第四話
ちょっと長め。・・・展開が変な上にあんまり進んでない・・・。
「・・・えっと、よく意味が「ストップだ、ルー!」きゃっ?!」
金色の髪の美人さんの言葉に答えようとしたら、リーディが後頭部に張り手をしてきました。
・・・さすがに痛くはなかったですが、すごくびっくりしたんですけど。
「(こういうのの交渉は任せろ!)」
「(うわー、うわー。一度こういうのやってみたかったんだよね)」
・・・えっと、ティファ、リーディ? いったいどうしたんですか?
「なにが起きたのか分かるんだったら、教えろよ!」
クリスのもっともな意見。一斉に、みんな頷く。
「まあまあ、見ててよ」
楽しそうに笑いながら、ティファ。美人さんに向き直ると、ハキハキとした口調で尋ね始めた。
「はじめまして。王女様・・・で、あってますよね?私はティファ・シィカ・サクリード。
こっちがリーディ・シフィート・イクシオンです」
ちょっ、なぜいきなり偽名?!
心の中で突っ込んでみますが、二人は楽しそうに、不敵に笑うのみ。
というか、よくとっさにそんな西洋風の名前・・・
・・・まさか、私達全員それを考えなければいけなかったり・・・しますか?
「まあ、よく私が王女だと・・・さすが、勇者様。改めまして・・・
レインディア王国へようこそおいで下さいました。私はフィーレンシア・レスト・ユーケナ=メウルス・ユイリス=レインディア、現国王陛下の二番目の娘です」
・・・なんだか良くわからない調子で三人の会話がトントンと進んでいったので、割合しましょうか。
さて、ここはなにやら豪華な会議室のようなもの。そう、王城の中です。
どうにも、私達にこの部屋を貸してくれるようです。ここ以外にも、六部屋ほど貸して下さっています。
・・・本当は一人一部屋の予定だったようですが、さすがに四十部屋は無かった模様。それでも、一部屋で十人はゆうに暮らせるほど広いんですけどねー。
男女別部屋で、それぞれ六、七、七の三班づつに分けて生活する事になりそうです。男子も女子も全部でニ十人いますからね。
で、さっきリーディとティファが美人さん・・・フィーレンシアさんに聞いてくれたことをみんなでおさらいしていたところです。
・・・おさらいというか、途中から誰ひとりとして話を聞いていなかったので、話してもらわないと今後まずいことになります。
以下、箇条書きにしてみますと・・・
・ここ、レインディア王国は大陸で三番目に大きな国で、他に大きな国は大きい順から
南に小国二つ超えたところに位置するファムナード皇国、
遥か東の方向にあるメイトレン帝国、
レインディアより少し小さい、西隣のセンシアリィ共和国などがある。
・宗教は、光の神ノユークが精霊や人と共に世界を創り、その後世界を運営させる神々を創りだしたというノユーク教が基本。
どの国でも、この教えが信じられている。というかこれ以外全く別の宗教が無い。
国によって、どの神が世界を運営しているかで意見が分かれている。
・名前の付け方は、名前・愛名・出身地・名字の順。
愛名は神に愛される名で、普段は名乗ることも無い。相手の愛名を使って呪いをかけると、威力が高くなるため。
愛名を名乗ることは、忠誠あるいは絶対的な信頼を意味する。
父方母方、両方の姓を名乗り、二つの姓は=で繋ぐ。母方の姓が先。
子どもの姓は、基本的に両親の父方の姓のみになる。母方の姓が貴族、王族の場合はこの限りではない。
(エリス=ミランダさんを父に、セシール=イルミナさんを母にもつ子どもの姓はイルミナ=ミランダになる。
ちなみに、イリス、ミランダ、セシール、イルミナは日本で言う佐藤、鈴木、田中、高橋ぐらい超ありふれた苗字)
地名にはまず出身地、その後ろは気に入ったところを=を使い追加可能。
出身地が判らない時はリステイトとおく。何も置かないこともできるが、名しか名乗れなくなるので、あまりしない。
地名のところのユーケナは王族、皇族に生まれたことを意味し、どんなに小さな国でも全世界共通につける。
・魔法はある。炎、水、草、地、風、雷、氷、光、闇の属性がある。
属性は、先の七つを基本七属性、光と闇を神霊属性と呼び、ほとんどの人は基本七属性のどれかを持つ。
神霊属性を持つ人はほとんどいなく、特に[光]属性持ちだと、聖人などと呼ばれる。
自分の持つ属性の魔法が、一番やりやすい。 また、全ての魔法は詠唱や魔法具、魔法陣などが必要で、事前に準備しておくことや簡略化することは出来ても、完全に無しでやることは出来ない。
属性を持たない、もしくは分からない魔法、人も存在し、そのへんは現在研究中。
・お金の単位はミル。大陸共通。1ミルが5円くらい。
硬貨には銅貨、銀貨、金貨があり、それぞれ小さいのと大きいのと普通のがあるので、全部で9種類。
一番小さい小の銅貨が1ミル、大きくなるごとに価値が10倍になる。ちなみに大の金貨は100000000ミル、つまり1億ミル。約5億円。
・現在、主たる王族は国王のバーソロミュー、その兄グスターヴァス、末の妹アナスターシャ、国王の長男ディミトリアス、長女アルテルミシア、次男フェルディナンド、次女フィーレンシア、三女コンスタンティア、グスターヴァスの長男ベネディクト、長女エレオノーラなどがいる。
「・・・と、いうわけ。本当は政治のこととかも聞きたかったけど、さすがにやめた。
あ、そうそう。ずーっと俺らが対応してたから、リーダーだと思われたみたいだ。まあ、別に問題ないよな」
と、リーディが締めくくりました。・・・というか、多っ。
「よくそんな沢山聞いたね、というか聞けたね。
・・・でもまあ、お金のこととか、名前のこととか、国のこととか、いずれは知らなきゃいけないし、いざって時に知らないと困るし。そのへんはナイス」
リンが、初めは呆れたように・・・後半は真面目な表情で言いました。
・・・でも、一つ気になることが。どうして・・・
私はまわりのみんなをこっそり見て、パッと目に入った“紅”を“投影”します。
・・・うん、出来た。今の私の色は、“紅”。
(“炎”)
頭の中で小さく思考すると、指先に小さな火が点りました。
「やっぱり・・・おかしいですねえ」
私はこっそり首をかしげました。
「何がおかしいんだ?」
「ひゃっ!」
いつの間にか真後ろに来てたのは、クル。び、ビックリしたあ・・・。
「ん? 今、無詠唱だったよな? さっきのリーディの話だと、完全な無詠唱では、魔法は使えないはずじゃ・・・。
それとも、なんか違うのか? “魔法”と“魔術”の差」
今私が悩んでいたのは、まさにそれ。さっきのリーディの説明、いくつか私の知識と違っている点があったんです。
・・・話すべきか、話さないべきか。話すにしても、一体何をどう話せば・・・?
「おーい、なんかルーが言いたいみたいだけど」
「ちょっ!」
全員の視線が一斉にこっちを向く。ううっ、恥ずかしいんですけど・・・。
「どうしたんだ、ルーフ」
カームが、そばに寄って顔を覗き込んできました。普段の彼女は、あまりしない動作。
・・・これは、話さないといけないっぽいです。
「・・・えっと、さっきのリーディの説明の中で、魔法のところで、気になったことがあって。
まず、属性のこと。私の知っているのでは、炎、水、草、地、風、雷、氷、光、闇のさらに上に幻、操、消、創、無があるんです。それに、属性の無い魔術はありません。
もう一つ、詠唱と魔法陣、魔法具について。確かにあったほうがやりやすいですが、それらはあくまで補助。無いとどうかする訳ではありません。
・・・で、私、こう思ったんです。
この世界って、私の使っている魔術ほど、魔法が発達していないんじゃないかって。
幻、操、消、創、無の属性が無いのは、見つかっていないから。
属性を持たない術や人が存在するのは、それらが最上位の五つに属するか、まだ解明されていないから。
補助が無いと魔法が使えないのは、効率の良い方法がわからないから・・・」
・・・あーあー。みんなぽかんとしちゃってます。
まあ、突拍子も無い話ですよねえ・・・みんな、魔術について詳しくないですし。
「・・・ありえる。というか、ほぼ間違いない話じゃないか?」
え? 腕を組んで呟くようにカームが言った。
「なーるほどねえ。へえへえ。・・・それは、これからいろいろと行動するのに、かなり都合がいいんじゃない?
これから相手する人が魔法使いでも、ルーの魔術の方がずっとスゴイんでしょ?」
「なあ、その魔術って俺らにも使えるか? 良かったら教えてくれねえか?」
リン、クリス・・・
「なんか・・・楽しんでますよね? 真面目に考えながらも、かなり楽しんでますよね?」
「う」「え」
ニヤニヤと笑っていた表情で、カチンと固まる。
・・・付き合いは一年ほどですが、わからないわけないじゃないですか。
というか・・・
「『これから相手する人』って、なんかもうみんな結構真面目で、状況をきっちり理解してますね?」
思わず呆れながら言うと、みんなはニヤッと笑って、言い切った。
「 「 「 「当然」 」 」 」