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究極の美女の幸せ  作者: 小森しゃお


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第十三話 初登校


 ビクビクしながらこそこそと校門をくぐる。術後初めての登校。チラチラとみんなに見られているような気がする。自意識過剰だろうか?老人の言う通り術後の痛みはすぐに取れたが、今は心がバクバクしている。整形が元でいじめられる可能性だって大いにあるし、数少ない地味友だって引くかもしれない。



「おはよう…さなだよね?」


 ちょうど和子のことを考えていた時に声をかけられたのでビクついてしまう。



「う、うん。おはよう。」



「もしかして…マルボウさん?」


 コクリとうなずく。



「変…かな?」



「そんなことないよ!!すごく可愛くなった!!」



「そう…かな。」



 嬉しいと思う反面友達ならそう言うしかないとも思ってしまう。私が逆の立場でもそうとしか言えない。でも今も感じるみんなの視線…。

 だんだんわかってきた。その視線は概ね好意的なものだ。こそばゆいような恥ずかしいような不思議な気持ちになる。目立っているとは思うけれど決して嫌じゃない。



「春宮…?」



 声をかけてきたのはまさかの宮下君だった。宮下君が私に声をかけてくるなんて…。



「な、なにかな?」



 精一杯裏声にならないよう注意したがうまく行ったかは自信がない。宮下君はいつも友人に見せる爽やかな笑顔ではなく、戸惑うような困ったような顔をしている。


「いや、なにってわけでもないんだけど…春宮可愛くなったなって。」


 ヘヴンである。彼の周りににこやかに踊る小さな天使たちが見える。顔がにやける。なんて返せばいいの?彼の言葉は決して建前なんかじゃない。それならわざわざ話しかけてなんかこない。いえ、例え建前だっていい。好きな人が自分のことを可愛いと言ってくれる、こんな幸せが他にあるだろうか!!いや、ない!!



「そうだよね、やっぱりマルボウさんすごいね!!」



 地味友よ、宮下君の前で整形の話なんかするんじゃねえ、と思ったが言えない。事実なのだから。私が和子に睨みを効かせていると、



「別にそんなの気にすることないよ。今はホクロとったりとか脱毛とか普通だよ。僕だって髭の脱毛とか考えるし。」



「そ、そうなの?」



「そうだよ。すぐ青くなってきちゃってさ、朝なんか大変。」



 意外だ。みんなが振り向くようなタイプではないけど隠れナチュラルイケメンにもそんなコンプレックスがあったなんて。そして私の整形は脱毛とかいうレベルではないゴリゴリの改造なのだけれど。


「あのさ、今日放課後みんなでカラオケ行くんだけど春宮たちもこない?」


 まさかこの私が宮下君から誘われる日が来るなんて。ただの集団交遊であり特別な意味はない。だがそれでも、それでもそれは私の人生最上の喜びであり一生忘れることのないであろう貴重な思い出。すなわち宝物である。だが…



「ごめん、私、検査があるから。」


 これでいい。これしかない。地味女にイケメンとのカラオケだなんてハードルが高すぎる。検査があって本当によかった。隣では和子もそれとなくお断りを入れている。当然だ。我々の世界に皆でカラオケなど存在しない。


 カラオケ?は?なにそれ?一度だけ母に無理やりそんなようなところに連れていかれた、もとい連れ去られた気がするがマイクを持つと声が出なかった。それが私という人間なのだろう。人前で何かしようとしても恥をかくだけだ。今日はもう十分、声をかけてくれた。誘ってくれた。十分すぎるほどの幸せ。これ以上は望むまい。そして忘れてはならない。彼が声をかけてくれたのは紛れもなくマルボウ先生の力なのだと。


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