三話
登場人物が中々揃わないです。
精霊に任せた少女の方を見ると崖から少し落ちたところでふわふわと浮いていた。
俺はそんな少女に声をかけ、手を伸ばす。
「あぁ、すみません。掴まってください」
「……あ、はい」
彼女は応えると、俺の手に自分の手を重ねた。
俺は彼女の手をしっかりと掴むと崖の上に引き上げ、抱き止める。
間近でみた彼女は可愛い容姿をしていた。
金髪に空を映したような透き通った青の瞳。雪のように白い肌にぷっくりとした桜色の唇はよく映えている。
そんな彼女の白い顔だが、薄紅に染まっていた。
俺はそんな彼女の様子を、多分男に耐性がないからだろうと推測した。
今は抱き止めているので体が密着しているからきっとそのせいだろうと。
よく見てみると彼女の身に付けているものの装飾品は豪華だった。
お嬢様のようだが、仮にそうだとしたら何故こんなところに一人でいるのだろうか。
疑問は尽きないが男に耐性がないのだったらこの状態のままでいるのは悪いだろうと思い、彼女から二歩ほど離れることにした。
「助かった。助太刀サンキュな」
声が聞こえた方を向くと、件の男がいた。
彼は俺と同じぐらいの年頃でどこかの高校の制服と思われるブレザーを着ている。
おそらく彼は勇者だろう。
事前に神から勇者を送ったばっかりだと聞いていたから。
彼を見てみると、なるほど、勇者だというのも頷ける。
日本人にしては色素の薄い茶色の髪に黒の瞳。
意志の強そうなキリッとした目をしている。
顔立ちも整っており、まさに勇者様といったところだ。
オーラからして光輝いて見えるのは俺が彼が勇者だと知っているからだろうか────多分そうだろう。きっと。
しかし……、勇者と魔王を同じ場所に送るなんてあの神は一体何を考えているのやら。
「いえ、俺が勝手にでしゃばっただけですよ」
そう言って俺は嫌味にならないほどの微笑を向ける。
「そういや自己紹介がまだだったな。俺は櫻井響。ヒビキと呼んでくれ」
彼は笑いながら手を差し出してきた。
俺も同じく名乗りながら握手を交わす。
「俺は神崎颯人。俺もハヤトでいいです」
そう言うと、ヒビキはここからが本題というように真っ直ぐ俺の目を見て聞いてきた。
「なぁ、ハヤト。その服装を見るからにお前は俺とおなじ────」
先の言葉の予想がつくので彼が言い終える前に肯定をする。
「えぇ。こちらの人からみた異世界人です。そういうヒビキは勇者ですよね?」
彼はちょっと不意を突かれたように目を見張った。
「よくわかったな」
「あのお爺さんから先に勇者は行っていると聞いてましたので。あ、俺は勇者の補佐みたいなものです」
本当は補佐を付ける予定はなかったらしいのですがなにやら手違いで俺を死なせてしまったから急遽付けることにしたらしいです、と付け加える。
これで何故神が補佐のことを告げなかったのか、疑問に思われることはないだろう。
我ながらよくも悪びれもなくスラスラと嘘がでてくるなと思わなくもない。
しかしここで、実は俺、魔王です。なんて告げれるわけがないだろう。
そんなことを言ったら殴りかかられる。
それに勇者の補佐ってことにしたら衣食は簡単に手に入れられるはずだ。
なぜなら、森の中で襲われている少女を助けるなんてお約束をしたらつぎは、少女の護衛かなんかがきて、お礼をしたいからとか、実は勇者を探してました、とかで少女に連れられて客としていい待遇を受けられるはずだ。
その証拠に少女の格好はお金持ちのお嬢様っぽいし。
────まぁ、そんな打算で助けたわけではないけれど。
俺が付け加えた言葉にヒビキは少し苦笑をした。
この反応、もしかして─────
「なんだ。俺も同じだぜ。あの爺さんに間違えて殺しちゃったとかぬかされてここにいる」
……やっぱりか。
あの爺さんも懲りないようだ。
まさか勇者も同じ理由だったなんて。
てっきり召喚に応じて勇者に相応しい人を選んで送ったのかと思っていたのに。
ヒビキと話していると精霊の声が聞こえた。
〝ねぇ、王。私たち、役にたったかしら〟
〝役に立てたかしら〟
そう言えば彼女たちにお礼を言うのがまだだった。
「役に立ってくれましたよ。助けられたのは貴女たちのおかげです。本当にありがとう」
その言葉に彼女たちは本当に嬉しそうに笑った。
〝やったわ〟
〝やったわ〟
〝役に立てたわ〟
〝お礼も言って貰ったわ〟
精霊たちは踊るようにくるくる回りながら喜んでいるようだった。
彼女たちの行動につい笑みが零れるが、視線を感じ、ヒビキを見てみると、彼は不思議そうに此方を見ている。
「ハヤト?誰と話しているんだ?」
「聞こえないのですか?」
「一体何の───」
彼の言葉は途中で遮られた。
黙っていたもうひとりの人物、助けた少女がいきなり声を張り上げたからだ。
「ゆ、勇者!?勇者と言いましたか!?あなたたちは勇者なんですか!?」
「そうですよ。正確にはヒビキが、ですけど」
どれだけ反応が遅いんだと思うが、彼女の反応からしてこれは勇者を探していたなと思う。
「勇者様、私たちはあなたを───」
しかし少女の声も妨げられる。
後ろからガチャガチャと鎧が歩く音、つまり鎧を着た兵士たちがやってきたからだ。
予想どうりのお約束的展開だなとある意味感心すらする。
「おい!お前ら!姫様から離れろ!!」
兵士の一人がそう声をあらげ、他の面々も剣を抜いた。
ヒビキは身構え、少女はどこか焦ったように声を上げた。
「待ちなさい!この方々は勇者様です!彼らに剣を向けることはゆるしません!!」
さすが王家に連なる者。
声に威厳があった。
少女の言葉を受け、兵士たちは一斉に剣を直した。
少女はそんな兵士たちを満足そうに見ると、此方に向き直り告げた。
「申し遅れましたが私はラガリア王国、第一王女、サラ=レイル=ラガリアです。私たちはあなたたちを歓迎いたしますわ」
笑いの要素が全く入ってくれないのは何故か。
主人公がテンション高い奴じゃないから?
や、だって祐希のほうはまだあったし……
すいません。作者の力量ですよね
でもボケられる人が中々いないんですよ。
皆真面目だし、裏設定考えてたらどんどんシリアスに。
一話を読んだ人から詐欺だと思われるくらい重くなったらどうしようと考えている作者。
が、頑張ってみます。