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現実

その瞬間、翔は驚いて絶句した。その人影は、鈴だった。

「えっ、あっ、えっ」

翔は動揺を隠せなかった。そのまま言葉を失い未練仏となった鈴を見たまま、立ち尽くしてしまった。鈴も近付いて来ていたのが翔だと気付き、驚いていた。そして申し訳なさそうな顔で、翔のことを見つめていた。その顔が段々と崩れていき、鈴の目から涙が流れ出した。そんな鈴を見ていた翔も、気が付くと涙を流していた。翔は鈴に近付き、鈴を思いっきり抱きしめようとした。しかし、未練仏となった鈴に触れることはできない。鈴を抱きしめることはできなかった。虚しく鈴の影を通り抜けていく自分の腕を感じた時、現実を痛感し、ずっと目を背けていた、逃げていた、今起きている事の全てを理解した。そして翔は泣き崩れた。鈴も、翔に触れることができない現実を目の当たりにし、さらに泣き崩れてしまった。鈴の泣いている声も、今は聞こえてこない。翔の嗚咽を繰り返す泣き声だけが、その場に響いていた。

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