相談⑤
「あのぉ、彼女とこのあいうえお表を使って会話をしているのですが、話の中で勝くんがお友達と仲直りしたいと言っているんです。ただ、僕達には勝くんのことはわからないので‥‥もし良ければ、彼女を通じて勝くんの伝えたいことを、聞いてあげてください」
翔は勝の両親へ言った。すると父親が言った。
「本当に色々とありがとう。私達も勝が何かを伝えようとしていることはわかっていたんだ。ただ、どうやったらその言葉を聞いてあげられるか、全くお手上げの状態で‥‥彼女に協力してもらって、話をさせてもらうよ」
母親も隣で頷きながら、その話を聞いていた。
「お姉ちゃん、申し訳ないがよろしく頼みます」
父親にそう言われると、鈴はうなずいた。
「勝は誰と仲直りしたいと言っているのか、教えてもらえるかな?」
勝が鈴へ何かを言った。そして鈴が翔の方を向き、目で何かを訴えている。察知した翔は、すかさずあいうえお表を鈴へと差し出した。
「ま・こ・と・く・ん」
翔が鈴の指差したところを読むと、勝の両親は、ハッとして顔を見合わせた。
「勝、まことくんて、あのまことくんのこと?」
母親が勝へ問いかけると、勝は首を縦に振った。
「そっか‥‥まことくんか‥‥」
勝の父親が、なにか感慨深げにつぶやいた。翔達は何もわからないので、ただ黙って立ち尽くしているだけだった。勝の両親は顔を見合わせ、ボソボソと2人で話していた。そして、翔達の方を見て、父親が言った。
「まことくんと言う子は、勝がよく遊んでいた友達です。まことくんの親御さんに、事情を話してみます。皆さんありがとうございます」
そういと、勝の両親は頭を下げた。
「勝、また来るからね」
母親がそう言うと、勝はうなずいた。勝の両親は公園を後にした。
「とりあえず、勝くんの両親に伝えられてよかったな」
優が言った。皆が同調してうなずいた。
「私達も、今日は帰ろうか」
春がそう言いながら、鈴の方を向いた。鈴はうんうんと、うなずいた。複雑な気持ちは変わらないし、こういう形になってしまったが、みんなで会えたことに喜びを感じていた。名残り惜しい気持ちはあるが、お互い大人になってその気持ちを抑え、今日は解散することにした。そして3人は帰路へと歩き出した。しかし、数十メートル歩いたところで、翔はいきなり振り返って走り出し、ケヤキの木の下へと戻った。
「鈴ちゃん!!」
3人の後ろ姿を見送っていた鈴は、戻ってくる翔をみてビックリした。翔が近付くと、どうしたの?という表情へと変わった。
「鈴ちゃん‥‥大好きだよ」
翔は息を切らしながらそう言うと、鈴も満面の笑みでうなずいた。そして声は聞こえなかったが、間違いなく『私も』と口は言っていた。
こうして一日は終わっていった。




