エピソード4
前回までのあらすじ
闇狩人に狙われているという糸澄真也たちは教師の灰猛の指示に従うように走ってシェルターに向かうが、闇狩人に拒まれてしまう。真也の驚異的な強さにより、その場は収まったが、戦場である第二武道室になぜか来てしまう。そんな混乱の中、真也と翡翠が動き出す。真也は無事に勝利したが、翡翠は敵の攻撃により動けない。
最高の生き方をして最高の死に方をする。それが私の漠然とした、夢だった。生まれ流れにしてこの夢は持っていて、どんな将来の職業を選ぶのは決まっていなくても、この夢だけはいつも真ん中にあった。中学にあがって現実を見た。闇狩人とかいうやつがいる限り、全員が最高の死に方をできないらしい。もちろん他の要因もあった。だが一点を見つめると他が見えなくなる短所であり長所を持っている私は、闇狩人さえいなくなれば全員が幸せに生きて死ねると勝手に思った。だから、まずはずっと前から天狩人になりたいと言っていた幼馴染の真也に私もなると伝えた。私は「なりたい」じゃない、「なる」だ。その時の真也の顔は今でも鮮明に覚えている。歪んでた。呆れが一番強かったと思う。あのいつもの表情を集約したみたいな顔を思い出すといつも吹き出してしまう。勝手にしろと言われた。あいつなりの応援だと思う。その次には親に伝えた。両親と弟はアクティブな人で、いつも外で何かをしていた。私もだ。応援をしてくれた。期待に応えると約束した。持っている槍は父からもらったものだし、小さいものだけれどヘアゴムは母からもらったもの、弟からは槍のキーホルダーをもらった。正直人前でつけるのは恥ずかしいので鞄のなかで役割を果たさせている。夢に向かうことはめっちゃ楽しくて性分に合っていた。これが最高の生き方だとも感じた。だから高校も入学していい気分で今日も来た。鶴花ともたくさん話した。なのに自分が倒れている状況でこのことを思い出すと、涙は絶対に流さない性分なのについ、だ。死が近づいているとこんなにも怖くて、理不尽なんだと感じた。思い出す。弟が数人に囲まれて暴力を振るわれているときがあった。理由は知ったことではないのだけれど、その時の私は全力で助けた。今となればいい思い出と弟は言うけれど、当時も今も加害者のやつらには怒っている。理不尽で、どうしょうもない状態での苦しみが一番つらい。そのときにそう感じた。今も私じゃ絶対に無理だ。相手も命を懸けているから手加減もしてこないし、こっちは入学二日目。理不尽だと思う。だからもう悔しくて悔しくて、でも無力な自分では何もできなくて、その無限ともいえる苦しみで泣いた。声を上げようにも苦しい。かなり近くまで近づいてきた。リィティルを込めた拳を振り下ろしてくる。こういう時目をつぶらない性格だから、今回もつぶらなかった。だから背中を見ることができた。
真也に続いて翡翠さんも飛び出した。女子もここに飛ばされていた。次々とクラスメイトたちが加勢にいく。地上はかなり優勢で、ほとんど片付いていたが一部の闇狩人が残っていた。周りの状況を見渡すと、翡翠さんが強そうなやつと戦っていた。成と真也、鶴花は今のところ大丈夫そうだから、急いで向かう。その時翡翠さんが倒れ、そのまま動かなくなった。理由を考える間は少しもなく、急いで炎リィティルを腕に集約させ、闇狩人の攻撃を代わりに受ける。相手はすぐに後ろに身を引いた。すると翡翠さんも急に動けるようになって自分で立ちあがった。
「あいつのリィティルは多分目で見たやつの動きを止める的な感じだ。」
「分かりました。気を付けます。」
翡翠さんはそう説明してくれたが、今のところ俺の体に異常はない。触れられたらとかクールタイムがあるとかの弱点はありそうだ。途中から見ていた戦いなので詳細はわからないが、パワーは高そうで、俺じゃパワー不足になりそう。このパワー不足を補うのが剣だ。現物は祖父の家にあり、そこから龍決で複製し使う。祖父のお父さんから使っていると言っていた古い剣だが、リィティルと共に扱うことでかなりの力が期待できる。祖父も基礎リィティルは炎なので、俺と剣の相性も良いと言っていた。実戦で使うのは初めてだが、ある程度練習したのでいけるはずだ。地面を蹴って駆けだし、距離はとっているが近づけば剣での攻撃ができる位置まで移動する。炎の基礎リィティルを放つ。もちろんかき消されるが、龍決をつけておいたので炎が闇狩人の拳から二手に分かれ闇狩人の前と後ろへ突撃させる。そして剣を左手に発生させ、強く握る。炎のリィティルを剣にため込んで斬りかかる。事前にうったリィティルはそいつのリィティルにより消されたが、剣は致命傷ではないものの当たった。もう一度両手で握って真上から斬りかかる。それは腕で防がれたが、剣の炎につけた龍決で闇狩人の体を焼く。これでダメージを与えつつ視界も見えなくする。闇狩人のリィティルが見た敵の動きを封じるものでクールタイムとなんらかしらの条件があるなら視界さえ防げば発動はできないはずだ。生物には龍決は付与できないから、自分の筋肉を2倍みたいなことはできない。だから工夫する。咄嗟に浮かんできた空気の動きの速さが触れた部分だけ速くなるというアイデア。そうすることで拳だけでなく、空気でのダメージも与えられるかもしれない。今は安全に接近することができたし、試す価値は十分にある。剣を手から放して龍決で複製品を消し、空いた右手を握る。腹を狙って半径1メートルの空気にさきほど思い付いた龍決の内容を反映する。空気が拳より速く、そして強く闇狩人に届き衝撃で少し怯むが、動きには影響はなかった。闇狩人にダメージが届いた証拠かもしれない。空気によって闇狩人を巻いていた炎ははれ、俺の拳を叩き込みやすいようになっている。そこに歯をくいしばって殴る。ふつうは殴られる側が歯をくいしばると思うが、これは癖だ。殴られる側の気持ちを少し反映しているのかもしれない。闇狩人は後ろに衝撃で下がり、こちらをじろりと見た。そして全身の力が入らなくなる。やばい。こいつのリィティルが発動してしまったのか。片膝を地面につく。そう思ったが闇狩人は前に倒れ、そのあとは塵のように散った。魂だけが残る。やった。倒した。フラグではない。魂だけが残ると復活することはあり得ない。俺でもやれた。こんな強そうなやつを。もちろん魂を見るとこいつが殺してきた人間のものだから慈悲と怒りがわいてくる。けれどやっと還してあげられる。自分が戦って勝ったから。それが嬉しかった。安心は一秒間だけ、自分たちの役割を思い出す。地上の闇狩人を一刻も早く全員倒す。だが、第一武道室にいた闇狩人もこっちに来てしまい、数だけ見ると優勢と言えない。真也が職員さんたちも驚く実力で強そうな闇狩人も倒している。鶴花と成も問題はなさそうだ。地上はほぼ勝ったといってもいい状況だ。犠牲も今のところ確認できない。だが、天空にいる灰猛と闇狩人は一進一退で、灰猛は闇狩人の地上に攻撃を飛ばす、おそらく真也を狙った攻撃を防いだ。その瞬間に黒い半透明のドームのようなものが灰猛と闇狩人だけを囲む。闇狩人が攻撃を地上に飛ばすが、黒いドームに当たって消えた。異空間作成リィティル、遺伝する稀有なリィティルの中の一つで、もっている人間はかなり少ないのだが、灰猛が持っているとは当然だが思わなかった。通常の天狩人はまずもっていないし、もっている人がニュースになったことも少ししかないほどの能力だ。今更だけれど灰猛だけ強さが段違いだ。名前は昨日まで全く知らなかったし、ニュースになったことだとか基本情報も知らない。こんなすごい人が無名なのはおかしい。闇狩人の討伐状況を報告し、天狩人としての実力を定める。報告は義務なのだが報告をおこなっていない天狩人も一定数いるそうだ。彼らは反狩人と呼ばれ、天狩人とは少し離れた組織として活躍している一方で、天狩人だけの権利を乱用する違反者もでてきている。そのため教師や公共施設の職員室は全て天狩人のみとなっているが、灰猛はもしかしたら反狩人かもしれない。俺は別に闇狩人を狩る仲間としてなら反狩人は賛成だからいい。だが、反狩人が天狩人と偽ることは違法なため、最悪の場合職権が取り消される。灰猛にはそうなってほしくない。思い出とかは特にないけれどなんかそう思った。理屈じゃなくて感覚でそう思った。
灰牢黒淵、この世の全ての人間がリィティルを持っているなかで、特に珍しいとされる異空間作成のリィティルだ。灰猛家では代々異空間作成のリィティルを所持している。基本的にはものを閉じ込めるために使い、範囲はせいぜい半径1メートルほどだった。だが、父からかなり広い範囲でものを閉じ込めることができ、闇狩人と自分だけをそのエリアにいれることもできるようになった。このリィティルは稀有なものだが、僕は基礎リィティルの威力がとても低かった。努力すればあげれるとしても異空間作成リィティル、灰牢黒淵を使いこなすにはとても低く、父に怒鳴られてばかりだった。それでも夢を諦めきれなかった。人生の半分以上を天狩人になって闇狩人を狩ることに捧げた。両親はうまれつき威力が高く、異空間作成リィティルも持っていた弟を天狩人に勧めたが、弟は天狩人に興味はなく、別の道を選び、自分のほうが才能があること関係なしに僕のことを応援してくれた。高校に入っても両親から反対されたが三年間でかなり上達し、両親からの了承ももらえた。天狩人になって何度死にそうになったかも何度勝てないと思った闇狩人がいたかも分からないけれど、僕は十年天狩人を続けた。十年目で今までで一番の強敵を倒し、教師という立場に興味を持った。だが、僕は高校で出会った師匠の影響で討伐状況報告をしていない反狩人で、教師になることはできないらしい。そこで、十年間で倒してきた闇狩人の詳細は報告はしなかったが、戦闘で使えそうと思い、すべてメモを取っていたため、その情報すべてを一度に報告した。これで正式な天狩人になり、教職も与えられた。天狩人の偉い人からは実力は認めるけれど迷惑だからこのようなことはやめていただきたいと言われた。それと同時に早速一年目から担任を任された。僕が育てた生徒がどれほどになるか、試したいらしい。糸澄大也の弟も僕のクラスに来る予定だった。十年分の情報を整理し国民に伝えることはかなり時間がかかるため、僕は無名の天狩人教師として生徒を迎え入れた。できるだけ近い距離で、親しみやすく接したかった。師匠がそういう大人だったから。一日目でもそこそも大変な仕事だったけれど楽しかった。手紙を書き、生徒一人一人が才能を生かせるように助言をした。的外れかもしれないが、やっておくべきだと思った。教師としての一歩を踏み出した気分はとても晴れやかで生死を常時感じる天狩人よりも性に合っている気がした。だか、いきなりこんな強いやつと戦うとは思っていなかった。僕はどうやら日常と闇狩人に嫌われてるらしいな。灰牢黒淵のおかげで大也の弟である真也や下への影響はなくすことができた。相手も最初は攻撃を灰牢黒淵にぶつけていたが、異空間作成リィティルと気づいたのかこちらもみつめ、僕のすぐ前まで移動し、拳を振り下ろしてくる。分かっていたことなので左に避ける。あいつのリィティルは転送だ。自分の運びたい場所にものや生物も運べるみたいな感じだと思う。リィティルの性能はだいたい分かったけれどこれは予測だ。大きすぎるものは運べない。この学校ごと吹き飛ばしたりすることも全てのものを転送できたらできるはずだ。こいつの強さは転送もあるが、シンプルなリィティルの威力の高さもある。防御のことばかり考えていたが、周りへの影響を考えずに済むと天狩人のころを思い出した。ほんの数ヶ月前だが。あの時の闇狩人を狩っていた感覚。目の前にしたときの絶望と殺意。懐かしくもいつもど真ん中にあったようなことだ。それが今心の全てを覆っている。まもることはあまり性にはあわないが、天狩人の性質上そうしていた。殺すことだけを考えると無心に近い状態になった。殺意はこの時増さない。殺す最後の一撃の瞬間にだけ異常なほど膨れ上がり、一瞬でしぼむ。今回もそうだといい。難があってもいいが絶対に殺す。使命感が強いとよく戦友に言われていたことを思い出した。最近は全く会っていない。連絡先も使えなくなっているだろうけど一度電話してみるか。敵の前で未来の希望を考える天狩人は異質だろうか、異質でも的外れでもいい。使命を全うすればなんでもいい。
タイトル 反撃
エピソード1 狩り開始
エピソード2 検定
エピソード3 襲撃




