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転生無双!! チン説弓張月 ―― 純愛路線かハーレムか!? それが問題だ!  作者: 幸田 蒼之助
勘当ぢゃ!

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30/44

は!? 九州?

いつもお読み頂き、どうもありがとうございます。

突然ですが、今月はポイント強化月間です(は!?)


当・日本屈指の英雄譚を読み、ちょっとでも興味を持った、ためになった……と思われた方は、迷わず即座にたちどころに電光石火の早業でブックマーク&評価をお願いします。

なんなら八幡大菩薩様に喜捨するつもりで(笑)


過去に掲載した時は、そろそろ日間週間1位となり、2ヶ月目辺りからは月間1位だった筈なのですが。

今回は大変苦戦しております。

皆々様の温かいご支援、お待ちしております。

 梅雨入りを前にして、オレ達一行は京へと戻った。

「京に戻らば、何が起きるか分かりませぬ。少々、郎党を(あず)けましょう」

 叔父さんが一〇人の猛者を厳選し、オレ達一行に加えた。その分、下男も増えた。

 オレには、ちょっとした策がある。

 なので二m程の、細い竹竿を多数持たせている。数本ずつ荒縄で縛り、旗指し物のように郎党達に持たせてある。

 他にも、白い布地を一〇反ばかし――一〇疋と言うべきか――を買い集め、下男に持たせてある。

 天候には恵まれたが、最終日だけは雨だった。雨ゆえ人通りの絶えた京の街を小走りに駆け、六条堀川、源氏ヶ館へ飛び込むように帰着した。

「よう戻った」

 破顔する父・六条判官為義。

「お陰様で郎党、下男、皆無事で御座います。馬も、目標通り三頭、手に入りました」

「うむ。善哉、善哉」

 わははは、と父は奥へ引っ込んだ。

 代わって下女達が、たらいと手拭いを手に群がって来て、全員の足を洗い始めた。

 皆、全身ずぶ濡れである。脛の上の方まで泥が跳ねている。下女達の手を借りそれらを落とすと、旅装を脱ぎ捨て、一〇人ずつ風呂へ駆け込んだ。

 ひと通り風呂が片付くと、夕飯である。酒が振る舞われた。

 改めて父に、帰着の挨拶をする。

「おや? ゼニも砂金も随分と余ったな」

「はい。父上の書状のお陰で、一頭は壷井の方で購入してくれておりました。残る二頭も大和源氏の七郎親治殿、多田の頼政殿よりお譲り頂いたので、図らずもひと月程で三頭共手に入りました。ほとぼりが冷めるまでと思い、あとは壷井に戻りひと月以上引き籠もっておりましたので、その分、ゼニが浮きました」

「そうか。馬は、雨が上がれば見に行く。上物が手に入ったか?」

「まあ、大きさに関しては程々ですな」

「わははは。お前がデカ過ぎるのじゃ」

「はははは。その通りでしょう。馬飼が申すには、あれより大きな馬は見たことがない、と」

 マイバッハの話である。アヴェンタドールもシルビアも同サイズなので、要するに当世としては最大級なのだろう。オレの体格を考えると、充分なサイズとは言い難い。

 それよりも、耐久力のあるマイバッハを得たのは大成果である。戦場にて力を発揮しそうなアヴェンタドールを得たのも、ありがたい。

 シルビアだけ、まだちょっと良く分からないが。……

「旅をしてみて、どうじゃ? ひと皮剥けたような顔をしておるが」

「良い経験になりました」

「そうじゃろ。あまり日焼けしておらぬようじゃが」

「いや、これでも随分と焼けました」

「左様か。……まあ、お前の母親も色白じゃったからのう」

 上座で父と酒を飲みつつ、大和の七郎親治さんや多田の頼政さんと勝負した話で盛り上がった。壷井で郎党達と、武芸の個人レッスンや軍事演習をやった話をした。

 そこへ重季さんと重澄さん兄弟が、盃と瓶子(へいじ)を掴み、にじり寄って来た。

「八郎様は道中、判断にしろ采配にしろ、お見事で御座いましたぞ。それはもう、初めての旅とは思えぬ程の」

「然り。八郎様は、御自ら知らぬ事は我ら郎党達に知恵を求め、すかさず最適な判断を下す。元服早々とは思えぬ、ひとかどの将かと見紛う(みまごう)ばかりの堂々たる風格が御座いました」

 兄弟、口々に褒めそやす。うんうん、と嬉しそうに頷く、父・為義。

 ちょっと待て。ムッチャ照れるやんけ。

 オレ、そない大したことしてへんぞ。

 兄弟の言葉を近くで聞いていた中年の郎党――兵衛太郎という名らしい――が、

「まさに、我らは八幡太郎義家公と共に行軍しておるかの如く、錯覚しましたぞ」

 と割り込む。

 おいおいおい。褒め過ぎやろ。

「わはははは。善哉、善哉」

 高笑いする、父。しかしすぐ、真顔になり、

「されど、それが良い事ばかりでもないわい」

 と言い、盃を煽った。

 オレも重季さん兄弟も、中年の郎党も真顔になる。

「少納言信西様の件、ですか」

「左様」

 空になった父の盃に重澄さんが酒を注ぐと、父は再び一気に盃を煽る。

「八郎為朝はおらぬか、と何度か使いが来おった。最後は三日前じゃ」

「ということは、ほとぼりが冷めておらぬ、と……」

 上座に居る我々の近くに座る者から順に、会話が消えた。

「最初は滝口の者(院を警護する武士)が来た。次に、頼政じゃ。その後は何度か(平)忠正が来たわい」

 使いは一〇日おきにやって来て、しかもその都度人数が増え、三日前は四、五〇騎にまで増えていたという。

「そりゃもう、それがしをしょっ引く気満々ですな」

「ああ。……少納言様は執念深い。もはや逃れられんじゃろう」

 大きな溜息をつく、父。

 郎党達は色めき立つ。

「冠者は悪う御座らぬ!」

「分かっておる、分かっておる」

「されば……」

 オレはすかさず口を開いた。

「それがしは京を離れましょう。既に覚悟は出来ております。数年、壷井にでも引き籠もっておれば、状況も変わりましょう」

「うむ。それも良かろう。じゃが、あの少納言様の事じゃ。お前を引っ捕らえるべく壷井に軍勢を差し向けぬとも限らん」

 引き籠もるには、壷井は少々近過ぎる、と父は言う。

「多少の軍勢なぞ、恐るるに足らぬ。徹底抗戦致しましょうぞ!」

「そうじゃそうじゃ。冠者をどこまでもお守り致しますぞ!」

 口々に声を上げる、郎党達。

「静かにせい!」

 荒ぶる声を、父が一喝する。

「八郎はもはや、我ら河内源氏……いや清和源氏の至宝じゃろう。儂とてお前をむざむざと、少納言様の手に渡す気なぞ無いわい」

「ありがとうございます」

「いや、礼など言うまでもないぞ。当たり前の話ではないか。……とにかく梅雨の間は、館に隠れておれ。居留守を使いて当座をしのぎ、梅雨が明けたれば……」

 九州へ行け、と父は言った。

 は!? 九州?


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