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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム

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出現、ギガフォートレス

 潔白さを象徴する白い機体の佇まいにフォルネスは瀕死のダメージを負いながらもうっとりとしていた。


『ふ……ふふ……相変わらず美しい機体だこと。それでいて凶暴極まりない戦いぶり……剣鬼復活は本当だったみたい……ね……』


 <クラーケン>のデュアルアイから光が消え触手脚の動きが止まった。


『不意打ちになって申し訳ないけど、こっちも負けていられないんだ。――ライキリ最大出力、ビームブレードモード!!』


 カナタは<クラーケン>に突き刺したライキリをビームブレードにするとその内部を焼き斬り十字に裂いた。

 カナタ達が急いで離れると<クラーケン>は爆散して残骸は海深くへと沈んでいった。


『どうやら倒せたようだな。今回ばかりは私だけでは危なかったかもしれない。感謝する』


『へぇ~、デューイ中尉がお礼を言うなんて珍しいですねぇ。アタシ欲しい服があるんですけど~』


『調子に乗るな、自分で購入しろ。――それよりも引っかかることがある』


 デューイは海中に沈みゆく<クラーケン>の残骸を見下ろしながら釈然としないものを感じていた。

 

『カナタの攻撃を受けた後、奴は抵抗する素振りがなかった。それがどうも納得できない』


『それは僕も感じていました。ライキリを突き刺してから勝負を諦めるのが早かった気がします。触手やミサイルもまだ使用出来たはずなのに反撃しなかった。それにビームブレードモードにする直前に<クラーケン>から力が抜けたような感じがしました』


『……それってもしかして勝負を諦めたんじゃなくて、仕切り直すために撃破される前に意識が抜け出したんじゃないですかぁ?』


『それってどういう意味だよ? 機体が落とされたら戻って来れねえだろ』 


 四人の胸中に残った腑に落ちない感覚が不安となって段々と大きくなっていく。

 その時、カナタ達のいるエリアから更に沖の方で海面が盛り上がり始めた。それはまるで山が海中からせり出してきたような光景であった。

 そんな圧倒的な光景を目の当たりにしつつ、ルーンはバルトに言いかけていた答えを口にした。


『相手はAI化した人間。自分の機体がやられる前に別の機体に乗り移ることだって可能でしょ』


『おいおい、それじゃあのオカマは――!』


 海中から姿を現したのは(アサルト)(フレーム)のサイズを遙かに凌ぐ巨大な構造物だった。

 海面に出てきた影響で付近の海は大きくうねって津波が起こり『オキノミ』のベイエリアを波が呑み込んでいく。

 <カグツチ>は上空に飛んで波から逃れたがバルトの視界に入ってきたのは海に突如出現した超巨大な怪物だった。


『いったい何なんだよ、こいつは……。こんな化け物が海の中に隠れていたのかよ!』


 海面を襲う波に抵抗しながら出現した巨大構造物を確認するデューイは自分の予想が的中した事実を素直に喜べず苦虫を噛み潰したような顔をする。


『敵の数から恐らくとは思ってはいたが……水中用ギガフォートレス<ケートス>……全長約一キロメートルの巨大潜水艦か。ギガフォートレス級の領内侵入を許すとは……くそっ!』


『うふふふ、悔しがっちゃってホントか~わいい! ワタシ達はこの<ケートス>でここまでやって来たわけよ。――さーて仕切り直しといきましょうか!!』


 くじらを模したギガフォートレスの甲板上に巨大なAFが現れ、そこから通信が送られてくる。その声は先程までデューイ達と戦っていたフォルネスのものであった。





 コックピットに強制送信されてきた声の主は間違いないくフォルネスだ。

 その発信元は<ケートス>と呼ばれている鯨を模したギガフォートレスの甲板にいるAFからだった。

 モニターに映る敵機の姿が拡大され全体像がはっきりする。それは今しがた破壊した<クラーケン>と同型の機体だ。

 ただし下半身が触手脚ではなく四脚型に変更されており甲板上で問題なく動いている。今度は水中ではなく地上で戦うつもりなのか。

 いや、あの四脚型の特徴から考えると恐らくは……。


『さてと獲物はよりどりみどりねぇ、迷っちゃうわ~。さっきはデューイちゃんとたっぷり遊んだことだし、今度は……』


 何だか<クラーケン>から視線を感じる。これはもしかしなくても次のターゲットは僕ということなのだろうか。

 デューイさんの方を見ると顔を逸らしてこっちを見ないようにしている。この人がここまで嫌がるなんてよほど怖い思いをしたのだろう。

 それに<スサノオ>は現在水中戦用装備なので地上では性能を発揮できない。

 バルトはベイエリアにいるしルーンは女性なのでフォルネスが戦おうとしないだろう。

 ――つまり僕がやるしかないのだ。


「……はぁ。それじゃ<クラーケン>の相手は僕がするので皆は他の機体とギガフォートレスをお願いします」


『分かった。フォルネスはお前に任せる。水中の敵は私に任せろ』


『オレは今からギガフォートレスに乗り込んで大暴れしてやるぜ。お前と<クラーケン>の戦いに横やりは入れさせないぜ!』


 僕がフォルネスと戦うと宣言するとデューイさんとバルトは一瞬安堵した表情を見せやる気をみなぎらせる。ちょっと釈然としないけどしょうがないか。


 気を取り直してギガフォートレスに向かう。

 <タケミカヅチ>が装着しているバックパックの推力ならしばらく飛行する事が可能なのでこのままギガフォートレスに乗り込める。

 その後に<スサノオ>と<ツクヨミ>が続く。<カグツチ>はベイエリアから飛び出すと足底部をホバーモードにして海面を進み始めた。


 四機でギガフォートレス<ケートス>に向かっていると甲板上には次々と<アーヴァンク>が現れ海に飛び込んでいく。

 <クラーケン>は四脚を外側に開くと脚部裏側のスラスターを噴射して飛行を始めた。

 それにあの四脚ユニットから大量の(ディバイン)粒子反応が出ている。D粒子の重力制御で浮力を得ているに違いない。


「あの四脚の形状から飛行ユニットになるかもと思っていたけどやっぱりか! フォルネスは空中戦をやるつもりだ。――なら、こっちもやってやるさ!!」


 僕は水上を飛行してくる<クラーケン>と会敵した。バックパックのエンペラ部分のハッチが開放されると十数発のミサイルを一斉射してくる。

 海面ぎりぎりを飛行して水しぶきを上げながら回避行動に移ると逸れたミサイルが次々に爆発して水柱を作っていく。


『ふふん、やるじゃない。それじゃあ、これはどうかしら?』


 <クラーケン>の両腕が射出され高速でこっちに向かってくる。

 マシンガンで撃墜を試みるとピンポイントで展開されたDフィールドに弾が阻まれ、ぎりぎりで避けた瞬間すれ違いざまにマシンガンを破壊されてしまった。

 敵の発射された前腕は上腕とワイヤーで繋がっていてしばらく暴れ回ると本体に戻っていった。


「有線式クローアームか! あれに捕まったら<タケミカヅチ>でも振りほどけないぞ」


 ミサイルの雨に紛れて射出された有線式クローアームが機体をかすめていく。その度にコックピットに衝撃が走り冷や汗が出てくる。

 敵はクローアーム先端の爪を開いたり閉じたりしながら攻撃に変化を持たせているため、対処を間違えると機体に爪を打ち込まれるか捕まって握りつぶされてしまう。


「このミサイルの弾幕とクローアームの攻撃は厄介だ。それに連続飛行もそろそろ限界だ。どこかに下りて一旦スラスターを休ませないと……」


 この付近で下りられる場所を探すが一箇所しかない。敵の動く要塞ギガフォートレスだ。

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