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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム
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戦闘

 通信をアクティブに切り替えて<ランドキャリア>と連絡を取ろうとすると既に爺ちゃんと接近する<ゴブリン>のパイロットとでやり取りが始まっていた。


『海中から引き上げた輸送機と積荷は俺たちがいただく。黙ってここから立ち去れば命までは取らないって言ってるんだよ、爺さん』


『わしはサルベージャー管理局から正式な手続きを得てこの仕事を請け負ったんじゃ。既に管理局には連絡を済ませてある。輸送機はちゃんと『ノア11』の資源として回収される必要があるんじゃよ。お前さん達もサルベージャーならそんな基本的な事は分かっているじゃろ?』


『おいおい、正気かよ! 今時そんな正直に管理局に回収品を渡すバカがいるとでも? どうせそんな事をしたって俺たちのところに入ってくるのは僅かな報酬だけだ。それに比べて裏ルートで売りさばけば何倍もの金が手に入るんだぜ。少し考えればどっちを選ぶか分かりそうなもんだけどなぁ!!』


『お前さんの言い分も分かるがの……。しかし、この件はわしが請け負った仕事じゃ。その為に色々と諸経費も掛かっておる。お前さんたちにこいつを持って行かれると老い先短い人生のショートカットになってしまう。情けを掛けて欲しいんじゃがのう』


 爺ちゃんお得意の『老い先短いシリーズ』で同情を誘う。しかし、それはある程度良心のある相手になら有効な訳で、多分こういう手合いには効果が無いと思う。


『はん! 良かったじゃねーか。それならとっととくたばって保育装置からやり直せばいいだけだろ。二年もすればガキの状態から始められるんだぜ。ただし今の記憶は無くなってるだろうがなぁ! ぎゃははははははは!!』


『お前さんらは悪魔じゃな』


 予想通りだった。こいつらは他のサルベージャーの仕事に割り込んで回収品を奪うハイエナだ。

 話を聞いている感じだと今回が初犯じゃない。何度もこういうことをやってきた常習犯だ。殺しだって……。

 爺ちゃんは最初からこいつらが話を聞くような連中ではないことを分かってた。それでも会話を続けていたのは僕が逃げる時間を稼ぐためだった。

 だからずっと会話の中で「わし」と単独で仕事をしているように言ってるんだ。


 レーダーに映る<ゴブリン>は<ランドキャリア>の近くまで来ていた。このままじゃ爺ちゃんが……やるしかない!


「こいつで<ゴブリン>三機相手にどこまでやれるか分からないけど、せめて爺ちゃんが逃げられる時間だけでも稼げれば……動いてくれ!!」


 立ち上がるイメージ通りに<タケミカヅチ>は動いてくれた。これならいける!


『パイロットの戦意レベル上昇を確認。接近中のA(アサルト)F(フレーム)との交戦確率九十パーセント以上。ナノニウムを機体保護モードから戦闘モードに移行します』


 機体表面に付着していたフジツボと壊死状態のナノマシンの層が剥がれ落ちる。

 モニターに<タケミカヅチ>の全体像が表示され、機体を構成するナノマシンのモードが切り替わった事が告げられる。


D(ディバイン)リアクター出力上昇……異常を感知、ジェネレーター出力限界を五十パーセントに変更……安定を確認。背部メインスラスター及び下腿後部スラスター使用可能。姿勢制御バーニア全基の四十五パーセント使用可能。オプション及び内蔵式ウェポン使用不可。戦闘区域からの即時撤退を提案します』


「不調だらけか! それでもやるしかないんだ。――行こう、<タケミカヅチ>!!」


 メインスラスターを全開にして輸送機の天井をぶち破って飛翔する。これだけの重装甲だというのにあっという間に飛び上がれた出力に驚く。


「こいつ……凄いパワーだ。<ソルド>とは桁違いだ。これで本当にジェネレーター出力が本来の半分だっていうのか!?」


 驚いている場合じゃない。モニターには<ランドキャリア>のすぐ側まで接近する<ゴブリン>三機の姿が映っている。

 それぞれアサルトライフルやマシンガンで武装している。抵抗すればあれで攻撃されるってことか。

 AFに乗っていれば争いごとに巻き込まれるのは必然だ。今まで何度も襲われることはあった。けれどこうして正面から戦いを挑むのは初めてだ。


「やめろーーーーーーーー!!!」


 武器が無い以上、肉弾戦を仕掛けるしかない。マニピュレーター――つまり手で殴るか体当たりの二択だ。

 両腕を機体前面でクロスしコックピットを守るようにして一番前にいる<ゴブリン>に突撃した。

 不意を突いた攻撃によって<ゴブリン>は吹っ飛び岩場に激突する。すると接触回線が開いたのか相手のパイロットの叫びが聞こえてきた。


『うがあああああああ!! 一体何が!?』


 <ランドキャリア>と<ゴブリン>の間に機体を割り込ませてファイティングポーズを取り爺ちゃんと通信を繋ぐ。

 

「爺ちゃん、ここは僕がなんとかするから早く逃げて!!」


『その声……カナタか! その機体に乗っているのか!?』


「そうだよ、何とか動かす事が出来たんだ。今はそんな事よりも逃げることが先決だ。非武装の<ランドキャリア>じゃ攻撃を受けたらひとたまりも無い。重装甲のこいつなら少なくとも壁代わりにはなる!」


『カナタ……すまん! <ランドキャリア>が安全域まで離れたらお前もすぐに撤退するんじゃぞ!』


「分かった!!」


 爺ちゃん達を乗せた<ランドキャリア>がこの場から逃げ始めた。上手くいけばここに向かっている管理局に合流できるかもしれない。

 視線を<ゴブリン>三機に向けたまま機体を壁のようにして立ち塞がる。

 足の遅い<ランドキャリア>が安全と言える距離まで逃げるにはそれなりの時間を稼がなければならない。

 頼むからそのまま動かないでくれ。


『この野郎、よくもやってくれたな!!』


『あのジジイ。口ぶりから一人かと思ったら仲間がいやがったのか!』


『その機体……まさか輸送機に積んであったものか? だったら大人しく俺たちに渡しな。そうすりゃ命までは取らないでやるぜ』


 三機の<ゴブリン>のパイロットが通信で好き勝手を言う。相手はやる気満々だ。やっぱり戦闘は避けられそうにもない。


「お断りします。経験上あなた方のような犯罪の常習犯は約束を守ることはしませんから。口封じとして確実に命を奪うのは明らかです」


『……ふーん、多少は頭が回るじゃねーか。話を鵜呑みにして死んでいった連中とは多少違うみてーだな』


「な……! あんた達は人の命を何だと思ってるんだ!!」


『……あ? 人の命だと? そんなのAFのパーツと同じ位の価値しかねーだろーよ! どうせ俺が死んだって体内のナノマシンの停止を感知した『クレイドル』のシステム様が遺伝子情報から新しい俺の製造を始めるんだ。それで二年間保育装置で育てられたら遺伝子的に最適な仕事に就いて死ぬまでこき使われる! そのたびに以前の記憶をリセットされてな! こんなクソみてーな命に価値があると本気で思ってんのかテメーは!!』


 怒号と共にマシンガンが<タケミカヅチ>に発射された。

 重力に影響を及ぼすD(ディバイン)粒子をエネルギーにした弾丸が凄まじい連射速度で迫ってくる。

 <タケミカヅチ>の両腕を合わせて盾代わりしつつD粒子をバリア状に展開するD(ディバイン)フィールドで防御する。

 予想通りこいつの桁違いの出力によって<ゴブリン>の弾丸は全て強力なDフィールドに弾かれた。

 モニターにDフィールドの耐久値が表示されるがほとんど消耗されない。それだけ敵機との間にパワー差があるんだ。

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