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第四章 覚悟と開戦 第3話

 朝食が終わり、明治は隆宗と鉦定に頼み込んで、今日からまた勉強や訓練を再開させることにした。

 最初は心配していた隆宗と鉦定だったが、明治のやる気に満ちた目を見て、どうやら自分なりに、野盗と矢矧の件に決着をつけたらしいと分かり、訓練と勉強の再開に了承したのだった。

「明治。貴様一体どうした?」

 いつものように勉強を教えていた鉦定が、軽い驚きをもって明治に訊いた。

「どうしたって、何がですか?」

 あまりにも唐突かつ抽象的な質問に、明治が首を捻る。鉦定は、戸惑ったような顔で、

「いや、今までのお前だったら、そろそろ集中力が切れてダレてくるはずなのに、今日はそんな様子が全くないから」

「失礼な!」

 明治は思わず憤慨したが、すぐに落ち着いて、心境の変化を話した。

「僕は強くなるって約束したんです」

「約束?誰と?」

「矢矧とです…、と言っても、夢の中で、ですけど」

 明治は、夢で見たことを話しはじめた。

「矢矧がいつまでも自分が死んだことを悲しんではいけない、自分が弱いと思うなら、誰かを守れるくらいに強くなって、大切な人を守ってあげろ、って言ってくれたんです。だから、ちゃんと勉強して、訓練して、強くなろうと決めたんです。馬鹿らしいかも知れませんが、それが約束です」

「そうか」

 鉦定は、明治の話に対して短く相槌を打っただけで、しばらく黙り込んでいたが、やがて何かに納得したのか、「うむ」と頷くと、意地の悪い笑みを浮かべた。

「それじゃあ、勉強も訓練もいつも以上に厳しくしないとな」

「望むところです!」

 鉦定は軽い冗談のつもりで言ったのに、明治が強い意志を漲らせて受けて立ったので、逆に鉦定が面を喰らうことになってしまった。そのまま、少し固まっていた鉦定だが、やがて「ふっ」と笑うと、

「認めよう。お前の覚悟は本物だ。だから、私も全身全霊を持って、お前に私の知るすべてを教えよう」

「お願いします!」

 鉦定が見たのは、明治の強い意志を秘めた眼だった。

 それからまた別の日。

 明治は庭で一人、木刀を振り回していた。と言っても、剣術の経験があるわけでもないど素人なので、いろいろと間違っているし、見ていて危なっかしいことこの上ない。それでも、明治なりに懸命に振り回していると、突然、隆宗が声をかけてきた。

「明治、一体お前は何をしているのだ?」

「見ての通り、剣の稽古ですけど?」

「いや、見ても分からなかったから聞いたんだが…」

何を当たり前のことを、と首を傾げる明治に、隆宗がツッコミを入れる。

「それで?どうして急に剣の稽古なんか始めたんだ?」

 隆宗に訊かれて、明治は持っていた木刀をぎゅっと握りしめて、

「矢矧と約束したんです。強くなるって。強くなって誰かを守るって約束したんです」

「矢矧と?」

 怪訝そうな顔をする隆宗に、明治は鉦定と同じ説明をした。

「そういうことか。それなら、その約束を守らないといけないな」

「はい。だから、剣の稽古も始めたんです」

 そういって、明治は再び木刀を振り回そうとしたが、隆宗がそれを呼び止めた。

「明治。そんなことでは強くなれないし、いつまでたっても剣術も上達しないぞ」

「はあ、でも、僕、剣なんて使ったことないですから」

 明治の困った顔に、隆宗はぽんと膝を叩いた。

「よし、それじゃあ、先祖代々伝わる剣術を教えよう!その名も「水葉(みずは)流剣術」だ!」

 隆宗は何故か自信満々に胸を張るが、明治の反応が薄いことに気づくと、ショックを受けたように肩をがくりと落とした。

「明治の反応が薄い。こんな無名な剣術は習いたくないんだな」

 隆宗を放っておくとどんどん落ち込んでいきそうだったので、明治は慌ててフォローした。

「お、お館様自ら教えてくれるなんて、光栄だなぁ。それに剣術も強くなれそうだなぁ」

「むっ!そうか。それなら教えてやろう!」

 かなり棒読みだったが、それでも機嫌を直した隆宗に、明治は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 隆宗は、それまでの空気を入れ替えるように軽く咳払いをすると、明治に少し待つように言った後、どこかへ去っていった。

 それから十分ほどして、隆宗は手に木刀を下げて戻ってきた。

「それじゃあ、早速剣術を教えよう…、と思ったのだが、まずは基本から教えておこう」

「基本?」

「最初から、お前はいろいろ間違えている。見てろ」

 そういうと、隆宗は持っていた木刀を正眼に構えた。

「これが基本の構え。この構えは、どの剣術でも同じ基本中の基本だ。やってみろ」

 明治も見様見真似で、木刀を正眼に構える。その構えを見て、隆宗が間違っているところを指摘する。

「右手は鍔元で、左手は柄頭の近く。背筋を伸ばして、剣先を相手の喉元の高さへ」

 隆宗にあちこち指摘されながら、明治が構えを治していくと、先ほど隆宗が見せたように構えが様になっていった。それを見て隆宗が満足そうに頷く。

「この基本の構えと持ち手を忘れるな。この構えは攻防一体の優れた構えだからな」

「はい!」

「よし。じゃあ、その状態で素振りだ!見てろ。背筋は伸ばしたまま、自分の正中線をなぞるように、まっすぐ振りかぶって、まっすぐ振り下ろす。右手より左手に力を入れる。足は、左足で地面を蹴るようにする」

「ぶん!」と鋭く振り下ろされる隆宗の木刀。明治も真似をするが、慣れない振り方となれない持ち方に悪戦苦闘していた。

「むう。お館様みたいにうまくいかないです」

「はっはっは。まあ俺も最初のうちはそうだったさ。要は慣れだ」

 明治は隆宗の注意点を守って、素振りを繰り返す。そうして繰り返しているうちに、段々と素振りが様になってきて、剣筋も段々鋭いものになっていった。

 隆宗は満足そうに頷くと、

「うむ。中々様になってきたじゃないか。それじゃあ、昼休憩の後は、いよいよ剣術の稽古だ」

「はい!」

 二人は、木刀を持ったまま、昼食の部屋へと向かった。しかしその途中、女中頭のおさねさんに呼び止められ、そのまま説教を受ける羽目になった。

「ちょっと二人とも!何木刀持ち歩いてるんですか!ああ、しかも泥だらけの足で!せっかく掃除したのに!ちょっと二人とも、そこに正座しなさい!」

「ちょ、ちょっとおさねさん。一応、俺はこの城の城主なんだから…」

「だまらっしゃい!」

「…はい」

 おさねさんに一喝されて、隆宗はシュンとなってしまった。それを見た明治は、おさねさんの恐ろしさに、ガタガタと震えだした。

「まったく!あなたたち二人は!どうしてこう汚れるんですか!せっかく、城をきれいにしてくれている女中たちに申し訳ないとは思わないの!」

 すでに主従の立場は崩壊し、明治と隆宗は黙って怒られるしかなかった。それから三十分ほど、おさねさんの説教は止まることがなかった。

「今日はこれくらいにしておきます。すぐに木刀を片づけて、足を洗ってきてください!それが済んだらお食事ですよ」

 まだ少し怒りながらも、おさねさんはどうにか説教を切り上げてくれた。

 明治と隆宗は、お互いに顔を見合わせほっとすると、足を洗うべく、立ち上がろうとした。しかし、

「「イタタタタタ!」」

 固い床の上で、延々と正座をしていたため、当然のごとく、二人の足は痺れていた。二人は、しばらく床を転がりながら痺れをやり過ごすと、女中に手渡された手拭いで足を拭き、木刀を片づけてようやく昼にありつくことができた。


 やがて、昼食を終えた明治と隆宗は、今度は城内にある道場にいた。

「それじゃあ、改めて水葉流剣術を教えよう」

「お願いします」

「まず、水葉流の戦い方だが、流れる水や風に舞う木の葉のように、流れに逆らわずに受け流して、相手に反撃する剣術だ、と口で言っても分かり辛いから、実際にやってみた方がいいな。明治、試に俺に打ち込んでみろ」

 明治は戸惑いながらも木刀を覚えたての正眼に構え、隆宗に向かって振り下ろした。

 振り下ろされた木刀が、隆宗の頭を捕えると思った瞬間、隆宗は自分の木刀を頭上に掲げ、刀身を斜めにして、明治の打ち込みを受け流すと、手首をすぐに返して素早く木刀を振り下ろし、明治の頭に直撃する寸前で、ぴたりと寸止めをした。いくら明治が素人とは言え、仮に自分たちが持っているのが本物の刀で、これが実戦だったら確実に死んでいたであろうことは、想像に難くなかった。

「どうだ?何か分かったか?」

 残心を解きながら、隆宗が感想を訊いた。

「はい。打ち込んでお館様の木刀に当たった瞬間、まったく手ごたえなく軌道を逸らされた感じでした」

「うむ。これが水葉流剣術だ。無理に相手と打ち合ったりすれば、いくら刀とは言え刃が欠けたり、下手をすれば折れてしまう。戦場で武器を失うことは、死んだも同然のことだ。この水葉流は、相手の攻撃を受け流すことで、こちらの攻撃を当てる。つまり、後の先の剣というわけだ」

 隆宗は簡単に言うが、素人が相手の攻撃を受け流すのは、かなり難しいことであり、実際明治も、何度も挑戦しているがうまくいかなかった。

「明治。戦いの最中に目を瞑っていたらやられてしまうぞ。しっかりと相手を見ろ!」

「そんなこと言われても…、ひっ!」

 隆宗に攻撃を当てるつもりはなくても、隆宗自身から伝わってくる気迫に、明治は委縮してしまい、隆宗と対峙して、木刀を振り下ろされるたびに目を瞑ってしまっていた。

 隆宗は軽く嘆息すると、しばらく何かを考えた後、明治に木刀を片づけるように言った。

 突然のことでよくわかっていない様子の明治に、隆宗は自分の考えを伝えた。

「どうやら、明治。お前は戦闘に慣れていないようだな。だから、相手が攻撃してくる瞬間にどうしても目を瞑ってしまうんだ」

「…はい」

 自分の欠点を指摘されて、明治は落ち込んでしまう。隆宗は、そんな明治の肩を優しく叩くと、明治を安心させるように、優しく微笑んだ。

「そんなにしょげることはない。まずは、どんな時でも相手を見る訓練をしよう」

 そういうと、隆宗は明治を道場の中央に立たせ、自分は木刀を正眼に構えた。

「いいか、明治。これから俺がお前に寸止めで攻撃をする」

 突然の宣言に、狼狽する明治を見て、隆宗は苦笑しながら、

「安心しろ。攻撃は絶対に当てない。…そうだな、賭けをしよう」

「賭け…ですか?」

「ああ、もし俺が誤ってお前に攻撃を当ててしまったら、俺はお前に何でも一つ好きなものをやろう」

「なんでも…ですか?本当に?」

「ああ、なんでもいいぞ。新しい鎧や刀でも、馬でも、この城でもいい。何だったら幸をやろうか?」

「は?え?い、いや、あの、その…」

 隆宗のにやりと意地悪く笑いながらの提案に、明治は慌てふためいた。

その様子を見て、隆宗が豪快に笑った。

「はっはっは。冗談だ。冗談」

 からかわれて慌てふためいた明治が、膨れながら抗議するのを隆宗は軽く受け流す。

「ともかくだ。万が一俺が寸止めに失敗したら何かくれてやる。そして、お前が目を瞑ってしまったらだが…」

「ぼ、僕もかけるんですか!?」

「当然じゃないか。じゃないと賭けにならないだろう?」

「う、それは、まあ、そうですけど…」

「そうだな。お前が目を瞑ってしまったら、俺の言うことを何でも一つ聞くというのはどうだ?」

「それっていつもと違うんですか?」

 普段から隆宗の命令や依頼は聞いている明治が、当然の疑問を返してくる。

 それに対して、隆宗はにやりと意地の悪い笑みを浮かべるだけだった。

「その笑いが気になりますけど、とりあえず分かりました。その賭け、乗ります」

「うむ。素直でよろしい。それじゃあ、始めるぞ!」

 明治が納得したことで、隆宗は改めて木刀を正眼に構えた。そして、集中するように軽く目を瞑り、深い呼吸をした後、

「ハッ!」

 鋭く息を吐きながら、裂帛の気合を込めて、木刀を振り下ろした。

勢いよく振り下ろされた木刀が、鋭く空を切り裂きながら自分の頭に迫ってくるのを、明治は必死になって見つめた。

そして、ぴたりと自分の頭の数センチ上で止められた木刀を見て、安堵のため息を吐いた。

「よく我慢したな」

 木刀を引きながら、隆宗が感心した声を出した。

 明治は顔を引きつらせながら、力なく笑った。

「よし。その調子で続けるぞ」

 再び一足一刀の間合いに戻った隆宗は、次の打ち込みのために、再び深い集中に入った。

 しかしその時、突然「ガラッ」と道場の扉が開けられたと思ったら、幸がひょっこりと顔を出した。

 集中を切らされた隆宗が、不満げな声で訊いた。

「どうしたのだ、幸?」

 幸は、おずおずと隆宗に近づくと、こっそりと耳打ちをした。

「お館様、例の商人が来ました」

「おお、そうか!」

 幸の報告を聞いた隆宗は破顔した。そして、

「明治。すまないが急用ができた。今日の訓練はここまでにしよう」

「え?ええ~!?」

 一方的に明治に訓練の中止を言い渡すと、自分は幸を伴って、すたすたと道場から立ち去ってしまった。

 一人取り残された明治は、頭に疑問符を浮かべていたが、やがて諦めたようにため息を吐くと木刀を手に、一人素振りを始めたのだった。

 一方隆宗は、商人とあるものについて、幸や鉦定、光姫を交えて打ち合わせをしていた。普段隆宗が雑務をする、他の部屋に比べて狭く、戸や窓をすべて閉ざして、蝋燭を一本中央に置いただけの、薄暗い部屋に大人が四人、額を突き合わせて、こそこそと話している光景は、端から見ていて怪しいことこの上ない。

「それで、山辺様。今回のご入用のものですが…、新品の鎧一式と、刀、陣羽織でよろしかったでしょうか?」

 商人の言葉に、隆宗は頷いた。

「しかし、なんでまた戦に必要なものを一式揃えるんです?」

 商人のもっともな疑問に、何故か幸が誇らしげに答えた。

「今回の注文は、アキ君の物なんです」

「アキ君?」

「新しい俺の部下だ。つい最近、ウチに来たやつでな」

 隆宗の補足でようやく得心がいった商人は、気持ちを切り替えたのか、商人らしい顔つきになった。

「それでは、鎧の仕様なんですが、どうしますか?」

「ふむ。全体的な形は、あまり複雑にはしない方がいいだろう。色は…どうする?」

 隆宗の問いかけに、幸が手を挙げて、

「私、色は優しい色がいいと思います」

「そうね。明治さんらしい色には、優しい色が似合うわね」

「確かにその通りだ」

 幸の意見に、光姫と隆宗も賛同するが、商人は困った顔をしながら三人に問いかけた。

「あのう。それで、具体的にどんな色でしょうか?」

 具体的にどの色にするのか決めていなかった三人は、しばらく考え込んでいたが、やがて、各々希望する色が決まったらしく、商人に向かって一斉に希望を話した。

「私は、薄い青がいいと思います!」

「俺は、柔らかい感じの橙だ」

「私は、桜色がいいわ」

 三人はそれぞれの意見を聞いて、お互いに顔を見合すと、自分の意見を主張し始めた。

「絶対、薄い青が似合います!」

「いいや!橙だな」

「桜色がピッタリじゃないですか」

「薄い青!」

「橙!」

「桜色!」

 飢えた猛獣のような唸り声をあげながら、三人が睨み合いを始めたので、商人が慌てて仲裁に入った。

「ま、まあ、お三方。落ち着いてください!後日、それぞれの色の布と、鎧を持ってきますから、それで合わせてみればいいじゃないですか!」

 商人の説得に応じた三人は、不承不承といった感じではあるが、どうにか落ち着きを取り戻した。

 商人は、場を仕切りなおすように咳払いをすると、話を元に戻した。

「鎧の色はまた後日ということでいいとして、寸法はどのくらいです?」

 商人の問いかけに、隆宗が何故か自慢げに胸を逸らしながら、懐から一枚の紙を取り出した。

「そうだな。明治の身長は、六尺と二寸―約百六十六センチ―だ。体重は、十三貫―約四十八・五キロ―だ。袖幅は、大体二尺と七寸といった感じだな」

「いつの間にそんなの測ったんですか?」

 幸が少し顔を引きつらせながら訊くと、隆宗は不敵に笑いながら、

「ふっふっふ。あいつが寝ている最中にこっそりとな」

「「うわぁ」」

 隆宗のあまりにアレな発言に、光姫と幸は隆宗から離れようと後ずさりして、蔑んだ視線を向けた。

 商人も若干引きながら、話を続けた。

「わ、分かりました。鎧と陣羽織の寸法はその大きさで作らせていただきます。それで、刀の方なんですが、ご要望はありますか?」

 隆宗は、光姫と幸に顔を向けるが、刀に詳しくない二人は軽く首を振った。つまりは、任せるということだろうと判断した隆宗は、しばし考え込んだ後、

「できれば、直刃がいいな。柄はできるだけ滑りにくいものを頼む。鞘や鍔は、そちらに任せよう」

 商人は隆宗の要望をさらさらと紙に書き出していく。

「長さと重さはどうしますか?」

「平均的なもので構わないだろう。下手に弄ったものだと、使いづらいからな」

「分かりました。その他に何かご入用などはありませんか?」

「俺は大丈夫だ。光と幸は?」

 隆宗の問いに、光姫は首を振り、幸は少し考えた後、

「そういえば、おさねさんが、調味料がもう少しでなくなるって言ってたような…」

「それでは、後程、お尋ねします」

 商人は、そういうと注文を書き出した紙を懐に仕舞い、戸を開けた。

 突然入り込んだ光に、三人が目を細めていると、商人は、三人にぺこりと頭を下げた。

「それでは、本日はこれにて失礼させていただきます。また何かご入用がありましたら、いつでもお申し付けください」

「うむ。よろしく頼む」

 そうして商人が去るのを見送った隆宗は、くるりと二人を振り返ると、

「いいか。今回のことはあくまで、明治には秘密だ。くれぐれも悟られるなよ」

「もちろんですわ」

「分かっています」

 光姫と幸が同時に頷いたところで、その日の打ち合わせは終了した。

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