟練者向けの値段も確認しつつ会計へと向かった。計5Gと100Zの出費になったが、中々にいい買い物が出来たと個人的には思っている。

少し上機嫌で宿へと帰り部屋に戻ると、何故か僕の使う寝台に寝ているリアンがいた。出て行く前は自分で使っている方で寝ていたのに、いつの間に移動し何故そこで寝ているのか謎だ。

取り敢えず彼を元の場所に戻して自分の寝台に座り、買ったばかりの本を手に取る。


「光よ、灯せ」

「(あの子が起きない程度に照らすわね)」


ボンヤリと灯った光は明る過ぎず、だからと言って暗過ぎず集中するには丁度いい明るさだ。まずは基本からだと魔法の仕組みと書かれたページを開いた。

魔法、それは世界に存在する魔力と言うエネルギーと物質と言うエネルギー…つまり地球で言う分子や原子が合わさって起こる現象であり、それを扱うには体内に魔力を所有していなければならない。

魔法を使う上での注意事項は詠唱破棄をしない事。また体に循環している魔力は魔法を使うと減るので、自分の魔力量がどれ程あるのか知っておいた方がいい…と書いてあった。

杖や武器に魔法陣を刻むとあったが今持っている杖に陣を刻みたくはないので、そこは新しく杖を買うしかないのかと静かにため息を吐く。どんどん所持金が減っていくのが痛いが、こればかりは仕方ないだろう。変にケチって面倒な事にはなりたくない。


「で?手順は……」


魔法を使うには以下の手順が必要となる。先ず最初に魔力があるかどうか確認する事。これで魔力が無ければ残念だが魔法は使えない。そして魔力があると分かれば次の段階である属性への適性検査をし、自分がどの属性に一番合っているのかを知らなければならない。それで自分がどれ程の魔力を持ちどの属性に適しているか分かったなら、次はその属性の詠唱を覚える。詠唱を唱える時に魔力が減り、どの位で魔力が枯渇するかは体で覚えておいた方がいいだろう…との事らしい。

さて、では本に書いてあった通り行ってみようと思う。魔力があるのは分かっているし魔力量もステータスを見れば分かるから良いとして、適性検査とやらをしたい。

今僕は地、闇、光、時空と契約を結んでいるが、その場合どうなるとだろうか?


「…で、どう思う?ネシム」

『えぇー…私ですか?そうですねぇ、Mr.クードに適性なんて無いんじゃないですか?』

「適当に言ってる?」

『だって分からないんですから仕方ないじゃないですかー』

「まぁ、そうかもしれないけどさ…」


チラリと微かな期待を込めて精霊達を見ると、次の瞬間には体をクルリと回転させて何処かへと飛んで行った。

あ、今絶対目逸らしたな…。

ネシムも精霊達もアテにならないとなれば自分でどうにかしないといけない訳だが、他の魔法使い達は一体どうやって適性検査をしているんだろうか。ペラペラと他のそれらしいページを捲ってみても適性検査の仕方は載っていない。

…仕方ない適性云々は飛ばそう。

直ぐに解決出来ないものは一旦頭の中に置いておいて、詠唱文の載っているページを開いて一節を口ずさんだ。


「我が杖に宿る闇の力よ今力を与え解き放て、ダークスラッシュ…」

『うわぁ……まさにゲームって感じですねぇ』

「(……変な感じ)」

「(お主何を言っとるんじゃって感じじゃの〜)」

「(そうですわ。ティル何言ってますのって感じですわね)」

「(何言ってるの、何言ってるのー?)」

「いや、何で僕が皆んなにそこまで言われなきゃいけないのかが分からないよ」


かなり心にダメージを負った僕は何となく気恥ずかしさを感じながら、時に精霊やネシムに弄られつつ詠唱文を音読する。ライトやロックシールドなどまさにと言った魔法名だらけだが、これを魔法使い達が真顔で言っているのだと思うと中々シュールに思えてしまう。しかし幾ら口ずさんでも精霊達はからかってくるだけでこれと言った反応をしなく、どうやら魔法陣の刻まれた杖を購入しない事には魔法は使えないようだ。

一体魔法陣の刻まれた杖って幾らするんだろう…高そうだなぁ。

ぼんやりと頭の片隅でそう考えながら僕は詠唱文の暗記をひたすらに続けていると、気が付いたら空が白んでいた。光へ灯りを消させ体の節々を解すように伸びをする。

まだこの子は起きないかな…。

そんな事を思っていた矢先にリアンが寝返りを打って寝台から落ちてしまった。それはもう派手に鈍い音を響かせてだ。これを人はフラグの回収と言う。


「ぅぁぁぁあああ………」

「お早うリアン」

「ぉ、おはよう……」


涙目で頭を抱えてはいるが一応リアンが起きたので本を閉じアイテムスペースへ歴史書と共に放り込み、僕は立ち上がってローブの皺がない事と杖がローブ内にある事を確認しチラリと彼へ視線を向けた。彼はフラフラとしながら服を手に取ると寝間着であるネグリジェを脱いで、器用にフリフリのフリルが付いたゴスロリ調の服を着込んでいく。


「み、見るなよっ!」

「いや、器用に着るなぁと思ってね」

「むっ…それは褒めてるのか?」

「ある意味感心はしてるよ」


顔を真っ赤に染めてせっせと着込んでいくリアンは、本当に傍目から見たら女の子にしか見えないのだから凄い。そして服の着方を知っているのにもある意味尊敬する。

さて彼も起きて着替え終わったので、顔を洗って食事にしようか。



食事を終え宿を出ると大通りは朝市のような露店が出並び、凄い人混みになっていた。店へ客を呼び込むべく声を張り上げる店主や店へ群がる客に冷やかす通行人などを見て、逸れないようにとリアンの手を握る。すると彼は一つの露店へ視線を向けてそのまま釘付けになった。


「あ、アレ美味しそう…」

「さっき朝食食べたのに?」

「だってお腹空いたんだもん」

「だもんって……仕方ないな」


リアンの指差した菓子の露店へ人を避けながら向かうと、どうやらそれは金平糖のような砂糖菓子のようで女性や子供が買っているのが見えた。価格も一袋200Zと安い事から一般庶民の甘味として売られている物のようだ。


「すみません、一袋下さい」

「あいよー、一袋ね」


思ったよりもズッシリと重い袋を受け取りリアンに手渡し金銭を払う。

懐が寒くなってきたし早くクエストを受注したいんだけどな。

小皺が目立つが利発そうな妙齢の女店主に見送られ、幸せそうに砂糖菓子を頬張る彼を横目にそう考えるも朝からネシムは黙りだ。


「アサーティルも一ついる?」

「…いや、いいよ。それはソニアの分だからね」

「そう?」


そんな会話をしながら食いしん坊なリアンを連れ歩く事幾らか、ギルドに着いた僕達は真っ先にボードへと向かい二人して依頼書を吟味する。まだギルドでのランクが一番下なので大した依頼は受けれないが、それでもやっておくに越したことはない。一気にランクを上げるのも良いのだが、そうするとどうしてもおざなりになってしまう部分が出て来る。どのランクにどの様な魔物が居てどの様な依頼が出されているのかを知っておけば、将来役に立つ時がきっとあると言うものだ。

薬草摘みにネズミ退治、迷子のペット探しや店の手伝いなど様々であるが、僕が目を付けたのはポーション作りの手伝いを募集していると言う依頼書。ポーションと言うのは回復薬であり先程ここに来るまでにそれを売っている露店を数店見つけたが、効果が高いのか低いのか分からない上に値段もまちまちだった。ならば自分で作った方がいいんじゃないかと思っていた矢先にこの依頼だ。正直有難い。


「ソニア、この依頼でいいかな?」

「んー、いいんじゃないの?」

「そうか。ならこれにしよう」


場所は危険の少ない町中にある店で、昼食も出るらしい。依頼書を剥がして受付けに持って行くと受付嬢はリアンの持っている砂糖菓子を羨ましそうに眺めた後、事務的に処理をし始めた。


「この依頼は二日続けて行うものですが、大丈夫ですか?」

「はい、問題ありませんよ」

「分かりました。それでは行ってらっしゃいませ」


礼をし見送る受付嬢に軽く礼をしてギルドを出ると、依頼主であるの店へと向かう。どうやらその店は町の西側にあり、そこは以前ゴスロリ調のあの服を買った店に近い所にあるようだ。

この依頼で貰える報酬が作ったポーションの一部と100Zなのでまだ杖を買うには心とも無いが、幾らか貯まったら魔法陣を刻んである杖を見ようと思っている。それで魔法を使えるようになれたら戦闘の幅も広がるだろう。

まだまだ賑わっている通りを歩き、時たま匂う美味しそうな香りに誘われてフラフラと歩くリアンを引っ張る。手にはまだ砂糖菓子の入った袋を持っているのにこの子は一体どれだけ食べるつもりなのか。ヨダレを垂らす彼に呆れて、袋から砂糖菓子を一粒取り出すとその口へ放り込む。途端にムグムグと動く口は、まるで小動物に餌をやっているような感覚を起こした。

砂糖菓子という名の餌で彼を釣って歩く事十数分。以前見た服屋の付近にこじんまりとした何を売っているのかも分からない店を見つけたが、本当にここなのだろうか。

歩いている途中で無くなった砂糖菓子の袋をアイテムスペースに一旦入れ店の扉を開けると、そこは依頼主である店主らしき人物どころか客一人も居ない無人の空間が広がっていた。如何にも毒性を持っていそうな色をした液体が入っているビンや何かの動物だと思われるミイラなど店の暗さも合わさって怪しさ満点の店内にリアンは勿論、僕も引き気味だ。


「あ、ああアサーティルっ、ここここう言う所って裏って言うんでしょ!?」

「いや、そう言う訳じゃないとは思うんだけど……」


ローブをグイグイと引っ張って涙目でそう訴えるリアンを見下ろして店内を見渡し、人影を探す。同時に地図が発動されるが人の姿は見当たらない。


「まぁ確かに怪しくはあるね」

「怪しいなんて酷いな」


突然聞こえた若い声に聞こえた方向である店の奥の方を見ると、そこには茶色のローブを着込んだ人が立っていた。高身長のその人物は口元を歪め、壁に付いたスイッチを押して明かりを付ける。明るく照らされた店内で店主と思われるその人物は僕達が警戒しているのを感じてか、ローブのフードを下ろし露わにした。


「やぁようこそ僕の店へ。歓迎するよ」


白銀の髪に黄金色の瞳の、アサーティルと瓜二つの顔を。







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