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00.詐欺師(笑)現る



白い壁に天井。横になっているベッドのシーツや枕なんかも全て白色。そんな一人部屋に俺はいた。

ごめん、ただの病室です。紛らわしい言い方してごめんなさい。

えぇっと、気を取り直してもう一度。

こんにちは、俺こと工藤朝輝19歳だ。因みに彼女はいません。

おい、誰だ今「非リア充乙ww」とか言って笑ったやつ!


「と言うかリア充と言うのはリアルが充実しているの略だから、恋人のいるいないは関係ないんだ。つまり!リアルが充実した毎日を送っている俺はリア充!リア充なんだ!」

「そう言うのを屁理屈と言うんだけど、知ってるかな?工藤君や」


きゃらきゃらと笑い声が聞こえてそちらを向くと、そこにはポニーテールとつり目が特徴的な少女がバスケットを片手に立っていた。

あれ?なんだろう。

このシチュエーションはどう見ても鈍感系主人公をお見舞いに来ている幼馴染み(仮)みたいな感じなのに、嫌な予感しかしない。

妙に冷や汗を背中にかきながら、俺は引き攣る口角を無理矢理に上げて笑う。


「よ、よう。幼馴染み(仮)」

「何処からその幼馴染み(仮)が出て来たのか気になるんだけど。まぁいいや。今日はお見舞いに来てあげたよ!」


ドサリとバスケットをベッドに備え付けられた机の上に置くと、見舞客用の椅子に腰掛けた。

元々広くない病室が一気に狭く感じたが、それよりも俺は今机に置かれたバスケットに興味津々だ。

……きっと皆が思ったのとは別の意味で。

どうしてか渇いた口を唾を飲み込んで潤す。

さぁ、俺よ頑張れ。

きっと明るい明日が待っている筈だ。


「なぁ幼馴染み(仮)さんよ。そのバスケットはなんですかね?」

「良くぞ聞いてくれました!実はそれ、工藤君へのお見舞い品なのだ!」

「オミマイヒン……」

「しかしそのバスケットの蓋を開けるには質問に答えて貰わなければならない。そこで質問だぁ!」


ババーンと音がしそうな程に元々無い胸を張って指を突きつけられ、俺は思わず仰け反る。

こいつ顔はそこそこいいんだから、その無駄にハイテンションで変態気質な性格を治せばモテる筈なんだけどな。実に勿体無い。

だからと言って俺はこんな彼女いらんが。

ふと机に視線をやると、何やら紙を突き出して来たのでそれを覗き見る。何かのアンケートだ。


「アナタはゲームへの協力者として選ばれました!……って何だよこれ」

「ふははは、聞いて驚け!あたしはついにゲームの開発に成功し、そして一週間後にそのゲームを配信する予定なのだぁ!」

「うん、それで?」

「反応が薄いなぁ。まぁ、要するにゲームを協力者と言う形でプレイしませんかって事だよ」


だからその協力者ってのが何なんだよ。

余程俺が不満そうな顔をしていたのだろう、幼馴染み(仮)は腰に手を当てて頬を膨らませた。

やめい。似合い過ぎて逆に怖いわ。


「折角工藤君を選んであげたのにそれはないと思うよ」

「いや、だから協力者ってのはそもそも何なんだ。それを教えて貰わないと俺はプレイ出来な……」

「因みに今ならもれなくチートプレゼント」

「やります。やらせて下さい!」

「はいよ。毎度あり!」


ついチートと言う単語に釣れられてそう返事してしまった。

ぐへへと笑う幼馴染み(仮)を見て何となく後悔が湧いてこない事もないが、それでも中々美味しいプレゼントだと思う。誰だってチートには憧れるものだ。

あれ?それにしてもあのアンケートの存在を忘れてたな。

チラリともう一度アンケートを見る。


『ご協力ありがとうございます。プレイする上で以下のご質問にお答え

下さい』


おぉ。幼馴染み(仮)が作ったとは思えない程の出来前なアンケートじゃないか。

と言うか、敬語使えたんだな。そこに驚愕だよ。


『お名前をお答え下さい:アサーティル・クード

性別をお答え下さい:男

年齢をお答え下さい:19歳

自身を見てアナタはどう思いますか(十文字以内でお答え下さい):王子系の妖美な美男子

アンケートへの感想やゲームへのご希望がごさいましたらお書き下さい:No.410』


うん、とてもツッコミどころ満載のアンケートだ。

王子系の妖美な美男子って何だよ。それにアサーティル・クードって誰だ。

だが思い当たる節ならある。王子系のところだが、実は入院する前中学生の時に演劇をやった事があった。そこで俺は王子様役をやらせてもらったのだ。

あの時はモテたなぁ。役に入り込むために性格がガラッと変わったし、演劇の公演当日には女子達から化粧をしてもらってそこそこの美形に生まれ変わった。そしてその演劇を見た女子達から告白されたのだ。まぁ、中身がこんなんだと知るとそそくさと逃げて行ったが。

え?まさかソレ?

アンケートから顔を上げると、目の前で幼馴染み(仮)がニヤッとしていた。うわぁ、すっごい嫌な予感。


「このアンケートの答え、お前が書いたのか?」

「そうだよ。だって君は残念王子じゃん」


残念王子、それは中学の演劇以降に付けられた俺のあだ名だ。

いや。だからと言ってこのアンケートの答えはねぇよ。

しかも最後のところのNo.410って何だ。


「あ、因みにNo.410って言うのはあたしの作った隠し設定だよ。ナンバーを書き込む事でオプションが付くの」

「410だから、チートって事か?」

「そうそう。まぁ他にもNo.0で王になる事も出来るし、No.210でニートになってひたすらノンビリする事も出来るよ!」

「ニートとか要らんわ!」


それは俺が現在進行形でニートである事に喧嘩売ってるのか?


「そして最後!最後の質問に答えて欲しいんだよ」

「最後?」


再度チラリとアンケートを見ると、確かにもう一つ質問があった。


『最後の質問です。貴方は現実をどう見ていますか?:』


え?なにこれ。現実をどう見ているかなんて、ゲームに関係あるのか?

幼馴染み(仮)が何を考えてるのかサッパリ分からん。

けれど、それでも一応書いておこう。

机に置いてあったペンを持ち、サラサラとアンケートへ記入していく。


「つまらなく、残酷だと思う…っと。こんなもんでいいか?」

「うんうん、オーケーだよ。いやぁ、態々済まないねぇ」

「それは言わない約束だろ、ばあちゃん…って違うわっ!」

「ノリツッコミ乙ww」


こいつうぜぇ…!

ニヤニヤと笑う幼馴染み(仮)を、弄られた屈辱感による涙目で睨みつけると、彼女は怖い怖いと戯けつつバスケットへと手を入れた。

ああ、確か質問に答えたらあげるお見舞い品があったんだったか。

嫌な予感しかしないんだけどなぁ。

その予感が外れたのか否か、バスケットから出てきたのは大きめのヘルメットだった。何本ものコードが付いたそれを、幼馴染み(仮)は俺の頭へと装着する。

ってちょっ、何するんだよ!?


「お、おいっ!?何だこれ!?」

「落ち着きなよ工藤君。なに、少しチクっとするだけだよ」

「何それ!?すごく怖いんだが」


アレだろ。チクっとしますよーなんて注射をする時に医者が言うけど、実は結構痛いってやつだろ。

怖いって、何かのフラグだってそれ!


「はい、スイッチオン。それじゃあ逝ってらっしゃーい!」

「え?それ字違う…ってらめぇえええええ!!?!」


目の前が真っ白に変わっていき、意識が朦朧となって行く。

くそっ、これで何かあったら…うらむ、ぞ……おさな、なじ…み………。


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