ノーマンとデューイ
「そろそろ街でAFパーツの売却と消耗品の補充をしたほうがいいじゃろう」
皆で『ブルームーン』の満月を見上げた翌日、爺ちゃんの提案で近くの街に買い出しに行くことになった。
ついでに襲ってきたサルベージャーの機体から拝借したパーツ類を売って資金にする。
「わしらの<ランドキャリア>は念のためここで待機させておこう。管理局の監視が常にあると考えて行動した方がいいじゃろう。カナタとフィオナはランド達と一緒に買い出しを頼んだぞ。わしは<タケミカヅチ>のメンテナンスをしておく」
「分かった」
「ノーマンさん、あまり無茶しないでくださいね。すぐに戻りますから」
「ありがとう。まあ、久しぶりの街じゃからの。羽を伸ばしてきなさい」
爺ちゃんに送り出されて僕たちは付近の街『イヨ』へと向かった。
そこは『アハジ』よりも小規模な街だが、AFの売買が可能なショップはあるし食料品などを購入するには申し分はないので、管理局やサルベージャーに気をつけている僕たちにとっては丁度良い規模の街だった。
◇
カナタ達が買い出しの為『イヨ』に向かった後、一人残ったノーマンは屋外に設置されたテーブルに二人分のカップとお茶うけを用意し椅子に座っていた。
ふと横目で荒廃した街並みを眺めていると一人の若い男性が道路を歩いて来るのが見えた。その男性はノーマンの側までやって来た。
「――そろそろ来る頃だと思ったわい。茶でも飲むかい?」
「頂きます。――お久しぶりです、ノーマン技師長」
「お前さんもな、デューイ。四年ぶりかの? 随分と立派になったのう。とにかく座りなさい」
デューイが椅子に座るとノーマンはフィオナ特性のハーブティーをカップに注いでいく。お茶うけにクッキーを出し二人は静かにハーブティーを愉しむ。
「美味しいですね」
「そうじゃろう。最近共に行動することになった女の子が料理上手での、その子が作ってくれたんじゃよ」
「――つまりその女性があなた方が北方を目指す原因ということですか?」
デューイはカップを置くと鋭い目つきでノーマンを見る。ノーマンは彼の目をしげしげと眺めながら自分のカップをテーブルに置いた。
「その通りじゃよ」
「<タケミカヅチ>を発見したにも関わらず我々に何の連絡もなかったのは何故ですか? あなたの任務は大罪戦役で行方不明になった残りのアマツシリーズ――<タケミカヅチ>と<カグツチ>の捜索だったはずです」
「あくまでサルベージャーがメインじゃよ。そのついでにアマツシリーズを見つけたら連絡するという条件でわしは軍を辞めたんじゃ」
デューイはため息を吐くと椅子の背もたれに体重を預ける。彼を眺めながらノーマンは別の話をする。
「ところで昨夜わしらを監視していたのは<ツクヨミ>じゃろ。昨日は『ブルームーン』が満月で『ネェルアース』では広範囲で微弱な電波障害が発生しておった。その影響でトバリの光学迷彩が一部不具合を起こして周囲に溶け込めきれていなかったぞ。あれのパイロットにはトバリをもっと使いこなせるよう教育しておいた方がいいじゃろ。お前さんがパイロットであればあんなミスはせんかったと思うがの」
「さすがですね。アマツシリーズの第一人者なだけはある。――だからこそノーマン技師長。軍に戻って来ては頂けないでしょうか。あなたの力が必要なんです」
「……わしは既に引退した身じゃよ。現在こちらで所持している<タケミカヅチ>と<カグツチ>は用事が済んだらそちらに必ず返す。これでは駄目かの?」
「<カグツチ>!? もう一機の赤いAFは<カグツチ>なのですか? ……驚きました。まさか行方不明の二機が既に揃っていたとは。――二機に関しては発見次第最優先で回収するように命令が下りています。上に掛け合ってみなければ処遇に関してはどうなるか判断はできません」
デューイは驚きつつもすぐに冷静さを取り戻しノーマンとの交渉に入る。そして現在『ノア11』領内を脅かす、ある問題について言及することにした。
「ノーマン技師長、これは他言無用にしていただきたいのですが半年ほど前から『ノア11』領内でAFの暴走事件が起きているんです。最初は稀に発生する程度だったのですが最近ではその頻度は増していて領内全域にまで被害が広がっています」
「AFの暴走じゃと? 一体何が原因で……」




