第八話
「っはあ・・・」
王様に会った後、すぐに自分の部屋に行き、深ーくため息をつきます。
そのまま、無駄に豪華なベットに倒れこんでしまいました。
「ルー、どーしたの?」
「王と会うのは、そこまで疲れるのか?」
同室のカーム、スゥちゃんが心配そうに覗き込んできます。
疲れるって・・・そんなもんじゃ無いですよ。さっきまでは二人に気圧されて、気づきませんでしたけど・・・
今思うと・・・なんて威圧感! ああ、緊張で死ぬかと思いました。
こういうことに何故だかこなれた様子の二人はともかく、私はっ、私は普通の中学生なんですからねッ!」
「・・・ルー、全部声に出てる」
「はうあっ?!」
し、しまった・・・。
「あはははは、ルー変な声~」
お腹を抱えて、スゥちゃんは大笑い。今のの何がそんなにおかしかったのでしょう・・・?
スゥちゃんは本名陣野 冥、スマイルとも呼ばれています。
セミロングの髪をサイドテールにしていて、とても小柄、向こうではたまに小学生に間違われたりしていました。
常に明るく笑顔、かつポジティブシンキング。暗い事を考えてるスゥちゃんなんて、考えられないです。
少し幼いところもありますが、無邪気な感じで私は好きですね。
お姉さん的な人に憧れる傾向があり、カーム、ティファとかと仲がいいです。
ついでに言うと、こっちでの偽名は確か・・・『スマイル・ラーヴァ・ユィミヤ・プルート=フォーメ』でしたっけ?
多分、『プルート』は冥から冥王星を意味する『Pluto』、『フォーメ』は陣野から陣営を表す『Formation』から・・・だと思うんですけど。
まあ、聞いてみていないので、合っているかどうかは分かりませんけどね。
ガチャ
と、考え事をしていると、扉が開く音がしました。
「みんな、リーディとティファが会議室に集合だって」
誰かと思ったら、スノウですか。そういえば、スノウはティファと相部屋でしたね。
はいはいっ、すぐに行きますよー・・・。
「この中で、喧嘩に自信がある人いる?」
はい? いきなりの問に、みんな目が点になっています。来るなりこれですか?
「いきなり呼び出されたと思ったら、一体なんなんだ? まずは事情を説明したまえ」
ぴ、とメガネを押さえながら、少し偉そうに言うのはディシー。でも真面目でいい人です。
長い髪にノーフレームのメガネと、見た目からして知的ですね。だけど、足も結構速いんですよ?
トレードマークであだ名の由来でもある電子辞書を今日も抱えて・・・って、ええっ?! 持ってきてたんですか?!
「ああっと・・・そうだな、まずはさっき王様に会った後、俺の部屋にある男性が来たところから話そうか」
*********
「プレッジのリーダー、リーディ様ですね?」
「そうですが・・・なにか用ですか?」
いきなりやって来たその男性は、藍色のぴしっとした服を着た、いかにも軍人っぽい人だった。
男性は、エミルダと名乗ると、挨拶もそこそこにこんな事を言い出した。
「騎士団員とプレッジのメンバーの方で、模擬試合をしませんか?」
「・・・はあ?」
エミルダさん曰く、騎士団に『こんな子どもだけの集団が勇者だなんて認められない!』と言っている連中が居て、騎士団長に直談判しに行ったらしい。
話を聞いてみると、喚び出された勇者全員が武術、あるいは魔法に秀でているわけではなく、|(当たり前だ)喚び出した国の軍人が師となる、ということが慣習としてあるらしい。
ここレインディア王国では、もちろん王堂騎士団がその役なのだが、一部の騎士たち曰く、『子どもに武術を教えるつもりはない』と。
そこで話し合った結果、プレッジのメンバーと模擬試合をして、騎士団が負けたら教えてもいいと・・・。
*********
「と、言うわけだ」
「・・・最後、若干言い分に飛躍がなかったか?」
早速クリスが突っ込んでます。確かに、どうして模擬試合をしたら教えてもよくなるのでしょう?
「・・・そこまでは聞かなかった」
「しっかりしてよ。というか回想方式にする必要あったの?」
リン、気持ちは分かりますがメタな発言は控えてください。
「それで、さっきの質問になるわけか」
「だったら、ルーの魔術でやっつけちゃえばいいじゃん!」
えっ、えっ、私ですか?!
「スゥとカームの言うとおりだよ。確かに、ここはルーを出すのが一番だろうね。
・・・一人は」
一人は?
「一人はって・・・まさか、全員が出なけりゃいけないのか?」
クルが、慌てたように言いました。・・・そりゃあ、慌てますよね。クル、運動苦手ですし。
「全員って事はないけど・・・お互いに5人ずつ出し合って、一騎打ちをするんだって」
「5人か・・・」
まともに戦える人、そんなに居るんですか?
「とりあえず、ルーと俺とは決まりで・・・あと3人。誰かいないか?」
そう言ってリーディはぐるりと周りを見回します。すると・・・。
「じゃあ、私が」
「俺も・・・」
なんと、リンとクリスが手を上げました。意外ですね・・・。
「え、大丈夫なの? ふたりとも」
「失敬な。こう見えても私、空手黒帯なんだよ?」
笑いながらリン。じゃあ、クリスは・・・?
「俺は一応、剣道部だから」
ああ、なるほど。・・・あれ? でも。
「剣はどうするんですか?」
武器がないと、どうにもなりませんよね?
「ああ、武器は使ってないのを貸してくれるらしい。・・・さすがに刀はなさそうだが、剣ならいくらでもあるだろ」
なるほど。その辺は親切ですね。フェアプレイ精神でしょうか?
「あと1人、誰かいない? リンとクリストみたいに何か技術があるわけじゃなくてもいいんだけど」
「要するに、頭数合わせって事か。まあ、5人なら3人勝ちゃあこっちの勝ちだもんな」
と、かるーく言うのはトリック、こと河隼 東。まあ、そうですけどねえ。
「・・・でないな」
「これは困ったね」
ティファとリーディは、困ったように顔を見合わせました。
「誰かいないか? さっき言ったように、ちょっと運動神経がいいとか、他の人にはできないことが出来るってていどでいいんだが・・・」
他の人ができないことが出来るって・・・あ。
ふと気づいて、私はある人のところに視線を走らせました。
・・・よくみると、他の人も彼女のことを見ています。
「えっ、え、なに?」
「スゥ・・・たしか、力強かったよね」
リンがそう言うと、何のことだか気づいたスゥちゃんは慌てだしました。
「ええっ、ぼ、ぼく?!」
「そうか、小柄で怪力なら、小回りが効く上に打撃したとき与えられるダメージが違うよな」
クルも、納得したように頷きます。
「スゥ、頼めるか?」
リーディが、まっすぐとスゥちゃんの目を見つめて言いました。
「んー・・・わかった。頑張ってみるよ!」
しばらく考え込んでいたようでしたが、にっこり笑って頷きました。
リーディも、嬉しそうに笑いました。
「よし! 模擬試合まではあと10日。それまでに、出来ることはしておかないとな」
「例えば?」
スノウは、首をかしげます。それを聞いたリーディは、少し笑って言いました。
「特訓とかな」
提供していただいたオリキャラ、スマイル、トリック、ディシーを出してみました。
スマイル以外の二人は、出番が少なく、またレイさん提供のミストくんは登場できず、すみませんでした。
次あたりはもうちょっと出せると思います。