エピソード2
エピソード1から読まないとおそらく内容がわからないので、読んでください。一応あらすじは書きます。
前回までのあらすじ
天狩人育成高等学校に入学した炎勇龍太は世間を近年騒がせている糸澄大也の弟、糸澄真也と出会う。中学からの親友成とも合流し、実技の検査を受けることになる。
武道室は一階の教室への通路とは別の通路を少し歩いたところにあった。中に入るとその大きさに驚いた。面積はもちろんだけれど、高さもかなりあった。女子が先についていて、各自で話していた。その中には鶴花もいる。誰かと話している。鶴花に比べ長身で、翡翠色の髪の毛を伸ばしている。強そうだ。喧嘩とかじゃなくて気が。真也が俺と同じ方向をみるとバツが悪そうな顔を隠そうとして隠しきれていなかった。
「なんでよりによってあいつがいるんだよ」
「あいつってだれ?」
「髪が緑色のやつ。小柄な女子としゃべってる」
「待ってあれ鶴花じゃね?」
最後の反応は成だ。俺は頷く。
「じゃあその鶴花って人と話してるやつ。」
「わりかし可愛いじゃん、告白されたら付き合うわ」
「やめとけ成」
「成、あいつはやべえやつだから近づかないほうがいい。名前は・・・」
真也が言葉を発しようとした瞬間、さっきまで鶴花と話していた女子が真也の肩を思いっきりつかんでいた。よく見るとでかい槍を背中に背負っていて、殺気が感じられた。俺らのほうをゆっくりと見てさっきの表情とは裏腹に相手に緊張させないことを強要するような笑顔になった。
「真也の知り合い?」
ほんのちょっとだけ成も俺も黙ってしまう。成が俺より先に口を開く。
「さっき教室であった」
「俺も、同じ」
そう応えて「そう」とだけ彼女は言った。なぜか緊張しているときにでる汗がでた。鶴化が早歩きで彼女に追いつき、声をかける。
「もーいきなり走り出してこんなとこになんでいくのー、龍太と成おはよー」
俺は二度目、成はおそらく今日最初の挨拶をもらった。ごめんごめんと真也の知り合いの彼女はまたあの笑顔を見せながら、鶴花に言った。そのあとすぐに真也の肩を放し、二歩ほどの距離を置いてから、言い放った。
「今日は、いつする?今でもやりたい」
『する』この二文字でいろんなことが想像できる。成は吹き出した。もちろん俺は変なことを想像していない。成が笑うとつられるからやめろ。鶴花はずっと苦笑い。
「今は無理だろ、自己紹介しろ」
「くそがよ、湧永翡翠です!こいつとは小学校からの関係。二人の名前は?」
テンションの上下が読めずはっきり言って怖い。気が強そうという見解もあっていた。最初に悪態をつくとことかでわかる。自己紹介を求められたので恐縮してしまうが、今度は成よりも先に声を出す。
「炎勇龍太です・・・」
「稲仕成っす。龍太とは中学からの付き合いっす。鶴花も」
「翡翠ちゃんってこの真也君?と知り合いなんだよね?」
「うん」
「お前みたいなやつが鶴花さんみたいな女子と絡めてんのすげえな」
「うるせえよ」
男勝り、まるで男が強くて女は弱いと決めつけているようであまり好きな言葉ではない。それでもその言葉が咄嗟に浮かんできた。彼女の印象はまず髪が緑、翡翠色でその長髪は特徴的だ。そして目。遠距離でも分かるほどの強い力を持っている。不機嫌そうとか眉が上がっているとかつり目とかではなくなぜか感じる人間的な強さだ。その強さを目がおびている。
「そろそろだよ、翡翠ちゃん」
今のは鶴花だ。おそらく今から俺らの能力を図るのだろう。女子の二人は担当の女の先生の所へ、俺ら男子の三人は灰猛のもとへ行く。彼は名簿のようなものを持っていて、そこに俺らの能力を書き込もうとしている。気を引き締める。
「あいつ口悪いけどいいやつなんだ、勘違いされてるとき多いけど。俺に対しては特に口悪い」
「ツンデレ的な?」
たぶん違う気がする。漫画の読みすぎだろとおもった。
「デレほどじゃねえしツンほど可愛くもねえ、つかどっちもなんか違う」
「大変だなぁまあ顔良いから俺だったら許せる」
成が面食いを発動させて真也の苦笑いを見た。灰猛が今説明していることは、寮の番号順でリィティルの効果と強さを調べるそうだ。俺らは真ん中らへん。次々とほかの生徒たちがリィティルを打ち、それを灰猛が見て名簿に何か書き込んでいく。笑顔だったから、出来がいいのかわからないけどそう思っておく。
「次、炎勇龍太」
「はい」
まずは炎のリィティルを見せる。自分でも威力はないと思っている。そうすると、六級といわれた。入学当初の平均は五級らしいのでそこより少し低いということになる。当然本気で目指しているので悔しいし、落ち込む。他のリィティルはないかと聞かれたので、真也に話した時同様、龍決の説明をする。この能力で炎を自由自在に動かしたり、空気に条件を付けて見える範囲での瞬間移動をしたりした。瞬間移動は願ったら空気の位置を目の真ん中でとらえている空気と入れ替えること、位置が入れ替わった時、生物が触れていたら、その生物もともに位置を動かすこと。その生物が所持しているものも一緒に動かせる。服とかを置いて生身だけで瞬間移動しないということだ。この能力のおかげで威力が低くても択が多いので戦えるとの評価を受けた。認めてもらった時特有の、油断してはいけないっていう緊張感とは裏腹に喜びが混ざった感情だ。次は真也の番で、彼の闇のリィティルは威力がとてつもなかった。評価は四段だそうだ。一級の上は初段、つまり平均よりもかけ離れた威力。彼には悪いけど流石大也さんの弟だと思った。アビスは異空間にあらかじめ入れてあったものを取り出したりして評価を受けていた。次は成の番。彼は自分の名前から雷のリィティル。さらにその雷から剣を作り出すことができる。本当の実物みたいな剣、どちらかというとフェンシングとかの先端で攻撃する、『斬』の剣じゃなくて『突』の剣だ。威力は七級で俺より低い。しかし、その圧倒的な攻撃速度と移動スピードで実質的な攻撃力は俺よりも圧倒的に上だ。晴天の霹靂とかいうかっこいい名前もつけている。女子ウケしそうだろと言ってきた。それは知らん。
「真也すげえな!俺なんて七級だぜー」
「そんなことねえ、でもお前速すぎだろ。攻撃見えねえ」
「なんか女子ウケしそうだから頑張った」
こいつの欲と執念はなかなか見くびれない。こういうところも友達として好きなところのひとつだ。目的が女子とか情熱がいきすぎて女子に土下座させられたことがあることも含めて。
全員この検査が終わったため、教室に移動し、灰猛はパンフレットにかいてあること何個かを改めて伝え、解散となった。昼ご飯にしてはまだ早い十一時半。ここ周辺は真也と成が近くに住んでいたため詳しい。そのため二人から勧められた店に行く事になった。移動をするために電車に乗ろうとしたら、偶然を装って翡翠さんと、半笑いで少し困っている鶴花が一緒にきたので、三人から五人になって電車に揺られることになった。
正直入りずらい入り口から店へ入ると、店内の雰囲気にそぐわない気の良さそうな男が出てきた。店内は空いていて、六人用の席にそれぞれ座る。向かいは鶴花。隣は真也と壁だ。真也と成がおすすめのメニューを紹介してくれたので、特に不満もなくそれを頼む。
「翡翠ちゃんすごいんだよ、水のリィティルの威力三級!」
鶴花が、興奮気味に話した。強いのは気だけじゃなかった。
「お前は?」
「四段」
「やるじゃん」
「なんでお前のほうが上みたいな口調なんだよ」
「上だからだよ」
今のは翡翠さんと真也の会話。腐れ縁なんだろう。どちらも遠慮がない。真也はちょっと不服そうだけれど、翡翠さんは半笑いだ。
ここからは天狩人のことは話さずに自分らの話をした。内容はどうでもいいものなのだけれど単純に楽しかった。俺は一度中学二年の頃からは祖父のところに行くことになったので、そこで一度鶴花、成とは別れ、もう一度このあたりに戻ってきた。
「なんで一回じいちゃんのとこに戻ったんだ?」
鶴花と成はすこし緊張の色を見せた。この二人は事情を知っている。かと言って俺が傷つくわけでもないので平気で話す。
「親がどっちも闇狩人に殺されてさ、そんで祖父のとこに」
真也が一秒だけ言葉を選ぶために黙り、髪で隠れている右目もこちらに向けて上目遣いで「悪い」と言った。
「全然大丈夫」
「天狩人目指したのも?」
今のは翡翠さん。腕を組みながらさっきよりまっすぐな目でこちらを見ている。
「まあそうだね」
できるだけ重い空気にならないように努めたが難しい。成のようには俺はできない。当然この話題だけで会話が埋まることはなく、いつの間にか現状はこのことを忘れた状態になり皆で笑って四時ごろに解散となった。解散といっても同じ電車に乗り、同じ門をくぐり、女子とは別れて三人になり隣同士の寮に入った。男子二人とは解散が寮の扉前になった。扉の外にある郵便箱の中に一通手紙のようなものが入っていた。部屋に入ってから封を開け、中身を見る。文章は短いものだが、灰猛からのものだった。内容は龍決のリィティルはとてもいいもので、応用を身に着ければ素晴らしいものになるというほめ言葉と、炎のリィティルの威力が低いので、その高め方、龍決との合わせ技などが灰猛の見解で書かれていた。灰猛も基本リィティルは炎なそうで、具体的に分かりやすく書かれていた。おいてあった机に置いておき、龍決であらかじめ家具に条件を付けておいたので、部屋の中に置いていく。こういうところで節約や楽ができるのがいいところだ。一人の時間は本を読んだり、自分で料理を少しだけ作ってみたりして過ごした。朝が早いので十時半に部屋の電気を消し、明日の不安とやる気を心の中で混ぜて寝た。
教室に集合する十分前に部屋を出ると、丁度真也も扉を開けた。軽く挨拶をし、一緒に教室まで移動する。
「そういえばさ、灰猛からの手紙あった?」
「あったけど、真也も?」
「おう、なんかいろいろ書かれてた」
俺だけじゃなくてほかの人ももらってるのか。真也ももらっていると自分も才能があると認められている気がしてうれしかった。ぬか喜びかもしれないけれど。内容を共有し、真也も課題があるとわかったそうだ。集合三分前にまだ眠そうな成がきた。
「お前らはやくね?さっき起きたから眠い」
三人でやっと来たかとか言って談笑していると、灰猛が教室に来た。
「みんなー僕の手紙読んでくれた?全員の郵便箱の中にいれたから読んでない人は暇なとき読んでねー」
まさか全員に書いていた。あの数時間でこの人数分のアドバイスを考え、それを書くのは大変だっただろう。彼がかなり熱心な教師であることに感心する。
「今日は正直言ってつまらないけど座学やってくよー」
前に印象が軽い兄ちゃんだったけれど、生徒に寄り添うという精神のもと心も近い距離で接していたいという意図が見えた。今までの教師よりも圧倒的にいい印象を受けた。つまらないと本人は言っていたけれど、そこそこ役に立ちそうな授業を聞いた。半分ほど授業が進んでいたころ、灰猛に電話がかかってきた。彼は教室の外に出て、スマホを耳に当てている。通話が終わり、授業が再開されると思われたが、彼が緊迫した顔で教室の中に入ってきた。
「少し問題が起きたみたいだから、僕は行ってくる。みんなは教室の中で自習」
いきなりそう伝え、足早に去っていった。外から聞こえる足音的に走っている。大丈夫かな、なんて間抜けな風に考え頬杖をついて真也のほうを見た瞬間、灰猛が走っていった方向から地響きのような音が聞こえた。教室内がざわつく。
「なにがあったんだろ」
「灰猛の様子的にやばそうだな」
急に天井、正確に言えば教室前方の壁にある放送機器からがさついた音が数秒聞こえた後声が聞こえた。
『闇狩人が校内武道場二番室にて出現。生徒は速やかに一回北部のシェルターへ、職員は至急応援を』
手短に、そして正確な情報を冷静な声が放った。俺らが昨日使った武道場に闇狩人がでたそうだ。俺らは急いで立ち上がり、武道場二番室とは逆方向にある方向へと走る。冷静かつ迅速に。こちらの方向にも武道場一番室がある。そこまでたどり着くと、さっき聞こえた地響きのような音が再び聞こえ、武道場の天井が開いた。天井開くんだと思った矢先、数十人、いやさらにどんどん増えていき、百五十人ほどが高い天井から飛び降りてきた。彼らは共通の特徴を持っていた。胸部に微かな紫の光がある。これは多くの人数の魂を自分に取り込んだ証。つまりあいつらは、闇狩人。その中のひときわ光が強い男が叫んだ。
「糸澄を探せぇっ!」
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エピソード1 狩り開始




