表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

第五話

「で、えっと・・・それでは、魔力と属性の測定を致します。

勇者様方、こちらへ・・・」


・・・えー、フィーレンシア様、初めの『えっと』とあとの言葉、かなり印象が違ったのですけど?

いろいろツッコみたい気分でしたが、とりあえず全員あとに続きます。


「(なあ、ルー)」

「・・・?(なんですか?)」


隣にいたクリスが、小さな声で言いました。


「(勇者様って・・・なんか恥ずかしくないか)」

「(・・・同感です)」


確かに、ちょっとこそばゆいですね。厨二クサイし。


「(それに、百歩譲って勇者様は良しとしても、勇者様方って・・・言葉として、アリなのか?)」

「(う、うーん・・・)」


ごもっとも。と、そこに・・・。


「(じゃあ、団体名を決めればいい)」

「「うわっ?!」」


いきなりの乱入に驚くと、そこにはニヤニヤと笑うリーディ。び、びっくりしました・・・。


「(そうすれば、勇者様方じゃなく、そっちで呼ばれるだろ?

  これ終わったら相談するか)」


クスクスと笑いながら、少し離れていきます。

・・・なんか楽しそうですね。



「では、魔力測定を始めます。それでは・・・ティファ様、この魔水晶に触れてください」

「この、って・・・この超巨大な球体?」


案内された部屋には、超巨大な水晶玉が。直径・・・1mぐらいですかね?

・・・私は、それよりもこの人の多さのほうが気になりますけど。やじうまですか?

ティファは、それにそっと触れます。


「・・・これで?」

「もう出ます・・・はい、魔力値A、属性は風ですね」


ざわっ! 一気に場がざわめきました。


「なんと・・・Aとは」「宮廷魔道師並ですぞ・・・」


・・・というか、Aですか?


「あの、この測定値って、どのような段階があるのですか?」

「はい、Fが最低で、順にE、D、C、B、A、AAがあります。Dが平均、Bで普通の魔道師並ですね」


すぐにフィーレンシア様が答えて下さいましたが・・・なんか、大雑把ですね。やっぱり技術の差が・・・。

えっと、私流に測定すると・・・。


「魔力値650、[風]属性ですね。確かに、魔力はちょっと高めですねえ・・・平均が100ですから」

「なっ・・・!」


いきなり、一気に人の視線が集まりました。特に、ローブにマントの人たちの視線が痛いです。

えっと、なんかまずかったですかね?


「もしや・・・魔力を目視出来るのか?」

「まさか! ありえない。それに、値の表し方が違う」


特に大きな声でいうのは、白いマントに蒼の刺繍の服の二人。・・・もしかして、魔道師さんですか?


「私は・・・というか、私の目はちょっと特別なんです。でも昔から見えているんで、大体の平均とかは判ります。

値は、それを元に自分で勝手に当てはめているだけですよ?」

「んなっ・・・! ありえない! 魔族ならともかく、人の目が魔力を捉えるなんて・・・!

ま、まさかお前魔族か?! よもや勇者を騙って魔族などが侵入するなど!」


そのうちの一人、赤茶色の髪の男性は、私を睨みつけると、懐から淡くひかる石を大量に取り出しました。

って、え、えええっ?! いきなり何を・・・


「レイミオ・レブン・サフィール=ラルフィス!」


響き渡る声。あ、フィーレンシア様?


「勇者様になんということを! 異界の方なのだから、こちらの常識が通用しないなど、当然でしょう!」

「・・・申し訳御座いません」

「私にではなく、ルーフ様にです!」


バシッと言われ、軽く顔を歪める男性・・・レイミオさん。


「・・・なにか?」


フィーレンシア様もそれに気づいた様子で、高圧的、かつ不機嫌な様子で彼を見つめています。

うーん、こういう時、ホントに王女様なんだなあ、って思います。


「・・・この者たちが勇者など、何かの間違いではありませんか?」


その時、今までちょっと黙り込んでいた白マントのもう片方、藍色の髪の男性が静かに、しかししっかりと言いました。

それを聞いて、我が意を得たりとまた大声を張り上げたのはレイミオさん。


「そうです! こんな大量に現れたのもおかしいですし、ほとんど全員が黒髪黒目ですよ! 不吉すぎる。あの召喚術式は異界で魔力の高いものを検知し、呼び込むものです。検知するのは魔力だけ、種族も何もわかりません。過去にも、人間ではなく獣の類を呼び寄せた例がいくつかあるじゃないですか。それを知っていた魔族が先に異界に紛れ込み、わざと高い魔力を放出させていたのではありませんか? そもそも、この人数にしたって、観測された魔力の値が大きすぎると思っていたのです! 無意識に出している量にしては、多すぎる。

 わざと魔力を放出させ、術式を引き寄せたとしか思えません!」


そこまで一気に言うと、ゼエゼエと息をついた。


・・・ちょっと話に飛躍がありませんか?


「・・・なるほど、理にかなっています。過去の勇者様方の証言から、異界に魔法の類が無いことは証明済み。魔力を放出する機会も、その方法も存在しないはずですからね。

・・・しかし、それだけでこの方々が魔族だと断定するのは、少し飛躍がありませんか?」

「しかし!」


そこで、フィーレンシア様はレイミオさんのセリフを遮るように、深くため息をつきました。


・・・というか、当人をほっといてそんな話、どうかと思うんですが。

変な疑いをかけられているようですし。こうなったら・・・


「あのっ!」


ちょっと大声を出して、注意を引きつけます。ううっ、やっぱり視線が痛いです。


「私、ちょうど召喚されたときに、大魔術を使用してました。 私達が喚ばれたのは、そのせいでは無いですか?」

「異界に魔法?! そんなこと聞いたことも無い!」


すぐに反論するレイミオさん。・・・そんなこと言われましても。


「あまり、知られてないんです。今までの人達は、知らなかったんじゃないですか?

私の住んでいた国でも、他に魔術士がいるという話は聞きませんでしたし、使える人自体が少ないんだと思います。

・・・ついでに言うと、私のは魔法ではなく魔術、正確にはアウラ魔術です」


一気に場の雰囲気が固まりました。・・・まあ、信じられないでしょうけど。


「異界の魔法、いや魔術? そんな話「レイミオ!」しかし王女様・・・」


「知られていない術があっても、おかしくはありません。

そんなに信じられないというのなら、実演してもらえばよいだけの話でしょう!」


凛とした声でフィーレンシア様がそう言うと、くるりと向き直って申し訳なさそうに言いました。


「こちらの魔道師は、この若さで宮廷魔道師に名を連ねるほどの実力者ですが、どうにも頭が堅いことで有名で・・・。

それで、よろしかったら是非とも勇者様方の魔法・・・いえ、気魔術とおっしゃりましたか。ここで、見せて欲しいのです」

「え、ええ・・・私はいいですけど」


そう言うと、バッとみんなが一斉に私からちょうど円形に距離を取ります。それを見たフィーレンシア様。


「あら、ルーフ様が術の中心ですか?」

「・・・魔術を使うのは私だけですよ? そもそも、魔術が使えるのも私だけですし。

さっき言った『私達』というのは、私と、私の師のことです」

「馬鹿なっ! たった一人であれだけの魔力を放出していただと?! ありえない!」

「レイミオ!」


またもや大声で言ったレイミオさん、フィーレンシア様に睨まれてしぶしぶ後ろに下がりました。

・・・後ろと言っても、輪の中では一番内側ですけど。


で、えっと・・・


「何にしましょうか?」

「ルー、ほらあれ! 虹とか出る、『蒼き調べは』・・・なんだっけ? 呪文がキレイで、私好きだな」

「[水]系統ですか・・・というか詠唱はいつも適当ですよ? 覚えてないです」

「えー・・・」


残念そうにリンは口を尖らせました。

『詠唱は適当』のところで、レイミオさんがまた反論したそうでしたが、フィーレンシア様に睨まれて我慢したようです。


・・・なんか、詠唱考えるのめんどくさくなりました。

普段は、『次はどんな魔術にしようか? どんな詠唱にしようか?』って考えてるんですよ?

いきなり言われてもそんな、思いつきません。


ええい、もういいです。


(“リスタ”、“イクス”、“芳華ローワ・セルフィー”)


空中に小さな水球をだし、風で細かくしながら部屋中に拡散、花をふらせてみました。

めんどくさいので、さっきやったのとほとんど同じです。まあ、それでもきれいだと思いますけど。


「ま、全くの無詠唱だとっ!?」


またもやレイミオさん。喉が潰れちゃったりしませんか?


「それに三つの事象を同時に・・・一体、どの属性持ちなんだ?!」


・・・え、でも自分の属性じゃないとダメとか、ありませんよね?

そんなこと言ったら、私は魔術を一個も使えないことになりますよ。


「私の属性は[無]ですけど・・・あ、そういえばこっちにはないんでしたね。上位と、最上位の5つ」

「[無]?! 聞いたこともないぞ!」


目を白黒させるレイミオさん。


「えーっ! 昨日の説明だと、[無]って最上位だよな。ルーって実は凄かったんだ」

「なにいってんだ、魔術士の時点でもう凄いだろ」


私の横では、クルとクリスがこそこそと話しています。


「あの、その上位と最上位の属性って、一体なんですか?」

「あっ! おまえ、シオンとこの・・・また忍びこんできたのか?」


ぴょこんと輪の中から顔を出したのは、綺麗なまっすぐな銀髪に、桔梗色の目の女の子。

ゆったりとしたドレスを身につけているし、貴族ですかね?


「お姉さん、教えてください!」

「えっと、まず上位は二つに分けられて、低いほうが[幻]と[操]。[幻]は心を、[操]は物を操る属性です。

高い方は[創]と[消]で、これはその名の通りですね。

最上位は[無]、これは虚無の無であり、無限の無でもあります。すべてを内包し、すべてを否定する」

「へえ、じゃあ基本七属性と神聖属性は?」

「基本七属性は低位、神聖属性は中位と呼ばれてます」

「へえ・・・」


真面目な顔で聞き入り、うんうんとうなずいています。・・・どうでもいいけど、可愛いです。


「なっ、神聖属性が中位?! 信じられん! その5つの属性も聞いたこともない」


・・・さっきからそればっかり言ってません? レイミオさん。


「・・・というか、シルビア! ここはお前みたいな子どもが来るところではない!

さっさと家に「私は、自分より強い人、もしくは徳の高い人にしか従いません」くっ・・・!」


ものすごーく冷たい、鋭い目で言い放ったシルビアちゃん。

・・・なんか、すごく大人びてません?


「兄さまに会いに来たら、あなたみたいな人に出くわすなんて・・・今日はついてませんね」


ため息混じりに呟くシルビアちゃん。


「おい、それはどういう意味だ! いくらシオンの妹、マリス殿の娘だからって、俺に向かってそんな口の聞き方は・・・」

「じゃあ、また勝負しますか?」


睨みつけているわけでもなしに、こんな迫力出るんですね・・・。しかも、こんなちっちゃい子が。

レイミオさんは、唇をかむと、うつむきました。

『勝負しますか?』の問でこうなるとは・・・実は、この子かなり強かったりするのでしょうか?


「・・・お騒がせして、申し訳ありません。フィーレンシア様」

「いいえ、いいのよ。シオンなら、いつものように書庫にいると思うわ」

「ありがとうございます。失礼します」


左手を胸に押し当てペコリと一礼すると、ちょこちょこと去って行きました。

フィーレンシア様は、その様子を見て微笑みました。


「あの子・・・シルビア・メウルス=レブン・アイルファート=セシールは、宮廷魔道師を父、母、兄に持っていて、自身もとても魔法の才能があるのです。

兄達の様子を見て育ったからか、普段はとても礼儀正しいのですが・・・今のように、特定の人達に対してはかなり冷たくて」

「・・・ずいぶんしっかりした・・・というか大人びた子ですね」


答えるのは、スノウ。それを聞いて、フィーレンシア様はクスクスと笑いました。


「将来は、宮廷魔道師になるんですって。確かに、最年少宮廷魔道師になるかも知れないと既に言われるほどの実力の持ち主ですよ。

・・・ほら、さっきの礼も、魔道師の礼でしたし」

「・・・王女様、話がそれていますが」


藍色の髪の人が、そっと言いました。


「ああ、そうでしたね。

・・・レイミオ、これで納得できましたか? 一人で3属性の術を一度に操るくらいです、それはあれほどの魔力も出せるでしょう。

それに、確かに黒髪黒目は珍しいですが、だからといって魔族と決まるわけでもありません」


しっかりと目を見据え、フィーレンシア様。

レイミオさんは、唇をかみながらうなずきました。


・・・一件落着ですかね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ