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鈴との思い出
一方、2人と別れた翔は、一人重い足取りで歩いていた。頭の中は鈴との思い出が巡り続けていた。どうすることも出来ない現実から逃避していたのかもしれない。鈴との思い出を思い出すことで、まだ鈴が生きていて2人の関係は続いている、そう思える気がした。昨日の帰り道と同じ道を歩いていた。昨日の夜はここに鈴がいた。鈴の声、鈴の手の温もり、全てをまだ鮮明に思い出すことができる。しかし、もうその声も温もりも感じることはできない。そのうちにその記憶も薄れていってしまうのだろうと、そう感じていた。そうならないように、鈴との思い出を巡らせ、必死にその出来事を頭に記憶させようとしていた。忘れたくないが、忘れていってしまうだろうという、理想と現実。翔の心の整理がつくまでは、まだまだ時間が足りなかった。その輪廻から抜け出せずに、翔はそのまま歩き続けた。
そしてふと立ち止まった。翔は無意識のうちに、鈴といつも待ち合わせしていた公園に来ていた。翔の中でこの公園が一日の始まりであり、鈴と多くの時間を過ごした公園だった。付き合う前から、鈴とはこの公園でよくお喋りをしていた。2人が愛を深め合った場所だった。自然と足が向かってしまうことに、理由なんてなかった。翔は公園へと入っていき、思い出の散策を始めた。




