第九話
かなり今さらですが、明けましておめでとうございます。
「と、特訓っ?!」
「ああ、もちろんだ。二人には悪いが、空手も剣道もあくまで趣味の範囲のことだ。
相手は本物の軍人だぞ? ある程度は訓練したほうがいいだろ」
にやりと笑って、リーディ。というか・・・
「リーディは何が出来るんですか?」
「俺か? 俺は基本的には何も出来ない」
すぐにリーディは答えます。・・・って。
今、なんと? サラッと恐ろしい事を言われたような・・・。
「だから、なんにもできないって」
「・・・はあっ?!」
全員がぎょっとした顔です。
え、え、えええっ?! ちょ、ちょっと待ってください! じゃあ、なんでさっき・・・?
「俺が出来るのは、せいぜい喧嘩ぐらいだな」
「ちょっと待てよ、じゃあ・・・どうするんだ?」
困惑して、ミストが尋ねます。本名朝霧 神楽、偽名はミスト・ルィン・ユィミヤ・リアルタ=アサギリ。
・・・って、そんなの今関係ありません!
「リーダーが出たほうがいいだろ、こういうの。ティファは運動苦手だし」
「え、あ・・・そりゃそうだが」
明らかに、戸惑ってますね、みんな。かく言う私も、頭がくらくらくら・・・。
「だから、特訓は俺とスゥ中心だな。他の3人に教わる形になるか・・・?」
そう言って、確認するようにちらりとこっちを見ます。
・・・ああもうっ!
「分かりましたよ! もう、しょうがないですねえ・・・」
「はいはい。いいけど、触りしか教えられないよ?」
「・・・はあ。めんどくさいなあ」
しぶしぶ頷きます。えっと、私は魔術を教えるんでしょうか?
とすると・・・。
「・・・えっと、リーディは魔力値580の[雷]属性、スゥちゃんは320の[炎]属性ですね。
量と質は問題無いですから、後は自分の魔力を知覚して・・・時間もないですし、感覚で覚えるしかないですね」
「え、魔術教えてくれるの?!」
スゥちゃんは目を丸くしてますが・・・。
「私に出来るのって、それぐらいですよね?」
それ以外、なにも思いつかないのですが・・・何かありましたっけ?
私が首をかしげていると、リンが思い出したように言いました。
「あれっ? いつだったか、魔術なしで喧嘩してたよね? 高校生相手に」
「ああ、そういえば小学生の時に。確か箒使ってなんかしてたよな?」
・・・あれっ? ありましたっけ、そんなこと。
うーんと・・・あ、あれですか?
「もしかして、薙刀の事ですか?」
「薙刀っ?!」
最近は全然やってませんけど。もう、できなくなっちゃってますかね?
「ちょ、ルーって魔術以外にもできたの?」
「・・・だったら、出来れば魔術以外も使って勝って欲しいんだが」
ティファとリーディが驚いたように・・・って、今なんと?
「ええっ? む、無理ですよ! 最後に練習したの、一体何年前だと・・・」
って、知る訳ないですか。でも、無理なもんは無理っ!
「なんか、ないのか? 身体能力を上げる魔術とか」
「・・・あるにはありますけど・・・」
どうしても、薙刀を使って欲しいんですか? どうして?
「どうしてと言われると、印象の問題だな。魔術だけより、それ以外にも技能があることを見せたほうがいい」
「はあ・・・というか、今思考を読みませんでした?」
もう、いいですけど。薙刀、薙刀・・・ああ、【鍵】があったら良かったのに。
でも、ないものねだりをしても仕方ありません。
「鍵? って、何?」
「簡単に言うと、魔法の杖です。形を自由に変えられて・・・って、また?」
もう、なんなんですか・・・?
「さあ、早速特訓だ。さっき通りすがりの侍女さんに、ちょっと壊しても大丈夫な広い場所聞いたから、そこ行くぞ」
そう言って、先頭きって歩き出すリーディ。
・・・さて、頑張りましょうか。