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ガキのくせに

 敦彦が帰宅した時には、既に奈津は帰宅して入浴中であった。当たり前である。面白くなさそうな真澄の機嫌を取るために、ラブホテルまで行ってフルコースこなしたのだから。

 本当は早々に帰宅して、奈津の帰宅時間を見届けたかった。あの後、遊園地の中で奈津の姿を見つけることはできず、言われるがままにアトラクションをいくつか回ったが、敦彦は元来、眠たがりの面倒臭がりだ。はしゃぎもしない遊園地が、楽しい筈なんかない。普段は真澄の「あーしたいこーしたい」に付き合って街を歩くが、自分からどこに行こうって提案なんか、まずしない。今日はやけにエネルギーを使った日だった……


「奈津、何時頃帰って来た?」

「八時頃だったかしら。今日の夕飯はお父さんと二人で、静かだったわよ」

 のどやかな母親の返事に、ほっとする。少なくとも、平和な顔で帰って来たということだ。

「あんたもそろそろ、彼女連れてきなさいよ。奈津を送ってきた子、可愛かったわあ」

「来たの?」

「ううん、外の鉢植えのヨトウムシ退治してたら、帰って来ただけ。きちんと挨拶のできる子でね」

 送ってきたのは、プラス点にしてやろう。それにしても、夜道を二人で……

「あっくん、今頃帰り?いいな、こんな時間まで遊んでても、怒られなくて」

 奈津が髪を拭きながら、リビングに顔を出した。


「俺は男だから、いいのっ!」

「真澄さんも一緒だったんでしょ?真澄さん、女じゃない」

「だから、送ってきたっ!」

「あたしも送ってもらったもん。いちいち感嘆符つけないでくれる?」

「あー言えばこー言う。可愛くねー」

「あっくんに可愛いと思われたって、仕方ないもん。バカじゃん?」

 奈津はクールな顔で、冷蔵庫から麦茶のポットを出す。クリップで挟んだ髪が、肩に一筋落ちていた。

 ガキの癖に、ませやがって。

 この時点で、自分のファーストキスが中学校の二年生だったことは、高い棚の上に乗っているのである。


「奈津、あいつ、部活とか入ってないの?日曜日に遊んでて」

「中学校の時はサッカー部だったんだけど、高校に入って一緒に軽音に入った。今、ベースの練習中」

 けっ。ナンパが。口の中で吐き捨てて、風呂に向かう。遊びの手慣らしに、奈津みたいにオトコと付き合ったことがない女の子は、持って来いだもんな。


「あっくん、パンツいっちょで、ウロウロしないでくれる?乙女が一緒に住んでるんだよ」

 出しっ放しの麦茶のポットを冷蔵庫に収めたら、クッションを抱えてテレビを見ている奈津から、声がかかった。

「オトメだあ?自分が使ったコップも洗わないガキが、何言ってやがる」

「奈津は来月から、結婚だってできるもん。家の中でパンツいっちょの男なんて、真澄さんだって嫌がると思う」

 奈津が置きっ放しにしているコップを回収して、シンクで洗いながら、敦彦は苦笑する。婚姻年齢に達することが大人だと思っているあたりが、ガキの証拠だというのに。


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