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すれ違い②

「‥‥ぐすん‥‥」

鈴は涙を流していたが、歩く足は止まらなかった。足を止めて翔を待ち、彼の胸に飛び込むなんてそんなカワイイことが自分にもできたら、きっと気持ちも楽になれるのだと思う。意地を張ってしまっている自分を、必ず翔は受け入れてくれる。それもわかっている。だけど、鈴は足を止められなかった。それだけ鈴は頑固な性格だった。『私は頑固で素直になれない。私から折れることができない。カッくんが私のこと後ろから抱き締めて捕まえてくれたらいいのに』そんな自分勝手なことばかり思っていた。頑固も程々にしないと、バチが当たる。鈴は泣いていた為に視界がぼやけ、数段しかない階段に気づかずに、つまづいて転んでしまった。

「ぅあっ、きゃっ」

鈴は派手に転んだ。見ていた近くにいる人が、引いてしまう程派手に転んだ。転び方は派手だったが、痛みを感じたのは咄嗟についた手の平だけだった。今感じている限りでは、大きなケガはなさそうだ。しかし、鈴の中で何かが起こった。

「カッくん‥‥‥」

鈴がボソッと言った。

「カッくん‥‥‥カッくん‥‥‥助けて‥‥カッくん‥‥」

鈴はボソボソと呟いた。そして

「カッくん助けてよぉー、えぇーん」

鈴の中で何かが壊れ、途切れてしまい、子供のような大声を出して、泣き出した。子供といえど、いい歳の女の子だ。そんな鈴の様子を目にした周りの人達は、心配することもなく、通り過ぎて行く。横目で見る人、クスクス笑う人、見ない方がいいと思い目を逸らして歩く人、人によって様々だ。そんな周りの人達のことなど気にもせず、鈴は泣き続けていた。そして、翔は鈴のいる場所に追いつこうとしていた。

「さっきの子、カッくん助けてーって泣いてたね。いい歳っぽいのに、子供みたいな泣き方してたよね」

翔とすれ違う人が話している会話だった。『カッくん?えっ?鈴ちゃんかな?鈴ちゃんに何かあったのかな?』翔はソワソワしだし、歩く足を早めた。『出口に向かって歩いてたはずだから、こっちで合ってるよな』人が多いので道をちゃんと確認しながら進まないと、人混みに押され違う方向に流されてしまいそうだった。

「カッくん、助けてよぉー」

『んっ?この声は鈴ちゃんなのか?どこからだ?カッくんて言ってるから、確認しに行かないと』人混みの中からかすかに鈴に似た声が聞こえた。翔は声の聞こえた方へ足を進めた。

「鈴ちゃーん?近くにいる?」

翔は思わず声を上げた。

「カッくーん、ここだよー。見つけてよぉ」

鈴が鳴きながら応答する。翔は確実に鈴の声の元へと近づいていた。

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