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すれ違い④

「鈴ちゃん、少しは落ち着いてきた?」

翔が聞くと、鈴はまた首を縦に振って答えた。

「よかった。鈴ちゃん、さっきはごめんね」

鈴は首を横に振った。

「それは‥許さないって意味?」

鈴はまた首を横に振った。

「あ、よかった」

翔がそう言うと、ずっと泣いていた鈴が少し顔を上げ、小さく震える声で言った。

「カッくん‥‥ごめんなさい」

そう言うと、鈴は再びうつむいてしまった。「グスン、グスン」と鼻をすする音が聞こえる。翔は鈴にティッシュを渡した。鈴は受け取ったが、手に持ったままでいる。見兼ねた翔が、鈴の涙を拭いてあげた。そして、鈴の涙を拭きながら、話し始めた。

「鈴ちゃん、本当にごめんね。でも、少しだけ言い訳させてもらってもいいかな?‥‥聞いて欲しいんだ。俺の言い訳を‥‥」

しかし、鈴からの反応はない。鈴は変わらず俯いたまま泣いている。『もう話を聞いてもらえないのかな‥‥』翔はそう思っていた。しかし、少し経つと鈴が俯いたまま、また小さい震える声で言った。

「‥‥言い訳って‥‥‥なに?」

「あ、うん‥‥実はあの時歩きながら、鈴ちゃんとのことをずっと考えてたんだ」

「‥‥え?‥‥私とのこと‥‥‥?」

ずっと泣いていたので、返事をする鈴の声は震えていた。

「うん、そうなんだ。鈴ちゃんも聞いたことあるかもしれないけど‥‥ねずみ城の前で愛を違ったカップルは、永遠に結ばれるって言われてるんだ」

「‥‥うん‥‥聞いたことある」

「だから俺は、ねずみ城の前で鈴ちゃんに愛を伝えようと思って‥‥‥そのことで頭がいっぱいになってたんだ‥‥ごめんね」

「えっ‥‥そうだったの?‥‥なんか‥‥私‥‥なんて言ったらいいのか‥‥カッくんがずっと何考えてるのか分からなくて‥‥私とのこと考えてたなんて思ってなくて‥‥‥」

「ううん、俺が何を考えてたなんて、わからなくて当然だよ。頭の中を見れるわけじゃないから」

「でも、ちゃんと理由を聞かないで、1人で怒り出したのは私だから‥‥ごめんなさい‥‥‥」

「ううん、鈴ちゃんは悪くないよ。鈴ちゃんが話してれてるのに、ちゃんと聞いてなかった俺が悪いんだよ‥‥‥ごめんね‥‥」

翔と鈴は、お互いに謝りあった。お互いに自分が悪いと言い張り、謝りあっている。しかし、お互いにどちらかが悪いとも言えないし、言うつもりもない。今度は逆に、そんな譲り合いでなかなか収集がつかない状況が続いた。

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