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心待ちの再会



「私はエリー・キャンベルの罪を告発し、不当に汚されたメリッサ・シルドの名誉を、その潔白を証明しよう!」


 突然の出来事に招待客はざわめいた。

 声を張り上げ宣言する僕を、エリー・キャンベルは呆けたように見上げる。理解が追いついていない顔だ。唇は笑みなのかどうかもわからない形に歪んで、青い瞳がゆっくりと瞬きに隠れる。


「ご歓談中お騒がせして申し訳ございません、フェオータ侯爵が次男オスカー・ラグラスと申します。少々この場をお借りしてもよろしいでしょうか」


 続く周囲へ向けての僕の台詞に、エリー・キャンベルは言葉にならない声を発しては口を閉じ、きょろりと目だけで辺りを窺う。


「オスカー・ラグラスの要求、許可しましょう」


 凛と響く声が応じた。その場の視線が僕たちから声の主へと移動する。


「第一王女アンナマリアが見届けます」


 悠々とした足取りで現れたのは、濃い金色の髪を結い上げた濃紺のドレスが優美な女性。名乗りの通り、この国の王女にして僕とメリッサ共通の友人であるアンナマリア殿下だ。


「ありがとうございます、殿下」

「構いません。メリッサ嬢は我が友人、彼女の悪評が不当なものだと証明されるなら、これほど嬉しいことはない」


 王族の許可により会場は静まり返る。

 ここまでは単なるパフォーマンス。公式行事の場を騒がせるのだ、事前に相談し許可は取っている。それもアンナマリア殿下は誰よりも前のめりだった。


 王女に見据えられたエリー・キャンベルは頬をひくつかせながらも、無垢な少女の顔をして小首を傾げる。


「オスカー様? 王女様? これは何かの余興ですか?」


 瞬きをするたびに、本気で状況に戸惑った様子で怯えまで滲ませる。

 僕は目の当たりにするその変化に目を眇め、苛立ちと不快感を一息に飲み込んだ。


「心当たりはないみたいだけど、オスカー卿。彼女と、そして皆様方のためにも説明してもらえるかな?」

「もちろんです。皆様には私たちに起きた事件の、その事実を知っていただきたいと考えております」


 ざわりと空気が揺れる。約一年前に起きた事件をそれぞれに覚えている証拠だろう。

 当時不祥事は秘されるべきと考えていたのに、記憶に留めている者がいればこそ、あえて人前で事実を暴くことに効果はあると思えた。


「まず最初にこれだけ言わせていただきたい。メリッサ・シルドは無実です。私たちの婚約は最終的に解消となりましたが、それは愚かな私の間違いであり、彼女を追い詰めた私の罪です」


 エリー・キャンベルの手が、縋りつこうとしてかこちらに伸ばされる。しかし僕が避けるまでもなく、その背後に控えていた黒髪の侍女が動きを封じる。驚いて振り返ろうとするエリー・キャンベルだが、それすら許されない。侍女の正体はルナリア・カレスという、アンナマリア殿下の専属護衛も務める騎士団員だ、抵抗出来るはずもない。


「二年ほど前、婚約者だったメリッサ・シルドに嫌がらせを受けているから助けてほしいと接触してきたのが、そちらのエリー・キャンベル嬢でした」


 僕は静かに彼女を見据えた。


「この中にも現場に居合わせた方もおられるかと思いますが、彼女はパーティーでは飲み物をかけられ、茶会で毒を盛られかけ、さらには階段から突き落されました。すべてメリッサの手によるものです」


 何度も震えて泣きだしそうなエリー・キャンベルを見てきた。その一方で、同じくらい、それよりもっと顔色を失ったようなメリッサも見てきた。


「そう彼女は主張し、確かにそのそばには必ずメリッサがいた。だけど決定的瞬間を目撃したことは一度だってないのです」


 ずっと引っかかっていたことだった。だからメリッサが本当にそんなことをしたのか、彼女の証言は正しいのか、疑っていた。


「だけど見たと言う者もいたんでしょう? だからメリッサ嬢は謹慎処分となった」

「そうです。しかしながら今一度問いたい、あなたが目撃したのはメリッサがそうする場面だったのか、エリー・キャンベル嬢が悲鳴を上げ被害を訴えている場面だけではなかったのか」


 目撃証言が増え、メリッサ自身からも明確な話を聞けず、僕は流されるようにそれを受け入れざるを得なくなった。

 それでもしっかり信じて、諦めずに、何を話してくれなくともそばに居続ければ……メリッサは死なずに済んだのかもしれない。

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