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魔法薬師の途  作者: ソルト檸檬
1/3

前編

久々に投稿です!

よろしくお願いします!

《For those who earnestly desire it, it becomes a medicine.

For the greedy, it turns into poison. 》  

by Socrates




魔法産業が発展し、世界中のあらゆる仕事や生活補助が魔術によって動く機械、(魔導機)に取って代わった時代。


そんな世界には一部の人々によるある二人組の噂があった。


一人は魔法産業の賜物を嫌い、己の技術と魔術のみで薬を作る旅の魔法薬師。


もう一人は旅の魔法薬師に付き添ういかなる強敵もスカウトも斬り捨てる凄腕の傭兵。


二人は病や怪我などで困っている人々や村を高品質の薬で助けているという。


しかし神出鬼没に困ってる人々の前に現れ、二人だけで必要な素材を調達、調薬し

投薬と処方をするとすぐに姿を消す上に、互いに(ファーマシスタ(薬師))と(マーセナリー(傭兵))と呼んでいる。


そのため現在どの辺りを旅しているか、そして二人の本当の名前を知る者は一切いないという。


これはそんな魔法薬師と凄腕傭兵が時に目的を持ち、時に気分で大陸を自分の足で渡り歩く(みち)の物語。




草原の中に敷かれた一筋のレールの上を魔導列車がもの凄いスピードで走って行く。


世界中にレールが敷かれた事により今や国境を跨ぐ移動や物資の搬送は一昔前とは比べものにならない時間での実現可能になった。


「今日何本目だっけ?」


そんなレールから少し離れた所に有る一本道を歩く男性が隣にいる女性に話し掛けた。


年代物の茶色の外套を羽織り、内側のベルトには小物入れを。


そして革を鉄で強度を上げたアタッシュケースを右手に持った端正な顔立ちの18~20歳位の男性だ。


「4本目よ、まったく……少しくらいは気にしたら?」


女性は軽く呆れたかのように答える。


黒革と金属で作られた戦闘服に背中には巨大な麻布のバッグ。


そして左腰には業物の剣をさしている凜とした18~20歳位の女性だ。


「興味ないからな。簡単に時間を知る以外には気にする事じゃない。」


「……だと思った。前に買った懐中時計もすぐ壊れたし。」


「あれも年代物だからいつ壊れてもおかしくは無かったさ。今流行とかいう腕時計も好きになれない。」


「腕時計はそこまで流行じゃないけどね……。」


「まぁそんな訳だし引き続き頼むよ、マーセナリー(傭兵)!」


「仕方ないわね、その分今回の調薬は頑張ってよ、ファーマシスタ(薬師)さん?」


「調薬じゃなくて魔法調薬な。」


魔導列車が過ぎ去り、草原の音だけがこだまする道に二人の笑い声が風に乗った。



やがて目的地である村の近くに到着した。


事前にリサーチした所、この村では毎年国から配給されるはずの流行病である

(冷酔病)の予防薬が今年は一向に届かず、村で(冷酔病)の罹患者が増えてるという。


「聞いた話ではこの村が税を納めてるの伯爵家だそうよ。」


「その辺も気になるな。とりあえず、村に入ろう。」


二人は村に入ろうと関所に入る。


しかし、関所には必ず一人以上は駐在しているはずの門衛すら居なかった。


その代わり門衛が立っているはずの場所には張り紙がされていた。


(王家指令により外部の者は立ち入ることを禁止する。)


張り紙の右下には王家の紋章も刻まれている。


二人は張り紙を確認し……。


「まずは村長を探そう。」


「あそこの中央広場辺りじゃないかしら?」


無視して関所を通った。


この村は特産のレージュの実を使った高級なレージュ酒が醸造されており、村の郊外には広大なレージュ畑と幾つもの醸造所がある。


また観光地としても有名なのだが今は一切人の気配が無かった。


二人は中央広場の一画にある屋敷の呼び鈴を鳴らした。


程なくして少しだけ扉が開き村長の初老の男性が現れる。


「貴方たちは……?」


「俺たちはこのような者です。関所が不在でしたのでこちらで確認していただけますか?」


そういって薬師と傭兵の身分証を渡す。


しばらくはまじまじと身分証を見ていたが、やがて返却すると扉から出てきた。


「本来なら客人としてもてなしたいが今は娘が冷酔病で安静にしている。そこのベンチでよろしいかな?」


「分かりました。」


そういって村長がベンチに座ると口を開いた。


「本来であれば国家の使者に頼る所ですが最早国家を信用は出来ない。国家に関与してない噂に名高い貴方が訪れた事は神の恩恵ですな。」


「……張り紙の事ですね?」


「はい、あの張り紙を見た瞬間王家は私たちを見捨てたという事。レージュ酒と観光しか取り柄がないとはいえ卑劣すぎる。」


「そうですか……。今冷酔病に罹患している人数は分かりますか?」


「正確には分かりません。ただこの村は全体で63人が住んでいますが今はもう全員罹患しているでしょうな……。」


「なるほど、では魔法調薬にあたってですが、この村の薬草、そして70個ほどレージュの実の採取並びに使用の許可が欲しいのですが大丈夫だしょうか?」


「薬草は了解しました。しかしレージュの実は醸造にしか向かない物ですぞ?」


「いえ、それが今回の魔法調薬にあたっては良質といえます。」


「……分かりました。村の北西、収穫したレージュの実の保管庫があります。鍵は後で渡しますので使ってください。」


「ありがとうございます。それと最後に……。」


「報酬ですな、ならば……。」


「いえ、実は聞きたい事がありまして。」


「何ですかな?」


「(冷酔病)が流行する前、どなたか貴族は来られましたか?」


「貴族ですか……?それならこの村の領主、モーガス伯爵家の嫡男、クリーク様がお見えになられて醸造所を視察されてましたぞ。」


「……屋敷には?」


「来られましたな、我が村のことを大事にされるとても思慮深いお方です。」


「分かりました、では早速、薬草とレージュの実の調達に向かいます。色々とお聞かせいただきありがとうございます。」


「どうかよろしくお願いします。」




二人は屋敷に村長を送り届けた後、村の北西に移動した。


「どう思う?」


「当たってるでしょうね。」


「そうか。なら悪いけどここからは別行動を取ろう。」


「そうね、でもここからだと……。」


「分かってる。()()()()()()()()()。」


「……分かったわ、かならず成功させる。」


「頼んだ。」


そういうと傭兵は村に来た道をダッシュで引き返していった。


「さて、まずは調達するか。」


残された薬師は最初に必要な薬草を採取すべく動き出した。

よければ評価の方もよろしくお願いします!

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