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一話前半

「ああ~だりぃ~」

 誰に聞こえるでもなくそう呟く。自転車のペダルを漕ぐ足が重い。昨日バイクに乗っていたからよりそう思うのだろう。しかも行く先が高校であるとなれば更に漕ぐ足が重くなってくる。

「よォ~おはよう~」

 気だるげな挨拶と自転車のカゴが軋む音が後ろから聞こえてくる。

「緋山~俺今日高校行きたくねぇよ」

「三連休明けに行きたい奴なんか居る訳ないだろ」

 緋山の返しに対して返す気力もなく高校に向かって自転車を漕ぐ。無駄に大きい高校の校舎が近づく。

「なんか急に吹き飛ばないかな学校」

「吹き飛んだらいいな~」

 などと言いながら高校の駐輪場に着く。錆のせいで軋んで動きづらいスタンドを立てる。

「この後、昼休みまたいつも通りな。」

 クラスの違う緋村と会うのはまた昼休みだ。

「おっけー~」

 緋村が少し明るくそう返した。俺たちはそれぞれの教室に向かった。


四時間後

「休み明けに生物の小テストあるなんて覚えてたお前?」

 1校舎と2校舎の間の渡り廊下の壁にもたれながら、緋山が朝よりも気だるげなトーンでそう愚痴を吐く。

「俺が知る訳ないだろ。鑑原だったら覚えてたかもしれないが」

「そういや昨日のツーリングのあとアイツ体調崩したって言ってたな。大丈夫かな?」

 俺と鑑原をツーリングに誘った緋村が少し申し訳なさそうに言う。

「大丈夫だろ。それよりも小テストの点数のが怖いよ俺は」

 鑑原は趣味で筋トレをしているような奴だ。それに成績もいいアイツなら今日の小テストを受けられなくても大して成績に影響はないだろう。

「確かに。今日曇ってるのアイツのせいか?」

 購買のパンを片手にかじりながらそんなことを話す。

「ウーウーウーウー」

 唐突にサイレンが鳴り響く。

「緊急避難警報が発令されました。速やかに全校生徒は体育館まで避難してください。教員は…」

 という所まで音声が聞こえたかと思った瞬間、金属のひしゃげる高い音と、何か大きなものが砕け散る音が後方の頭上で鳴った。思わず振り返ると、そこに緋村は居なかった。そんな筈はない。慌てて足元を見る。

 するとそこには、地面に伏した緋村が居た。いや、ただ寝転んだ訳ではない。脚に大きく折れ曲がった鉄筋が刺さり、砕けたコンクリートの塊が脚に乗っかっている。

「八剣…立てないんだけどさ…俺の脚どうなってる?感覚はないんだけどさ、見るのが怖いんだよね、なんかさ…」

 緋村の声が震えている。なんとなく自分の状況が分かってはいるのだろう。

「お前の脚に…刺さってる…てっ鉄筋が…脚に…」

 緋村の恐怖が俺にも移った。目の前の光景を信じたくない。きっと悪い夢に違いないのだ。いや、悪い夢だとしても緋村を運ばなくては。

「と、取り敢えず体育館連れてくから肩貸すぞ。だ、大丈夫だって。頭に銃弾貫通したたのに生きてた人居るって聞いたことあるし」

 呂律も頭も回らない。俺は今何故こんなことを喋ったのだろう。幸い脚の上のコンクリは少し力を入れるとズレた。体育館までの距離はどれぐらいのものだろうか。階段で一階まで降りて、中庭を渡って体育館までだ。200m程度だった筈だ。

「大丈夫だ。昔剣道だってやっていたんだ。お前一人運ぶぐらいどうってこと無いって」

 緋村を励ましたつもりだったが、自分を奮い立たせていただけだ。緋村の腕を引っ張り、肩を貸す。

「いよっ!中学剣道県三位!」

 緋村も必死で明るい空気にしようとしている。緋村も動く方の脚で必死にバランスを取っている。これなら15分もあれば体育館まで着くだろう。と、そこに見回りで来た国語教師が来た。二人で肩を貸せば数分で体育館まで着くだろう。助かった。

「お前!患部を上にしろ!お前は両足!俺は両脇を持つ!」

 そうか。患部を二人なら上にして運べるのか。もう冷静に考えられる精神状態ではなかったことに気づかされた。


 もう一時間は経ったような気がする。けれども、時計を見る限りはまだ4分しか経っていない。やっと中庭まで来たのだ。すると目の前に何かが落ちてくる。鉄の塊…?違う。大の字になった人間である。落ちると同時に、金属のひしゃげるギャギィィという音が響き、土の地面が爆ぜる。見たことのない黒い服を着た大柄な男が呻き声を上げる。

「に…逃げろ…」

 こちらを見た後に男は上を見上げた。ソコには浮遊している人間がいる。いや、一人ではない。複数人が見える。いや、ソイツらは飛んでいるのだ。全員がジグザグに飛んでいる?違う。誰か二人に対して複数人で殴りかかっているのだ。何が起きているのかは分からないが巻き込まれたくはない。

 とにかく忠告通りに、落ちてきた男を避けて体育館に向かおうとした。だが、目の前の男が生きているからなのか、それとも新しく中庭に出てきた三匹の獲物を殺したいのか、浮いていた一人がこちらに向かって腕を向ける。地面に寝ていた男が苦しそうに右腕を持ち上げる。大量の光が一瞬見えた。次の瞬間、寝ていた男が放った何かが視界で広がった。防御手段だったのだろう。光は見えなくなった。 が、急に腕に掴んでいた緋村の脚が重くなる。後ろを見ると、殆ど交流のなかった国語教師が倒れている。いや、国語教師だったものが転がっていた。頭にシャーペンほどの大きさの穴が複数開いている。思わず緋村の顔を見る。緋村の顔には傷はなかった。ただ、張り付いて動かなくなった恐怖を浮かべた顔がそこにはあった。

「なんなんだよ!なんで!」

 意味はないと分かっていても叫ばずにはいられなかった。頭上にあった防御幕らしきものも大分消えかけていた。地面の男はもう返事をしない。アイツの腕に武器がついているのなら、その武器を空で偉そうにしているアイツに打ち込んで安全を確保すればいい。

 そうだよ!簡単じゃないか!いけるに決まっているじゃないか。腕についてる武器で倒せないような敵と戦う訳がないじゃないか!俺は走った。男の亡骸に駆け寄る。男は左手に大きな武器を握っていた。こんなに大きいのだ。撃ち落とせない訳がない!

「クソっ!取れない!なんで!」

 男の左手は固く、武器が取れない。どうすればいいのか。腕だけアイツに向けてトリガーを引けば打てるか?腕の全体像を見るために少し下がる。すると、青銅色の地面に刺さった剣が目に入った。男の股あたりに突き刺さっている。こんな物、さっきまであったか?だが、何故かは分からないが、その剣を右手で握った。取り敢えず武器が欲しかったのかもしれない。すると、自然と気持ちが落ち着いた。

 次の瞬間、剣から何かが飛び出した。が、一瞬で見えなくなった。顔の方に飛んできたかに見えたが、顔には何も付いていない。腕を見てみる。腕が青銅色になっている。慌てて全身を確認する。全身が紺色のブレザーではなく、青銅色の鎧に覆われている。もしやと思い、顔を左手で触ってみる。直接肌に触れない。何かが頭を覆っているのだ。だが、不思議と全身が軽い。全身が鎧に覆われているにも拘わらず動きやすい。試しに軽くジャンプしてみる。すると、校舎の三階はあったであろう位置にあった、薄くなった防御幕を突き破ってしまった。

 これなら思い切り飛び上がればアイツを直接殴れる。確証はない筈だが、そう確信した。

「好き放題しやがってぇぇぇ!ふざけるなよぉぉぉォ!」

 俺は叫びながら飛び上がった。

ネーミングセンスが無いのですが書きたかったので仮タイトルです。読者の方でいいのを思い浮かんだ方が居たら教えてください。

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