衝撃 ②
「もう少し、鈴の近くに寄ってもいいですか?」
春が小さく震える声で口を開いた。
「うん、もちろん」
母親がそう答えると、春は鈴の近くへと寄り、鈴を見つめた。その姿を見て、母親が言った。
「正直上がってもらうか悩んだの‥‥でも、みんな鈴の大切なお友達で、鈴が話をすると必ず3人の誰かの名前が出てきたから‥‥今隠したとしても、いずれはわかってしまうことだし、鈴は今きっと3人に会いたいだろうなって思って。特に翔くんに‥‥翔くん、いきなりこんな姿の鈴に会わせてしまってごめんね」
翔はうつむいて黙ったまま、首を横に振った。
「今鈴と会えないと、お通夜とかお葬式に会うことなると思ったから‥‥その前に、仲良くしてくれてた3人に会えたら、きっと鈴も喜ぶと思って‥‥私のワガママで本当にごめんなさい。こんな状況で‥‥あなた達は複雑よね‥‥本当にごめんね‥‥」
その母親の気持ちを聞いて、翔も勇気を出して鈴の側へと寄った。
「ちょっと‥‥ごめんなさい」
母親はそう言うと、止まることなく顔を伝ってくる涙を拭きながら、別の部屋へと消えて行った。
「俺も、外で待ってるわ」
優はそう言うと、重い足取りで玄関から外へと出ていった。
春、翔の2人になった。
「鈴‥‥鈴‥‥」
泣きながら春は寝ている鈴に抱きついた。
「うぇっ、う、うぅ‥‥」
制御できない悲しみが溢れてきて、呼吸もうまくできなくなるほど春は泣きじゃくった。翔はそんな春の姿を黙って見つめていた。泣いている春を見ていた訳では無い。ただ、視線がそこにあった。見ているが見ていない。頭の中は真っ白になっている。まさに放心状態だった。何かが頭の中を巡っているようで、巡っていない。何かを考えているようで、考えていない。翔自身、今自分がどういう状態なのか説明も理解も認識もできなかった。




