妹は成長している
妹のデートを耳にしたのは、一昨日である。高校生になったばかりの妹の服装にケチをつけたら、こういうのがシュミな人だっているのだ、と返された。
「彼氏でも出来たのか?」
「ふっふーん。日曜日には、ゆーえんちっ!」
音符のつきそうな返事があり、鼻歌交じりに妹は部屋に引っ込んだ。へえぇ、そんな年頃なのかと思うと同時に、相手の男が気になった。十二歳年下の妹は、高校生になったばかりだが、敦彦から見れば立派に子供だ。中学・高校と部活帰りに保育園に迎えに行き、自分の部屋の中で一緒に寝たがった小さな頃と、大して変わらないように見える。
敦彦がはじめて彼女らしき存在を持ったのは、中学生の頃なのだから、奈津は別段早いほうじゃない。兄の欲目で言うのもなんだが、十人並み程度には可愛いし、活発だ。
活発―――そっちにまで、積極的じゃなくていいぞ、奈津。
そっちってのがどっち方面だか、敦彦は考えたくない。自分自身は高二の夏に女子大生と済ませた、アレである。
自分の妹が、その対象になるのは……ダメだダメだっ!あんなに小さくて、俺と一緒じゃなきゃ寝ないって駄々こねてたヤツだぞ。
自分はやっぱり、恋人と散々そういうことをしているのにも拘わらず、である。
朝っぱらからウキウキと鼻歌を歌いながら、紅茶に大量にミルクを入れている妹を横目に見ながら、真澄に目的場所変更のメールを入れた。
見てやる。奈津に男の見定めなんて、出来るはずがない。
高校生がゆっくりと出発する遊園地は、行動範囲内でふたつ。初デートなら手堅いところで、敷地が広くて繁華街には近くないあっち側だとアタリをつけて、敦彦も出掛ける支度をはじめる。真澄から了承のメールが入ったのを確認して、行動開始だ。
「あっちゃんが遊園地なんて、言い出すとは思わなかった」
普段よりもアクティブなスタイルで現れた真澄を促し、入園チケットを買う。
「あたし、遊園地よりもそっちの温泉の方がいいなあ」
遊園地の隣に、温泉施設があるのだ。
「いや、ジェットコースターに乗りたくなって」
「らしくなーい。映画館に入って寝ちゃう人が」
妹のデートを覗きに来たと言ったら、真澄はどんな反応を示すだろう。俺は断じてシスコンではない。
だから、これはあくまでも偶然だ偶然。たまたまジェットコースターに乗りたくなったら、そこで奈津がデートしてるのだ。