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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第2章 始動、新生アマツ部隊

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それは少し先の決戦②

 カナタは岩盤で燃えさかるジェノバ機の残骸を横目で見ると視線を<ザッハーク>に戻してクレスに問う。


『どうしてジェノバを助けなかったんだ? 奴と協力すれば僕を倒すのは簡単だったはずだろ?』


『……私は自分がされて嫌なことは他人にはしない主義でね。それはつまり盟友――君との一対一の戦いに横槍を入れられる事なのだが……きっとジェノバも同じだと思ってね』


 カナタは操縦桿から一度手を離すと小指の方から力強く握り直す。深呼吸をして目の前に立ちはだかる強敵を睨む。

 これまでに<ザッハーク>と戦ったのは二度。一度目は全く歯が立たず敗北しフィオナをさらわれた。

 二度目はつい先程、決意を新たにして新装備の<タケミカヅチ>で挑むも終始翻弄されコックピットに打撃を入れられ昏倒した。


 清々しいまでの二度の大敗を得て三度目の挑戦。――普通なら勝ち目がないと考え撤退を選ぶところだが、カナタにその二文字はない。


 ――『フィオナを助ける』。


 その目的が恐怖を吹き飛ばし彼に勇気を与えている。


『クレス、今度こそあんたを倒してフィオナを連れて帰る!!』


『そう願うのであれば実力で取り返すことだ。――盟友!!』


 叫ぶと同時に二人はその場から飛び出し真っ直ぐに向かっていくとビームソードの刃をぶつけ合って鍔迫つばぜり合う。

 一切の駆け引きのない単純かつ素早い斬撃のぶつけ合いが開始されお互いに一歩も引かない状況がしばらく続いた。


『やはり先程までとは動きが違うか。ならばこれならどうする!?』


 <ザッハーク>は斬り合いを止めて距離を取るとバヨネットを装備して射撃を始める。両肩からホーミングレーザーを同時発射し<タケミカヅチ>に集中砲火を放つ。

 カナタは舌打ちするとハイマニューバモードによる高速移動で無数のビームを避けた。


『素晴らしい判断能力と反応速度だ。だがまだ終わらんよ』


 <ザッハーク>から発射される大量のホーミングレーザーは弧を描きながら吸い込まれるように<タケミカヅチ>に向かっていく。

 一度回避しても再び標的を追い回し、逃げている間に発射されたレーザーも追加され<タケミカヅチ>は逃げ場を失ってしまった。


『囲まれた……!!』


『どんなに素早く移動しようとも包囲されてはどうしようもあるまい。――これをどう乗り切る?』


 全方位をホーミングレーザーの群れで覆われたカナタは減速する事なく前方に突っ込み、直撃する寸前で二振りのライキリで前に立ちはだかるレーザーを全て叩き落とした。

 包囲網から抜け出すと加速と急制動によってホーミングレーザーを地面に着弾させ、すぐさま<ザッハーク>に突撃する。

 

『ビームを切り払うとは……君はいつもとんでもない事をして見せてくれるな!』


『この程度なんて事ないさ。道が無いならこの手で斬り開く! 百年前も、今も、そしてこれからも僕はそうやって前に進む。邪魔をするのなら叩き潰す!!』


 一瞬無防備になった<ザッハーク>に肉薄し刃を振り下ろすとバヨネットの銃身先端に設置してあるビームソードで受け止められる。


『百年前……やはりあの頃の記憶が蘇ったようだな。ならば考えられることは一つ。――以前の君の人格と今の君の人格。二つの人格が一つになったと言うことか!!』


 鍔迫り合いの状態からバヨネットの弾丸が発射されるも<タケミカヅチ>は体幹をずらして躱し、そのまま後ろに倒れるように回転すると足底部のチェーンソーダガーでバヨネットの銃身を切断した。


『なんとっ!?』


『まだだっ!!』


 体勢を戻しながらカナタはライキリをビームブレードにして斬りかかる。

 一方のクレスは破損したバヨネットを放棄すると腰部サイドアーマーからビームカタールを取り出して防ぎきった。

 大出力の二振りのビーム刃が接触し凄まじい閃光が走る。それと同時に反発力が働き<タケミカヅチ>と<ザッハーク>は後方に一旦下がる。


『今のを凌ぐか。やっぱりあいつの対応力はメチャクチャだな。――クレスを倒すにはアレを使うしかない!』


『惚れ惚れする連撃だ。<ザッハーク>のビームカタールを使わせるとはね。今度は私をどうやって驚かせてくれるのかな?』


 クレスはもう一つのビームカタールを装備し構える。前腕部を包むようにして大出力のビーム刃が前方に伸びる。

 カナタもまたライバルとの決着を付けるべく準備に取りかかっていた。

 <タケミカヅチ>のバックパック中央部のウェポンラックを稼動させ、そこに収納されている兵装を手に取る。


『フツノミタマ、セーフティ解除。内部サブジェネレーターを機体供給モードからブレードモードに変更。(ディバイン)マテリアライズシステム起動開始……システムオールグリーン。フツノミタマ使用可能です』


 OSがその兵装を使えるようになったと伝えるとカナタはウェポンラックから取り外し切っ先を<ザッハーク>へと向けた。

 <タケミカヅチ>が装備したのは大型の剣の形をした専用ウェポンモジュール『フツノミタマ』であった。

 

『気にはなっていたが、やはり只のスタビライザーではなかったようだな。大剣型の兵装……なるほど、<タケミカヅチ>の武装としてこれほど相応しい物はない。であるとすれば、気になるのはその威力。――見せて貰おうか、盟友!!』


 クレスは内から湧き上がる興奮を抑えきれず二刀のビームカタールを交差させながらカナタに一直線に向かっていく。

 カナタはその場から動かず迎え撃つ姿勢を取った。


『言われなくても見せてやるさ! フォームⅠ、マテリアライズブレードモード!!』


 フツノミタマ刀身部の両側面から高密度のD粒子が放出されると、それらはたちまち物質化し金属の如き刃へと変貌した。

 その変化を目の当たりにしたクレスはフツノミタマの能力を瞬時に理解し青ざめる。それでも彼の闘争心を打ち消す材料にはなり得ず、むしろ気迫を底上げする。


『パワーの出し惜しみをする余裕はなさそうだな。全力で行かせて貰う!!』


『クレス、望み通りに見せてやる。これが<タケミカヅチ>の新しい力だ!!』


 全力で互いの得物をぶつけ合う。<ザッハーク>が二振りのビームカタールであるのに対し、<タケミカヅチ>は一振りのフツノミタマ。

 ライキリのビームブレードと互角以上の出力を誇る二つの刃をフツノミタマの刃は受け止めていた。

 しかも物質化した刃は砕けるどころか刃こぼれ一つ起こしていない。


『やはり、その刃はDマテリアライズシステム――高密度D粒子を物質化したものか。まさか既に実戦使用の段階にまで達していたとは……『ノア11』の技術力は侮れないな!』


『この力で今度こそあんたに勝つ。そしてフィオナを救い出して皆と一緒に帰るんだ!!』


『……君は変わらないな。あの頃も今も君にとってフィオナ・トワイライトという女性はよほど大切な存在らしい』


『ああ、そうさ。<クロノス>の破壊や『ノア3』の殲滅なんて二の次だ。僕にとって一番大切なのはフィオナと仲間が無事でいてくれる事だ』


 <タケミカヅチ>がフツノミタマを振り抜くと<ザッハーク>は吹き飛ばされ後方の岩塊に衝突した。


『くっ、大したパワーだ。……やはり君らしいよ。君はいつも仲間の安否を重んじ行動していた。彼らが危険に陥れば敵集団の真ん中であっても助けに行く。――それが君だった。そんな君だからこそ、私はライバルを超えた魂の友として『盟友』と呼ぶことにしたのさ』


『そうかい。『ノア3』のエースパイロットにそう思われていたなんて光栄だね』

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