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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム

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怒りの理由

 

 ――まだ頭の中で整理が追いついていない。


 爺ちゃんから聞かされた話は今の生活を根本から覆すことばかりで、そこに自分が関わるかどうか選択を迫られる事になった。

 爺ちゃんの話では大罪戦役のような戦いが始まるかもしれないという事だった。いや、既にその前哨戦は始まっていた。

 『アハジ』でのジェノバとの戦いはまさにそれだ。


 そして今度は『ノア11』の軍人が目の前に敵として立ち塞がっている。

 <タケミカヅチ>の後方で倒れている<カグツチ>は全身の装甲が焦げ付き所々溶けかかっていた。

 頭部は奥の手として搭載されていた『ホムスビ』という高出力ビーム砲を使用した影響で半壊している。


「バルト! 生きてる!?」


『ああ、オレは無事だ。すまねえ……全然奴にダメージを与えられなかった』


 良かった。機体の状態に反してモニターに映るバルトには特に怪我は見られない。ただ青い(アサルト)(フレーム)との戦闘結果に意気消沈している様子だった。

 バルトが無事だと分かり意識を目の前にいる敵機に向ける。さっきの短いやり取りだけで理解した。

 あの青いAF――<スサノオ>は機体もパイロットも驚異的だ。今まで僕が戦ってきたどの相手と比較しても圧倒的に強い。


『――来るのが遅かったな、カナタ・クラウディス。ノーマン技師長から事情を聞いたと理解していいか?』


 <スサノオ>との間に通信がつながりパイロットの姿がモニターに映る。

 鋭く冷徹さを感じる目でモニター越しに僕を見てくる。この人が纏っている雰囲気はサルベージャーとは根本的に違う。

 これは何度も死線をくぐり抜けてきた――戦士の目だ。


「大体の内容は爺ちゃんから聞きました。だから『ノア11』が今危険な状況であることも、いつ大罪戦役のような状況に突入してもおかしくないことも……そしてあなた方が<タケミカヅチ>と<カグツチ>を戦力として欲していることも理解出来ます。けど……」


『けど……何だ?』


 <カグツチ>の傷ついた姿を目にし、バルトが死んだかもしれないと思った時の怒りが自分の中でマグマのように煮えたぎり冷める様子は無かった。

 

「ここまでする必要があったんですか? 事情を何も知らなかった僕たちに奇襲を仕掛けて……バルトを追い込んで……<カグツチ>もこんなに傷ついて……下手をすれば死んでいたかもしれなかったんですよ!!」


 怒りに任せてデューイさんを睨む。それにも関わらず彼は眉一つ動かさず無表情でこっちを見ている。

 その余裕がさらに僕の怒りを煽っていく。


『必要があるかないかと言うのであれば、答えはイエスだ。必要があるからやった。それに<カグツチ>がそこまで損傷したのは自滅に近い。勝てないと分かっているのに私に少しでもダメージを与えようと食らいついてきた代償だ』


「だからって……!!」


『それに<カグツチ>のパイロットがそこまで無茶をしたのはお前の為だ。お前の戦いを少しでも楽にする為にここまでやって見せた』


 そんな事は言われなくたって分かってる。あれだけ接近した状態でホムスビを使えばこうなる事はバルトもよく分かっていたはずだ。

 それでも次に戦う僕のために危険を承知で戦い抜いたんだ。


「それでも……そこまで追い込んだのはあなただ! 機体が欲しいのなら戦いじゃなく交渉することだって出来たはずでしょう!?」


『機体だけならな。だが私が欲しているのは機体だけではない。――そのパイロットもだ。だからこそ実力を確かめる必要があった』


「どうしてパイロットも? そんなのあなた達軍人の中から選べばいいじゃないですか!」


『自覚が無いようだから言っておくが、アマツシリーズの機体には誰もが乗れるわけではない。機体のシステムが自らの主として相応しいか選定し認められた者にしか動かす事はできない。軍属のパイロットでも該当する者がいるかどうかというレベルの問題だ。――しかし、お前たちは既にその難題をクリアし機体を操っている。だからこそ我々は機体とパイロット両方をそのまま戦力として組み込みたいという訳だ』


 <タケミカヅチ>に初めて乗った時にパイロット登録が行われたけど、あれってそんなに条件が厳しいものだったのか。

 確かにそれなら<カグツチ>がこれまで誰にも反応せず機能不全の機体としてコレクターの間を転々としてきた事にも頷ける。

 それだけバルトと<カグツチ>の出会いは奇跡的だったという事なのだろう。


「――つまり機体ごと僕とバルトを軍に入れたいという事ですか?」


『その通りだ。この戦いはその為のテストと考えてもらいたい』


「勝手なことを……! 僕たちの意思は関係ないんですか!?」


『技師長から話を聞いたのなら分かるはずだ。――我々に個人の権利を主張している余裕などない。既に戦争は始まっている。負ければ我々は皆殺しにされるか『ノア3』を支配する<クロノス>に乗っ取られるかの二択だ。どのみち勝たなければ全てを失う。そうなりなたくなければ戦って勝つしかない。今のお前の憤りは仲間を危険な状況に追い込んだ私に対するものだろう。ならばその怒りを私にぶつけてこい』


 この人が言っている事は多分正しいのだろう。爺ちゃんの話では既に『ノア11』は危険な状況にある。

 それを打開するには大罪戦役で活躍した高性能なAFを一機でも多く回収して戦いに投入しなければならない。

 全ては『ノア11』を守るための行動なんだ。

 でも、頭では理解できても心が納得していない。――ならば全力でぶつかってみよう。そうしたら答えが見つかるかもしれない。


 深呼吸して心を落ち着かせ操縦桿を握り直す。そして前方でこっちの出方を窺っている<スサノオ>を見やる。

 

「それなら遠慮無くぶつけさせてもらいます。――カナタ・クラウディス。<タケミカヅチ>、行きます!!」

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