一日目 友達が出来た!
▼▽ 一日目 友達が出来た! ▽▼
教室の前部分に教壇があって、灰色の長い机が大量に見える。後ろの席に行くに従って、机の段が少しずつ高くなってるみたいだ。
一番後ろの席は結構高く見えて、下の人に向けてイタズラしやすそうだと思った。
太くて白い柱が教室の中心に一本だけ建っていて、灰色の机は床とくっついているみたいだ。椅子は茶色のパイプ製で揃ってるけど、たまに違う色の物も見えるかな。
制服を着た人が座ったり集まったりして、たくさん居る。髪の形も色もたくさんあるので、チョッとだけ壮観だぁ。
緑色の短い髪の背が高い男の人と、黄色いギザギザ髪の人が結構目立つかな。
「おはよーございまーす!」
元気良く声を出してみた。
「……」「あれ」「ああ?」「へぇ」「おはよう」
何人かこちらを見てくれたけど、ちゃんとしたお返事をくれたのは、窓際に一人で座っている赤くて長い髪をポニーテールにしてる女の人だけだ。
少なくてちょっとがっかりだよーっ。しょぼーんと気落ちした。
返事をくれた女の人が手を振って、おいでおいでと誘っているみたいに見えた。だから、行ってみようかなと思う。
女の人のそばに近づいていくと、女の人が首を傾げ始めた。その後僕のカバンの位置ら辺をジッと見て顔が赤くなり始めたので、どうしたのか少し気になった。
「や。その、元気だね」
女の人が手を上げたのが見えて、教室に響き渡るような高めのアルトの声が聞こえた。
「うん。元気良くしてたほうが、カッコイイし」
仲良くなれるといいなぁと思いながらすぐに返事をした。
「えーと。そのなんだ……カバンから、なんかはみでてるぞ」
「ぇ……」
言われてすぐカバンを見て、カバンの中にすぐさまそれをしまった。
替えの下着がはみ出ていた……
入学早々変なあだ名とか付けられないよね? 大丈夫だよね?
落ち着こう。
下を向いて羊を数えるといいんだっけ? そう考えて下を向いた。
一、二、三、死、誤、ろっ苦……
「僕、終わった……」
涙は出てこないけど、変な汗は浮かんできた。
「んーと。始まってもいないから大丈夫だぞ。元気を出せ」
「始まらなくても終わる事もあるんだよ?」
考える事がすぐにねがてぃぶになってしまいそうなので、明るく言ったつもりだ。
「あーと。堂々としていて、カッコ良かったぞ」
「そうだね、堂々と出して歩いていたもんね」
ねがてぃぶな答え方しか思い浮かばない。ズーッと放置されるよりはましだけど、チョッとだけほっといて欲しかった。
「そ、そうではなくてだな!」
いきなり肩をつかまれた。それも、ガシッと音がしそうなほど強くだ。少しビックリしたので、のろりと顔を上げてみた。
前には僕より身長が高くて胸も大きい女の人がいる。
この胸には何が詰まっているんだろうか? 後でパンチしたりつかんだりして確かめようと思う。
馬鹿な考えは止めるけど実行する事にして、真面目に見る事にした。
薄い赤色の髪を後ろで縛ってポニーテールにしていて、意志の強そうな赤い目がカッコイイ。同じ制服を着ているので服装は僕と対して変わらない。違う所を探してみると、柄に綺麗な赤い宝石がついた鞘入りの剣を腰に吊ってるのが見えた。
「……似ている」
顔をジッと見詰められながら言われた。
言葉の意味を少し考えてみたけど、全然わからなかった。
「似てる? 何に?」
「いや、なんでもない……」
聞き返してみると、答えてくれなかった。
自分から言ったのに失礼な人だなー、と思って口を開こうとしたら、女の人が真剣な表情になったので、開いた口を閉じた。
「生きていれば色々あるものだ。多少の事でくよくよしてはいけない」
「僕には多少じゃなかったんだ」
真剣に言ってくれたので、僕も顔だけは真剣にして答えた。
僕の代わりに真剣に悩んでくれるようなので、楽しい事でも考えよう思う。
思いついたのはお昼ごはんで、お弁当を持ってこれなかったから、お昼は学生食堂って言う所で食べれば良いのかなっと考えた。
「ぬぅ、それでも……」
「ありがとーございました」
女の人は悩んでるみたいだけど、別に放っておいていいはずだ。そう思って、僕の変わりに悩んでくれたので感謝しているよーっとだけ伝えておいた。
視線を横に向けると空が見える。空はいつみても綺麗だなぁ。
窓から空を見たら少し気が晴れるかな? そう思って窓を開けようとしたら、後ろから肩をつかまれた。
「まっ、まて!」
「なんだよもーっ」
少しうっとおしくて、イライラしながら振り返った。
「早まるな! あなたの気持ちをしっかり考えていなかった!」
「……ぇ?」
なに言ってるのこの人? こころの底からそう思った。
「そうだな。ずっと居るかも知れぬクラスで、人前であの下着を晒したのだ。もっと真剣に考えるべきだった」
わかったように真面目な顔で面と向かって言われて、凄い恥ずかしい。
それにあのって言うとなんだかやらしい下着みたいじゃないか! 別に変な下着じゃなくて普通の水色と白のしましまだ!
思った事を大きい声で叫びそうになったけど、なんとか抑えられた。
頬が火照ってるかも。
「ちょっと、えぐらないで欲しいかな」
恥ずかしくなってきたので、顔を見られないように下を向いて小さく答えた。
「すまない……」
「気にしないで、君には関係ないし」
女の人が優しくしようとしてくれているのはわかるので、つっけんどんに答えて少しだけ罪悪感が湧いた。
「それでも……そうだな。経験しない事にはわからない。か」
「そうだね」
僕は外を見ようと思っていたんだけど、女の人の顔が赤くなり始めたので気になった。
何故そこで赤くなるんだろう? 変な事を考えているのかもしれないので、もしかするとこの人はあれな人かも知れないと警戒し始めた。
「わわかった。わ私も、あああなたの気持ちをわかるようになるなるとしよう」
挙動不審にぐるぐる目が回って、どもった言葉使いも変だ。危険を感じて離れようとしたら、女の人がスカートの下から中に手を入れて降ろしあいえあ!
「ちょっ!」
僕は慌てて、その人の手ごとそれを引き上げた! でも……手に感じた感触からすると上げすぎたかも。
「んんっ」
赤いのなんて降りてこなかったからね!
そう思って誰も見ていなかったか、周囲を見回して確認してみた。黄色い人がこちらを見ていたけど、視線は僕の前にいる女の人だ。
「ふぅ……えーと、そんなことしてもらってもしょうがないんだけど」
結構焦ったけど、僕に関しては大丈夫。誰もこちらを見ていないので大丈夫だ。なんで僕が焦っているのかわからないんだけど? そう思うと、なんか悩んでいたのが馬鹿みたいに思えてきた。
空を見て気持ちを落ち着ける気分でも無くなったし、僕に起こったあの事も、もうどうでも良くなってきた。
変わりに、今度は目の前の人にどう対応したらいいか方針を考える必要があった。
「んぅ、ぬぅ。ではどうしたらいいのだ?」
もぞもぞとしているので、あれの位置を戻しているみたいだ。その動きを見て方針が決まった。僕の失敗を忘れてもらうためには、からかうしかない。
僕が楽しむ為にやるわけじゃ決して無いんだ。と心を誤魔化してみた。
「君が心配してくれて嬉しかったから、僕はもう大丈夫」
「そうか。大事無くて良かった」
目をしっかり見て言うと、女の人がホッと胸をなでおろしたのがわかった。
人は安心した時に一番隙が出る。そう考えてゆっくり女の人に抱きついた。
「だけどね、ここで派手な赤いパンツ脱いで見せびらかしたりしたら、ぜったい僕より恥ずかしい事になってたと思うよ……」
耳元に口を近づけてこそっと言う。すでに僕の策は成っている!
「ねっ!」
少し離れて、意味ありげに周囲をチョッとだけ見回して、可愛く見えるように一言だけ付け加えてあげた。これで完成だ!
「ぬな!」
ぉぉ。女の人の顔がどんどん赤くなってく。キョロキョロと顔を動かして、挙動不審に辺りを見回している。僕より大きいけど小さい動物みたいでなんか可愛い……
「見られてなかった、よな? よな? おい?」
ずっと見てると、おかしくて笑いたくなってきた。口を押さえないとまずいかも。
「くっ……ぷくくく」
なんかおびえてるみたいに見えたのがおかしくて、我慢できなくて、顔を見たままでいたら吹いてしまいそうなので下を向いた。
「ぬぅ……一体どうしたのだ?」
不審そうに言われたので、返事をしないわけにはいかないと思って顔を上げた。
眉を寄せて僕を疑わしそうに見ている困ったような表情がやけに似合って、可愛くて、おかしいと思っちゃった。
「ぷくく、あはははっ」
さすがに笑っちゃ怒るだろうと思っていたけど、声を我慢できなかった。心配してもらっていたのに僕は不謹慎かも。
「っ……笑うとは何事だ!」
目を見開いて、その後やっぱり怒っちゃった。肩を強くつかまれてちょっと痛い。
「あはは。ごめーん。急に可愛くなったなぁと思ったから」
最初は硬い口調も、カッコ良く見せるために決めてるんだなと思っていたから、なおさら可愛く見えるかも。
「ぬぅ、私が可愛いだと?」
「そうだよ、とっても可愛いよ♪」
疑わしそうに僕を見ているので、怒られるのを覚悟しながら、僕の事をわかってもらえるよう嘘偽りに見えない笑顔を作って答えてあげた。
「そう言われるのは懐かしいな……」
目の前で嬉しそうにして目を閉じちゃった。
「あれ?」
「ありがとう」
急にどうしたのかな……と思っていたら、なんかお礼言われちゃった。
怒られると思っていたのに、不思議だ!
「えーと、あれ? 君、あっ! まだ名前教えてないよね?」
「うむ、そうだな。私の名前は、パルル・ファイアスだ。パルルとでも呼んでくれ」
なんとなく仲良くなれそうな気がしたので、名前を教えておこうと思ったんだけど、先に言われちゃった。
パルルは笑顔で名前を教えてくれたので、僕も笑顔で答える事にした。
「はーい。僕の名前は、ティルト・エルド。ティルって呼んでね」
「ティルか。よろしく頼むぞ」
手を差し出してきたので、軽く叩こうと思ったらバチンと強く音が鳴った。
パルルは笑顔だけどこめかみに何か浮いてる!
「パルちゃんよろしくね!」
愛称を呼びやすくして誤魔化そうとしたけど、睨まれたのでちゃんと握手した。
手が、手が痛ひー。
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