八話
……いきなりの展開。
先に言っておきましょう。
作者も予想外だった、と。
言い訳の続きは後書きで。
総合pt250 いきましたね。
入れて下さった皆さんありがとうございます。
感想も初めてもらいました。
本当にありがとうございました。
けれどやはり作者的にはプレッシャーがぁぁぁ!!
み、見捨てないで下さいね!!
あのあとサラたちに別れを告げ、与えられた部屋に帰った。
サラは城を案内したがっていたが、色々なことが起こり過ぎて精神的に疲れているため断ったのだ。
城の案内は明日にしてくれるらしい。
俺はベッドに倒れこむ。
するとすぐに睡魔が襲って来た。
ベッドの頭の上らへんがへこむのがわかった。
……誰かいるのだろうか?
髪を撫でられているようで少しくすぐったい。
「……ん」
ゆるゆると目を開くと紫の瞳が覗き込んでいた。
「あれ、その瞳……」
あのペンダントと同じ不思議な濃淡の紫。
「────きれいだ」
頬が緩み、ふわりと笑った。
すると、目の前の顔が一気に赤くなり、ガバッと俺から距離をとる。
「───っ」
顔を赤くしてこちらを見ている彼女は凄い美少女だった。
絹糸のような細いなめらかな腰まで届く銀の髪に、あの紫の瞳。
年格好は17才ぐらいで俺たちと同じぐらいだろう。
スラッとした体つきに同年代の少女たちよりも幾分か豊かな胸。
同性からでも憧れられるような、そんな姿をしていた。
けれどなぜ彼女は顔を赤く染めているのだろうか。
ゆっくりと上半身を起こしながら、寝起きであまり働かない頭で考える。
そこで、俺は動きを止めた。
自分の言った言葉を思い出してたからだ。
────初対面の女性の瞳を見て綺麗だなんて呟くとか、一体俺はどこのタラシなんだ。
自覚すると本当に自分が嫌になって来た。
けれどいつまでも自己嫌悪しているわけにもいかない。
そういや今更ながらの疑問だが、彼女は一体誰なんだろう。
「えっと、君は……?」
「あ、わ私は始祖精霊だ」
彼女は少し焦りながらもそう答えた。
「始祖精霊とはなんですか?」
「その名の通り始まりの精霊だ。精霊の頂点に君臨する存在であり、根源だ」
やっと落ち着きを取り戻したようで俺の質問によどみなく答える。
「そんな君がなぜここに?」
なぜそのような大物が俺の部屋にいるのだろうか。
「王が持っているペンダントがあるだろう。私はその石のなかで眠っていたんだが、王の魔力によって目覚めたんだ」
彼女は俺が胸にかけているペンダントを指さして言った。
「やっと魔力がたまって実体化出来ると思ったら王は寝ていて暇だったんだぞ」
拗ねたようにそこまで話すとベッドに腰掛けた。
「それはすみません。ところで何故貴方はこの石の中に?」
俺がペンダントの石をつまんで眺めながら問うと彼女の顔がくもるのがわかった。
慌てて俺は言葉を継ぎ足す。
「深い理由があるのなら別に言わなくていいですよ」
「いや、大丈夫だ。話そう」
そうして彼女が語った話はというと。
宝石には精霊の力を封じたり、閉じ込める働きがあるらしい。
彼女が封じられたのは約500年前。
その時彼女が住んでいた森で、ある瀕死の魔法使いを拾ったそうだ。
彼を手当てし、怪我が治るまでにはずいぶんと仲良くなったらしい。
そんなある日のこと。
彼は彼女を不意をうってこの宝石に閉じ込めた。
一緒に暮らしていたら何かと隙が出来る。
その機会を彼は待っていたのだと告げられた。
彼女を見つけたのは全くの偶然らしいが、死ぬと思ったらこんないいモノが手に入るなんてと彼は笑ったという。
それからが地獄だった。
と、彼女は呟いた。
顔を伏せていたから俺にはその表情は見えなかったか、声には自嘲的なものが含まれていたと思う。
彼女は抵抗出来ないほど魔力を奪われて、残った魔力は全部人のいいように使われ、搾りとられていったという。
それだけならまだいい。
大き過ぎる力は、人のよくないものを惹き付ける。
彼女の力は主に生命をほふるために使われたそうだ。
それは彼女かどんなに泣き叫んでも、どんなに訴えても、けしてその声は届かなかった。
それはもう、拷問に近い。
彼女が力を無くし、眠りにつくまで延々と続いた。
このままだと自我を無くし、存在さえ消え去る。
そんな時。
俺の声が届いたらしい。
俺の魔力が流れこむことで彼女は力を取り戻し、実体化出来るほどまでになったという。
普通、精霊が閉じ込められている宝石には魔力を流すことは中の精霊を解放してしまうので禁忌とされている。
そんなことを全く知らない俺だから彼女を助けられたのだろう。
今ではもう、力も何も感知されずに宝物庫の奥深くに眠っていた彼女を。
「……ひとつ、いいですか」
「なんだ」
彼女の表情は相変わらず見えない。
「貴女は彼を好きだったのですか?」
「好いては、いた。けれど恋情じゃない。家族のような………、そんなものだと、思ってた。彼も、彼もそれは同じだと」
当時のことを思い出して感情が高ぶったのか彼女の肩が震える。
俺には彼女の受けた裏切られたときの衝撃、哀しみは想像しか出来ない。
家族同然に思っていた存在にモノ扱いされていいように利用される……
その時、彼女は人を恨んだのか、彼を恨んだのか。
きっと彼女は人を憎んではいない。人々がほふられる様を見て泣き叫んだというのだから。
じゃあ彼を恨んだのか。
それもきっと間違いで。
それならば彼女は彼を思い出したとき、伝わって来るのは哀しみの感情じゃなくて怒りだろう。
ならば誰を恨んだのか。
行き場のない負の感情は何処に行ったのか────残るは自分しかいないのではないか?
俺は彼女を無言で引っ張り、腕の中に閉じ込めた。
後ろから抱えこんでいる状態だ。
彼女は特に抵抗をしない。
「君は、自分を責めていませんか?」
彼女の体が強張るのがわかる。
「……責めるも何も、私が……。私が彼に騙されなければ皆死ななかった。私が皆を殺したんだ。私が彼にも家族と思ってもらえるようにもっと頑張ったら彼もそんな行動に出なかった。私が……」
「はい。ストップ」
自らを責め続ける彼女の口を手で覆う。
何故かとこちらに横目で訪ねる彼女に言う。
「それは結果論でしかありません。その時点で彼が裏切るなんてわからない。それに、貴女が原因ではない。貴女だけが悪いわけじゃない。だから全て自分のせいにして責めては駄目です。そして───俺は貴女のように優しい人を他に知りませんよ」
だから、自分を責めないで欲しい。
誰よりも優しい彼女はきっと、自責の念で潰れてしまうだろうから。
そっと口を覆う手を放すと彼女は泣きそうな声でありがとう、と呟いた。
「けれど、私は中々自分の考えを変えられないよ」
「いいです、それでも。俺の言葉は胸に留めておいてくれれば。でも、誰かを頼ることをして下さい。貴女一人で抱えられるものじゃないでしょう」
彼女はありがとうと再度呟く。
ぽんぽんと頭を叩くとしゃくり上げる声が聞こえた。
俺は彼女にまわした腕に力をこめた。
ずっとひとりで誰にも気付かれずに耐えていたんだろう。
しばらくすると泣き止んだようだったが俺たちはずっと同じ体勢でいた。
「すまんな。いきなり泣いてしまって」
「いえ、俺でもお役に立てたのなら何よりです。でも、会ったばかりの俺なんかに話してよかったのですか?」
「命の恩人だ。話すには十分ではないか?けれど慰めてもらったりして……王にはどれだけ与えられるのだろうな。私には何もすることは出来ないのに」
彼女は申し訳なさそうに言う。
全く、難しく考えすぎだ。
けれど彼女の気がおさまらないのなら、
「では、俺の傍にいて下さい」
誰かが彼女をみていないと心配だ。
なんとなく、そう思う。
「それで、いいのか?それではまた私は与えられっぱなしだぞ」
此方を不思議そうに見やる。
「いいんです。俺は貴女にそうしていて貰いたい。貴女に何か与える権利を下さい」
「なんか、プロポーズみたいだ」
彼女はクスクスと笑いだす。
まぁ、笑ってくれたのだからよしとするか。
「まだお互い名乗っていませんでしたよね。俺はハヤトです」
「精霊に名前は無いんだ。だから名をくれないか?」
彼女は満面の笑みで問う。
「分かりました。……アイリスなんてどうでしょう」
こちらも笑んで返す。
「ありがとう。気に入った。私はアイリスだ。これからもよろしくな、ハヤト」
そう、嬉しそうに告げた彼女は何よりも輝いていてとても綺麗に見えた。
いきなり過去ばらしちゃったんですけど、あの人。
いきなり語りだしちゃったんですけど。
最後の名前を付けるくだりをやりたかったんです。
その為には……ばらすしか、なかった。
読んでて「!?」となった人、すいませんでした。
ていうか、書いててこの話突っ込みたいところが多々あるんですけど!!
初対面の人を抱きしめるなよとか、それでお前は抵抗しないのかとか。
……そういう人たちなんです突っ込まないで下さい。
話が終わる。
では長々と失礼しました。