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僕が馬鹿だったと、

「おと……さま……お、かあさ……ま……」

「ああメリッサ……!」

「よくぞ、よくぞ戻ってきてくれた!」


 夫人は泣き崩れ、伯爵もまた涙声だ。言葉をかけながら、妻と娘それぞれの肩に手を置く。

 メリッサは駆けつけた医官、神官からの診察を受けている間もどこかぼんやりとしていて、それは報告を受けたアンナマリア殿下とルナリアが急ぎやって来るまでそうだった。


「わたし、は……死んだのでは……」


 伯爵夫妻が席を外し幼なじみの四人となった部屋で、ぽつり、こぼれたつぶやき。


「あの日私たちはあなたに会いに来ていた。偶然とはいえ私が居合わせたんだ、死なせるわけがない」

「また会えてうれしいわ、メリッサ」


 言って殿下は、クッションに支えられ身を起こしたメリッサを包み込むように抱き締め、ルナリアは涙を浮かべて微笑みかける。


「出来うる限りのことはしたつもりだったけど、それでももうずっと眠ったきりだったから……」


 殿下の微かに震える声は、しかし次の瞬間には強さを取り戻す。


「どうにもならないと決めつける前に、私に言いなさい。オスカーの一人くらい消してあげるから」


 叱りつけるような冗談とも本気ともつかない言葉に、僕は当然何を言うことも出来ない。しかしメリッサは瞳を揺らし、やがてそれは僕を捉える。

 決して視線が結ばれたわけではない。それでも、逸れながらでも僕を見てくれたことに震えが走る。


「オスカー様、は、ご結婚、を、」

「してない!」


 恐る恐ると紡がれた声を咄嗟に遮った。


「してないよ、そんな話はそもそもなかった。なかったけど、縋られて突き放せなかった僕が全部悪い、馬鹿だった」


 僕こそがメリッサに縋りつきそうになって、だけど許されるはずもないと堪える。


「僕が愛しているのはメリッサだ。その気持ちを違えたことはない。……今更何を言っても言い訳にしかならないけど」

「それでも口にしなければ伝わるものはないわ。メリッサの体調を見ながらお互いに話すべきよ」

「それぞれの自己完結の諦めが今回の件を招いたんだと、もう自覚しているでしょうオスカー。まあでもメリッサが嫌だと言うなら仕方ない、時間を置くもよし、切り捨てるもよし、私が許す」


 冗談めかしてにっこり笑みながら怖い選択肢を持ち出す殿下は、アンリー、とルナリアに窘められ肩をすくめる。


「……ききたい、です……」


 医官からも神官からもひとまずは安心だとの言は得た。しかし顔色は透けるように白い。

 話すのなら今聞かねば落ち着かないといった様子のメリッサだったが、さすがに今日は身体を休めてほしいとの周囲の声に、スープを一杯ゆっくり飲んだ後は気を失うように眠りに落ちた。

 あの女を排除したことだけは先に伝えたから、少しは安心してくれただろうか。


 これまでが眠り続けるメリッサを見守り続ける日々だったために、目を覚ましてくれるか不安でたまらなかったものの、翌日には昨日より幾分かはマシに見える頬の色をしたメリッサの顔を見て、腰が抜けるほどに安堵した。

 そしてアンナマリア殿下の話を主体に、僕とメリッサそれぞれの立ち位置から見た状況、感情を共有していった。

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