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序章
魔法使いになりたかった。
子供の頃、そんな私の幼い夢に、母は優しく応えてくれていた。
「そうね、なれるといいわね」
女は魔法使いになれないと知るのは、ずっと後になってからだった。
それでも母は、それを理由に私を止めるような事はしなかった。
彼は言っていた。
人は皆、自分自身という物語の主人公なのだと。
だから私も始めようと思う。今、ここから、私の物語を。
「フィオナ、そろそろ時間だ」
「ええ、分かってる」
魔法使いに憧れ、魔法使いになれず、彼に救われ、彼を救えなかった、私の物語を。