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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム

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ナルカミ

 <ガルム>は命を吹き返したかのように赤い複眼に再び光が灯り、頭部を<タケミカヅチ>の頭部にぶつけてきた。

 それにより接触回線が開きコックピットモニターに<ガルム>のパイロット――ジェノバの姿が映し出される。

 そいつは赤い長髪の三十代くらいの男だった。顔には幾つもの傷痕があり歴戦の戦士の風貌をしていた。


『へぇ~、あれだけ大胆な戦い方をしてくるからどんな奴かと思ったら可愛い顔してんじゃないの』


 ジェノバは精悍せいかんな顔をクシャッと歪ませる笑みを見せておどけた口調で語りかけてくる。それから何かに気づいたように僕の顔をマジマジと眺め始めた。


『……うん? これはまさか……あの時に比べれば若いが……ふーん。――君さぁ、もしかして……カナタ・クラウディス……だったりする?』


「どうして僕の名前を知ってるんだ……!?」


 突然自分の名前を言い当てられて困惑しているとジェノバが笑い出した。


『……ひひひ……そうか、そうかぁ。まさかとは思ったけど、ご本人様とはなぁぁぁぁぁ!』


「何がおかしいんだ? 僕が一体なんだって言うんだ!?」


 ジェノバは手で顔を覆って笑うのを我慢しながら回答した。


『これが笑わずにいられるかい? こんな偶然、神がかった何かが仕組んでもいなけりゃ実現しないだろう!? 今なら神様ってのがいても不思議じゃないと思えるよ』


「……何を言っているのか分からないけど、これ以上構っていられるか……!!」


 <ガルム>の胸部を貫いているビームソードを動かして横薙ぎにしようとするとビーム刃が消えてしまった。

 同時にコックピットではビームソード発生器が壊れたことを知らせる表示が出る。限界を超える出力で使っていたため破損したらしい。


「くそっ、何もこんなタイミングで壊れなくてもいいじゃないか!!」


『おやおや~、ビームがいきなり消えちゃったけどトラブルでも起きたのかな~? こんなにラッキーが続くなんてもしかしてオレってば神様に好かれちゃったのかなぁ?』


 モニターに映るジェノバが歪んだ笑みを見せる。ビームソードが使えなくなった事で<タケミカヅチ>は丸腰になってしまった。

 その時、援護に回っていたバルトが通信を繋げてきた。


『カナタ、早くそいつから離れろ! そしたら<カグツチ>の一斉射でそいつを吹っ飛ばす!!』


「バルト! 了解――」


 後ろに下がろうとすると<ガルム>が左腕で<タケミカヅチ>を捕まえて離れないようにしてきた。さらに右手に持っていたビームソードで攻撃をしてくる。

 咄嗟に<タケミカヅチ>の左腕で敵の右腕を掴みビームソードを振り下ろせないようにする。しかし<ガルム>は凄まじいパワーで押し切ろうとする。

 操縦桿の動きが重くなり前方に動かそうとしてもびくともしない。


『あはははははは、逃がさないよ~ん! それとそこの赤い奴、下手に攻撃したら<タケミカヅチ>も巻き添えになるからやめておいた方がいいよ。いやー、重火器が仇になっちゃったねぇ、ご愁傷様』


『このっ……ヤロウ……!!』


 ジェノバの挑発を受けてバルトが悔しそうに睨む。確かにここまで密着した状態じゃ<カグツチ>は攻撃できない。

 自分で何とかするしかない。けれど武器もなく、パワー負けしつつあるこの状況を覆す策なんてあるのか?


 「ここまでか」と諦めかけた時、モニターに<タケミカヅチ>の機体情報が表示されOSが何やら説明を始めた。


『敵機出力上昇、それに伴う本機の勝率二十パーセント以下まで低下。現状では本機及びパイロットの生命維持は極めて困難と判断。状況打開のため凍結していた一部機能の回復を実行します。――両前腕内エネルギーチャージユニット『ヤサカニ』稼動開始。それにより内蔵兵器『ナルカミ』が使用可能になりました』


「ヤサカニ……? それにナルカミ……ってまだ<タケミカヅチ>には武器があるのか!? ――それならまだ勝機がある!」


 絶望の淵に立たされていた所に一筋の光明が見えた気がした。OSが機体の操縦システムを介してナルカミの情報を伝達してくる。

 その武装の大まかな性能を知り半信半疑になる。それは僕が知っている(アサルト)(フレーム)の武器とは思えない仕様だった。


「こうなったら一か八かだ。どのみちやらなければやられる! ヤサカニの状態は……?」


 モニターには<タケミカヅチ>の両前腕部のヤサカニのチャージ状況が表示されている。


『両前腕部ヤサカニのエネルギー充填率百パーセントに到達。――ナルカミ使えます』


「いけるかっ!? それならぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ヤサカニの稼動開始によって機体のパワーが上がったのか、動かなかった操縦桿が動かせるようになった。

 ずっと全力を込めて感覚が無くなり始めていた自分の腕と手にかつを入れ操縦桿を少しずつ前方にスライドさせる。

 徐々に<ガルム>の腕を押し上げていくとジェノバの笑みが消えていくのが見えた。


『この土壇場でパワーが上がっていくだと!? 一体奴に何が起きて……』


「教えてやらないよ! ――<タケミカヅチ>、お前の力の片鱗を見せてやれ!!」


 左腕のヤサカニにチャージされていたエネルギーを掌に集中し解き放つ。

 その特殊兵装ナルカミによってビームソードを装備していた<ガルム>の右腕は破壊され敵の動きが一瞬怯む。

 その隙にパワーが上昇した右腕で拘束を力尽くで振りほどき蹴り飛ばす。


『腕が一瞬で消滅した!? やってくれるじゃないの!!』


「――まだだ! もう一撃食らわせる!!」

  

 スラスターを全開にして敵機目がけて特攻する。それと同時に<タケミカヅチ>の右前腕にチャージされたヤサカニのエネルギーを開放する。


「これで決める……ナルカミィィィィィ!!」


 右手掌に膨大なエネルギーが集中し眩い光が放たれる。

 ジェノバはビームソードで防御しようとしたがナルカミでそれを一瞬で粉砕し<ガルム>の胴体に叩き込んだ。


『ひゃははははははははは!! 今回はオレの負けみたいだな。また殺し合おうや、カナタァァァァァァァァァ!!』


 <タケミカヅチ>の掌から放たれたエネルギーは、<ガルム>の上半身を粉々に吹き飛ばし残った下半身はしばらく直立した後に力なく倒れた。

 僕はその圧倒的な破壊力を前に唖然としてしまう。

 そして落ち着きを取り戻していくと同時に、自分が乗っているAFの性能に対して驚きと恐怖を感じるようになっていた。


「何てパワーだ。これが……シャーマニックデバイスの力……なのか……」

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