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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第2章 始動、新生アマツ部隊

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アマギの艦長と副長①

 格納庫を出たところにエレベーターがあり、それに乗って上のフロアへと移動する。こんな凄い戦艦の艦長はどんな人物なのだろうと考えているとフィオナが袖を軽く引っ張った。


「どうしたの?」


「さっきは助けてくれてありがとうございました」


 何のことかすぐには分からなかったが、それが整備班包囲網の件だと思い出した。


「ああ、さっきの。むしろ助け船を出すのが遅れてごめん」


「いえ、そんな事ないですよ」


 フィオナと二人で謝り謝られるを繰り返しているとセルティさんが如何にも「面白いもの見つけた」という目つきでこっちを見つめていた。


「……さっきから人前で堂々とイチャついてるけど、あんたら付き合ってんの? もう行けるとこまで行った感じ?」


「な……! ち、違います、付き合ったりなんてしてません!!」


 全力で否定するフィオナさん。何もそんな思いっきり否定しなくてもいいじゃない。少し……いや、割と結構傷つくなぁ。

 落ち込む僕に気が付いたセルティさんは口角を上げて笑った。なんだその笑いは……くそぅ、そりゃあなたは楽しいでしょうよ。


「あはは、そいつは悪かったね。でもねフィオナ、隣を見てみな。面白いぐらいへこんでる男がいるよ」


「……え? ……あ、カナタごめんなさい! 別に嫌とかそういうのじゃないんです」


「気にしないでいいよ。大丈夫だから……うん、本当に大丈夫だから……」


 取りあえずこういう時に便利な言葉「大丈夫」を呪文のように繰り返し、この話題が過ぎ去るのを待つ。

 フィオナは何やらおろおろしているが、絶賛心に余裕がない自分はエレベーターが目的の階に到着するのを粛々と待つだけだ。

 僕の視界の片隅でセルティさんがフィオナの耳元で何やら囁いており彼女の顔が真っ赤になっていくのが見える。

 一体どんなやり取りが行われているんだろうと思った矢先、遂に目的の階に到着した。


 先程までとは打って変わって緊張感が走る。艦長室に到着し扉に設置してあるインターホンで確認をすると『中へどうぞ』という女性の声と共に扉が開いた。


「失礼します」


 セルティさんが先頭となって室内に入ると一組の男女がいた。四十代くらいの男性は椅子に座り、その隣には二十代ほどの女性が立っている。

 恐らく男性が艦長で女性が秘書ないしは副長といった感じだろうか? 


「セルティ・デイブレイク大尉以下九名参りました」


 さっきまでの他人をおちょくっていた雰囲気から一変しセルティさんが凜々しく報告すると、男性が席から立ち上がり朗らかな笑みで迎えてくれた。


「任務直後で疲れているところ来て貰って済まなかったな。デューイ中尉とルーン少尉は長い任務ご苦労だった」


 労いの言葉がありデューイさんとルーンが会釈する。身内での挨拶が終わると男性は部外者である僕たちの方に視線を向ける。


「それとお久しぶりですな、ノーマン技師長。こうして再会できて嬉しいですよ。整備班はお祭り騒ぎだったでしょう?」


「こんな老いぼれが戻ってきたぐらいであんなにはしゃいで、どいつもこいつも成長しとらんかったわい」


 そう言うものの爺ちゃんは嬉しそうに笑っている。整備班の歓迎ムードが余程嬉しかったのだろう。


「まあ、そう言わんでくださいよ。皆、あなたが育てた一流のメカニックなんですから。――それと、そちらにいるのがサルベージャーの若者たちですな?」


 アマツ部隊メンバーと爺ちゃんが脇に避けて僕たちに前に出るように促す。緊張しながらも前方に出てそれぞれ自己紹介を済ませると男性は微笑みながら応えてくれた。


「皆良い面構えをしているな。私はこの艦の艦長をしている【ロイ・ブリーズ】だ。階級は大佐だが、この艦の中ではそんなものは飾りみたいなものだ。気軽に声をかけてくれて構わんよ。実際、そこにいるセルティ大尉は私の髪が薄いことをネタにして面白がっている始末だしな」


 そう言われてロイ艦長の頭部に注目すると前と頭頂部の毛髪は全滅していた。セルティさんはここに来る際に艦長の毛根がどうとか言っていたがそういうことか。

 普通規律が厳しい軍で上官にそんな事を言ったら上官侮辱罪とかで厳しいペナルティをかけられると思うが、そうならない辺りこの艦の規律は相当緩いのかもしれない。

 ――と思っていたら艦長の隣に立っている女性が眼鏡を指でくいっと上げる仕草をした。すると穏やかだった雰囲気が凍り付いたかのように冷え込む。


「……艦長、そんな事を仰っているからこの艦の風紀は乱れていると上から注意されてしまうんですよ。それとセルティ大尉は何度注意しても軍人らしからぬ言動が目立ちます。アマツ部隊隊長としてもっと相応しい振る舞いをしていただきたいのですが……」


「ま、まあ、アメリア副長、客人の前なんだし、ここは大目に……。ほら、まだ君の自己紹介が終わっていないし……」


 叱られて焦った表情になるロイ艦長と全く気にした様子を見せないセルティさん。

 そんな二人にため息を吐くと眼鏡をかけた女性が凜々しい雰囲気と声で自己紹介をしてくれた。


「自己紹介が遅れ申し訳ありません。わたしは機動戦艦<アマギ>の副長を務めております【アメリア・ストーム】少佐です。艦長はああ言っていましたがあなた方には節度ある行動をしていただきたいと思っています」


 思っていた通りアメリア少佐は副長……つまりこの艦のナンバーツーのようだ。切れ長の目にすらっとした細身の長身でまるでモデルみたいだ。

 クールな雰囲気でフィオナとはまた違ったベクトルの美人な女性だ。

 今のやり取りを見ている限り、本当は艦のナンバーワンっぽい気がするがそこは気にしないようにしよう。

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