十二話
やっとの更新。
内容は今までどうりグダグダですが。
「なぁ、やっぱりお前の俺の扱いが下がってきたように思えるんだが」
夕食時、ヒビキが急にそんなことをいいだした。
一緒に食べているメンバーは俺、ヒビキ、サラだ。
「何をいきなり。そんなことあるはずないじゃないですか。俺は勇者である貴方を補佐する身。敬いこそすれ邪険に扱うなど」
「うん。俺のエビフライとりながら言うことじゃねぇよな」
そう言いながらヒビキは自分の皿の上を指さす。
ちなみに食事の内容は元の世界とあまり変わらなかった。
同じ食材を使っているのかと聞かれたら知らないけれど。
「これは貴方がメタボにならないように仕方なくとった措置です」
「それぐらいでなるかよ」
「……知っていますか。メタボ、正式にはメタボリックシンドロームは男性の腹囲85センチ以上、女性90センチ以上、それに加え糖尿病、高血圧、高脂血症のうち二つ以上をあわせもつ状態のことをさします」
「……それで?」
「それだけです」
「ちょっ!何がしたいん──」
何やら抗議の声を上げたヒビキの言葉を遮り、サラに話しかける。
「さて、食事も終わったことですし幾つか質問してもいいですか、サラ」
「うん。いいよ」
俺の言葉にサラは笑顔で了承。
この子はいい子だ。
年齢は対して違わなかったりするが。
「サラまで無視!?」
ヒビキがうるさい。
騒ぐんなら余所でやってくれ。
「勇者と魔王についてです」
それを聞いたヒビキは自分も気になっていたのか納得していない様子ではあったが声を収めて話を聞く体勢に入った。
「魔王の話をしたとき、かつて、と言っていました。魔王は前にも存在していたんですよね?」
俺の断定的な質問にサラは頷く。
「うん。今のは九代目の魔王になるわ。魔王と言うのは魔に属するもの───魔力を持っている者なかで一番強い者に与えられる称号なの」
サラの語りに緊張感など露ほども見えない。
結構真面目な場面だと思うのだが、子どもが童話でも話す感じだ。
それでいいのか、王女。
「魔力を持っている奴からだったら魔王は人だったりするのか?」
「ううん。それはないわ。魔族と人間じゃ魔力量が桁違いだもの。人が魔王になることはあり得ないの」
あり得ない……あり得ないときましたか。
常識から考えて今回のケースは想定外。
なんたって神の手違いなんだからな。
しかし、断言出来るほど魔族と人間の魔力のスペックに差があるわけか……。
「魔族と人間は敵対しているわけですよね?魔族のほうが魔力が多いのに人間は何故滅びないのですか?」
「個体数の差よ。どんなに個人が凄くても数の暴力には逆らえないから」
なるほどね……。
関係ないがよくサラが数の暴力なんて言葉知っていたな。
そこでヒビキが口を挟む。
「魔王ってどうやって選ばれるんだ?」
俺は気がついたらなっていたけれど……。
どうやったら誰が一番強いなんてわかるのか。
「闘って決めるらしいよ。トーナメント式で」
「それは……」
原始的だった。
バトルロワイヤルよりは平和的ではある。
「普段なら魔王が死んでからまた新しい魔王を決めるんだけど、今回は特別みたいだね。前の魔王がいるにもかかわらず魔王になったんだもん。圧倒的な力、そこに存在するだけでわかる強さ。闘わずとしてわかるわ。あまり力に敏感ではない人間でもね」
……へぇ。
あの爺さんよっぽど怖かったのだろうか。
俺そこまで頼んでないよな。
まぁ爺さんは置いといて。
「ヒビキはそんな凄い奴に喧嘩売ったんですか」
「なんだろう。ハヤトの言葉からビシバシと険を感じるような気がする」
ヒビキは俺から視線を逸らして喋る。
「気がする、じゃないですよ。危険になったら俺はヒビキを売って逃げますからね」
「めちゃくちゃ堂々と宣言したな。仮にも魔王を倒すために呼ばれた奴のセリフじゃねぇ」
「いや、俺被害者ですし。あの神のうっかりの」
そう言うとヒビキは変な顔をした。
「……あれ?俺はあの神に『間違って殺してしまったが……。ちょうどいいことに君には勇者の素質があるのう。ヒビキ君、勇者となって世界を救ってくれ。大丈夫!君なら出来る!!』って言われたから勇者やってんだけど……?」
これは……。
ヒビキ、簡単に爺さんに乗せられてるな。
いくら初対面で老人だからと言って油断してはいけない。
どんな大義名分があったとしても間違って殺されたのは事実。
未来ある若者の命を奪った奴に気を許すから騙されるんだ。
それにしても、たとえ神だからといってあの爺さんに騙されるとは、ヒビキは大丈夫なんだろうか。
将来が果てしなく不安になるんだが。
「……え?何?その可哀想なものを見る目」
「………。いえ、何でもありません。話を続けましょう。魔族の見分けかたなどはありますか?」
本気でわかっていないヒビキを放置。
構っている時間が無駄だしな。
「おい、気になるんだが」
まだ何が言っているがサラも気にせずに口をひらく。
「魔族ね。魔族は見掛けは人間とかわらないわ。でも、目に白目がないの。だから結構分かりやすいと思うよ」
「……聞こうや、人の話」
いじけてる。
ヤバい。楽しい。
「では勇者の話に移りますが、勇者はヒビキで初めてなんでしょうか」
「そんなことはないわ。ヒビキさんは特殊だけど、今までは王が募集をかけて大会の優勝者が勇者となって魔王を倒しに行っていたの」
まだこの国のことはよく知らないがこの国からしか勇者はでないのだろうか。
他の国も存在するはずだろう。
俺の顔を見てそんな考えを読み取ってくれたのかサラが解説してくれた。
「勇者は国に一人ずついるよ。それで、魔王を倒した国は国の発言権とか政治的立場とかがますのよ」
ニコニコ顔で言ってくれたサラ。
勇者に言っちゃ駄目なんではないだろうか、そういうことは。
どうしてここまで国にいい待遇をされるか不思議だったけれどようやく合点がいった。
魔王が魔族を率いてやってくるからなんて建前ではないだろうか。
「……あれ?何でヒビキさんいじけてるの?」
気付いてなかったんだね、サラ。
それはある意味俺よりも酷くないか?
何故にエビフライ……?
インスピレーションです。