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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム

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ジェノバ再び

 残った敵が各種ライフルやミサイルを発射してくるとミサイルは標的を見失ったかのように上空に飛んでいって爆発する。

 <ツクヨミ>はライフルの弾丸の雨を優雅に躱すとチェ-ンウィップを収納し腰部リアアーマーにマウントしていたサブマシンガンを装備して銃撃戦に突入した。


 サブマシンガンは小型で連射性に優れた銃だ。射程距離は短いが小型で取り回しがよく連射が利くので牽制目的には丁度良い武器だ。

 ――と思っていたら次々とサブマシンガンによって量産機たちは大ダメージを受けていく。


「とてもサブマシンガンとは思えない火力だ……」


『アマツシリーズ用に開発された物だからな。一般レベルとは一線を画する性能がある。あの程度の量産機相手なら容易に破壊可能だ』


 軍製の武器の威力に感心しているとバルトが会話に突っ込んできた。


『……さっきから武器の話ばかりしてるけどよ、どうして誰もミサイルがメチャクチャな方向に飛んでいった件に触れてないんだよ。気にしてるのオレだけ?』


「ああ、あれね。<ツクヨミ>は電子戦兵装を搭載してるっていうのは覚えてるよね。その機能の中にはミサイルの誘導システムを誤作動させる『ジャマー機能』っていうのがあるんだ。それが発動してミサイルは<ツクヨミ>から逸れて上空で爆発したんだよ」


『その通りだ』


『……カナタ、お前何でそんなこと知ってんだよ』


「何でって……電子戦兵装の常識だから……?」


『そりゃお前だけだろ。(アサルト)(フレーム)オタクの知識が活きてんなー』


『おしゃべりはここまでだ。そろそろ私たちも出るぞ』


 <ツクヨミ>の特殊機能を一通り見学させてもらったので僕たちも戦闘に参加し一気に勝負を決めることにした。

 廃墟の物陰から姿を現すと既に混乱状態だった敵部隊は逃げ惑い各個撃破され文字通り一瞬で終わった。

 残りの敵は<レッドキャップ>のみ。もうこの戦力差は覆らないだろう。


『――よくもやってくれましたね。怪しい連中とは思っていましたが、まさか標的と手を組むとは……生き延びるためには手段は選ばないということですか』


『ゼノア・サンド……貴様は勘違いをしている。我々の標的は貴様だ。この半年間、貴様の尻尾を掴むため我々はサルベージャーとなって動いていた。だが、それも今日で終わりだ。貴様が『ノア11』領内に広めたOS強化装置……その流通ルートを洗いざらい吐いてもらうぞ』


 ゼノアが搭乗する<レッドキャップ>に<スサノオ>のビームソードの切っ先が向けられる。

 その剣に込められた殺気は僕たちと戦った時よりも圧倒的に重く鋭いものだった。  

 AFの装甲越しにこれだけのプレッシャーを与えるなんて本物の軍人は凄いと思わされる。


『はっ……! 見たところライフル等の射撃武器は失ってしまったみたいですね。そんな状態でフル装備の<レッドキャップ>に太刀打ちできると思っているのですか!?』


 <レッドキャップ>のバックパックや両肩、両脚に装備されたグレネードランチャーを見せびらかしながらゼノアが吠える。

 あれだけのグレネードを一斉に発射されたらもの凄い破壊力になるぞ……。


『どうです、驚きましたかぁ!? これを放たれればあなた方は一瞬で火だるまです。それが嫌ならさっさと私の視界から消え――』


『何かと思えばそれがどうした?』


『あはは! この状況でアタシ達にそんなギャグを言うなんてセンスありますよねぇ』


 脅すゼノアに対してデューイさんとルーンさんは呆れた様子だ。大量のグレネードを前に少しもたじろぐ様子は無い。 

 というかむしろ余裕さえ感じる。


『我々は最前線で戦ってきた兵士だ。戦場でミサイルが飛び交いライフルの弾が雨のように振り注ぐなど日常茶飯事のこと。――貴様は食事にパンが出てくると一々恐怖を感じるのか? それぐらい我々にとっては当たり前のことなんだよ。信じられないのならとっとと撃ってくるといい』


『――このっ、バカにしやがって!! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 一斉にグレネードが発射されると<スサノオ>に向かっていく。ミサイルのような誘導弾ではないのでジャマーでその動きに干渉する事はできない。

 加勢に向かおうとした時、<スサノオ>はグレネードの群れに突撃を開始した。

 そして両腕のビームソードでそれら全てを斬り裂き通り抜けると<レッドキャップ>に蹴りを入れて廃ビルに叩きつける。

 次の瞬間、切断された全てのグレネードが空中で一斉に爆発し周囲が炎に呑まれた。

 

「凄い……! 大量のグレネードを一瞬でさばいた。あれがデューイさんの本気なのか?」


『……あそこまでいくと同じ人間とは思えねぇな』


『デューイ中尉は接近も遠距離もそつなくこなすオールラウンダーですからねぇ。あんなの序の口ですよ。実際の戦場ではもっと凄いですよぅ』


 バルトと感心しているとルーンさんが誇らしげに笑みを浮かべていた。お互い何だかんだで信頼し合っているんだなぁ。


 <スサノオ>は足で<レッドキャップ>を廃ビルに押しつけ動きを封じ、その頭部にビームソードを近づかせながら脅しをかける。


『これで理解したか? 貴様がこれまでやってきたのは所詮戦争ごっこだったという事だ。しかも自分に圧倒的な有利条件がある上でのな。――これが本物の戦争、本物の暴力だ』


『ひっ! た、助……けて。助けてください、命だけはぁぁぁぁぁぁ!!』


『――貴様は同じように命乞いをしたサルベージャーを何人殺した?』


『そ、それは……! ひっ、私はただこんな暮らしから抜け出したかっただけなんです。そんな時に『ノア3』の関係者と知り合って、例のOSの強化装置を広めれば『ノア3』側に私の居場所を用意してくれると言って――』

 

 

 圧倒的な実力差によって一瞬で決着が付き恐怖に駆られたゼノアは自ら装置の件について話し出した。

 その口から出てくるのは自分の保身の事ばかりで聞いていて不快感しか感じない。

 こんな奴のために今まで何人のサルベージャーが弄ばれ命を落としていったのか。


『強化装置の受け渡しは『ノア11』領内の『オキノミ』で行われています。そこから私の指示で様々なサルベージャーに特別報酬として渡していました。装置に関しては私もOSの機能を向上させAFの性能が上がるという事ぐらいしか知りません! だから助けてください、お願いします!!』


『……いいだろう。今話したのが本当に全てなのかはお前を軍に引き渡した後に彼らに調べてもらえば分かることだ。彼らが到着するまでは機体から降りて――』


『はぁ~、正直がっかりだわ。せっかく色々と機体性能を上げてやったってのに、こうもあっさりやられちまうんだからな~。ホントないわぁ~』


 突然これまでこの場にいなかった男の声が聞こえてきた。これは……このやたら緩い感じの声は……忘れもしない……!


「……ジェノバか! どこにいるんだ、出てこい!!」


『カナタきゅん、おっひさ~! オレの名前を覚えていてくれたなんて嬉しいじゃないのよ。二週間ぶりぐらいだけど腕前は上がったかな?』


「ふざけるな! 隠れていないで姿を見せろ!!」


『隠れるも何もオレはずーっとこの場にいたよ。――ほら、今も君らの目の前にいるじゃあないか』


 その不気味な物言いに背筋が寒くなる。無意識に視線を<レッドキャップ>に向けると機体に装備していたグレネードランチャーが一斉にパージされるのが見えた。


『この中にはまだ大量のグレネードが残ってる。それが全部こんな至近距離で爆発したら、いくら<スサノオ>でも耐えられないっしょ!』


『――ちぃっ!』


 デューイさんは舌打ちしながら後方に下がり、<レッドキャップ>は素早い動きで上に跳んだ。

 その瞬間パージされたグレネードランチャーが一斉に爆発し周囲は炎と破砕された瓦礫によって埋め尽くされた。

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