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不幸体質の俺、魔王退治に巻き込まれる〜おのれ性悪聖女と悪魔の子(♀)、可愛いからって なんでも許されると思うなよ!〜  作者: 鈴木 桜
Ⅳ 倒せ魔王、掴み取れ明日!

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最終話「別れ、そして……」


「おはよう、明智くん(・・・・)!」


「おはよう、井野口さん(・・・・・)


 あれから数日。

 俺とチカちゃんは、ただの幼馴染に戻った。






 あの日。

 『魔王』を封印すると、チカちゃんも一緒に消えてしまった。


 彼女はどうなってしまったのか。

 気にはなったけれどそれどころじゃなかった。

 『傀儡(くぐつ)』にされていた人、駅前で眠らされていた人。全員を【回復(ヒール)】させる仕事が残っていたからだ。

 ラフィーを手伝って全ての人を元通りに【回復(ヒール)】させる頃には、朝日が昇っていた。


 そこからは大騒ぎだったみたいだけど、俺たちはトンズラさせてもらった。

 事情を聞かれても答えようがないからだ。


 あの茶碗と刀は、ラフィーが持っている。


「普通の人間が持つべきものじゃないのよ。井野口さんみたいに、その『魔力』に()せられて、利用されてしまうわ」


 そう言って。




 それから、俺たち三人はアパートに帰った。

 そして、眠った。

 学校をサボって、三人で川の字になって。泥のように眠った。

 疲れ切っていたんだ。


 数時間後。

 不思議なことに、三人とも同時に目が覚めて。

 笑いがこぼれた。


 俺たち三人の最後の時間は、今日までの日々を思えば信じられないくらい穏やかなものだった。

 ちなみに、俺の『幸運』は『777』まで戻った。

 平均よりも多いらしい。


「これまで苦労した分、これからは幸せに生きろってことよ!」


 ラフィーが笑っていた。




 その、数十分後。


「それじゃあ、私たちは帰るわね」


 遅めの昼食を食べて食器を洗い終わったところで、ラフィーが唐突に言った。


「そんな急に……」


「茶碗を神殿に持って帰って、完全に『魔王』を消す方法がないか調べてもらおうと思うの」


「なるほど」


「ここにあると、いつまた人間の欲を嗅ぎつけるか分からないから。急ぐべきだわ」


「そっか」


 俺が気のない返事をしていると思ったのだろう。

 ラフィーの眉間に(しわ)が寄った。


「『魔王』は封印したけど、消えたわけじゃないのよ! わかってるの?」


「わかってるよ」


「じゃあ、なんでそんな顔してるの?」


「そんな顔って……」


 今度はリアンが俺の顔を(のぞ)き込んだ。


「寂しいのか?」


「……」


 なんとも答えようがなかった。

 寂しくないのかと言われれば、答えは『いいえ』だ。

 二人と別れるのは寂しい。


 だけど、それを口に出してしまえるほど、俺は素直じゃない。


「……私は、寂しいわよ」


 ラフィーが言った。

 少し、声が震えている。



(あるじ)さん>


(……なんだよ)


<ヘタレのまんまで終わるつもりか? ラフィー(ねえ)さんの気持ち、わかっとるやろ?>


(……だからって、俺たちは一緒にはいられない。そうだろ?)


<それでも、や>


(それでも?)


<ちゃあんと、伝えた方がええ。そういうもんや>


(……うん)



「ラフィー」


 名前を呼ぶと、青い瞳が俺を見上げた。

 寂しい。恋しい。愛しい。

 そう訴えかけてくるようだった。


「俺も寂しい。本当は、ずっと一緒にいたい」


「うん」


 リアンが、静かに玄関の外に出ていく姿が見えた。

 気を遣わせちゃったな。


(ありがとう)


 心の中でリアンに礼を言いながら、俺はラフィーを抱きしめた。


「また会えるのか?」


「わかんない」


「……俺は会いたい」


「私もよ」


「会いにきてくれ。俺は【異世界旅行(トラベリング)】は使えないから」


「ユーキがどうしてもって言うなら、来てあげないこともないわよ!」


「じゃあ、どうしても」


 ──ぎゅ。


 ラフィーを抱きしめる腕に、力を込めた。


「会いにきてくれ、必ず……!」


「わかった、約束する」


 それ以上は、何も言えなかった。

 ただ、お互いの温もりを分け合って。


 ただ、お互いが『ここにいる』ってことを確かめ合った。





「それじゃあ、またね!」


 俺の腕を振り切るようにして、ラフィーは駆け出した。

 といっても、せまいアパートの中のことだ。

 数歩で玄関まで辿り着いた。




「大好きよ、ユーキ」




 その言葉だけを残して、ラフィーは行ってしまった。


 ──ドタッ。


 そのまま、リビングに大の字になった。

 この部屋で一人っきりになるのは、久しぶりだ。


(ちゃんと、言えなかった)


 好きだ、って。

 情けない。


(……『聖剣(ハルバッハ)』?)


 『このヘタレ!』って飛んでくるはずの関西弁が聞こえない。


(そっか。ラフィーがこの世界からいなくなったから)


 『聖剣(ハルバッハ)』ともお別れだったのか。


(ちゃんと、さよなら言えばよかった)


 俺は、そのまま再び眠った。

 寂しさを紛らわせるために、ひたすら眠ったんだ。





 とはいえ。

 俺は真面目な勤労苦学生だ。

 次の日には、ちゃんと登校した。


 そしたら、チカちゃんがいた。


「おはよう!」


 何も覚えていなかった。

 『魔王』を復活させたことも。

 俺に好きだと言ってくれたことも。


 ほんの少しだけ、胸がチクリと痛んだけど。

 これでよかったと思う。


 俺たちは幼馴染で。

 俺はチカちゃんのことが好きだった(・・・)


 それでいいんだ。







 ──2年後。


 


「今日は転校生を紹介するぞ!」


 朝のホームルームで、担任の溝尾(みぞお)先生が言った。

 懐かしいな。

 あの二人が転校してきた日のことを思い出す。


「ロシアから来たラフィーさんと、フランスから来たリアンさんだ」


 そうそう。

 こんな感じで、それから教室が騒がしくなってさ。


(って!!!! なんでだよ!!!!)


 叫び出さなかった俺を褒めて欲しい。


(あるじ)さん、落ち着きぃや>


(これが、落ち着いていられるかよ!)


<なんで?>


(なんでって! なんで急に転校してくるんだよ! 絶対に何か企んでるだろ!)


<ははは!>


(笑い事じゃねえ! って、『聖剣(ハルバッハ)』!?)


<久しぶりやなぁ。こうして話すんは>


(話すのは、って)


<ワシは、ずぅっと一緒におったよ。主さんと>


(そっか……)



「席は、明智の隣が空いてるな」


 なんで、俺の両隣に空いてる席があるんだよ。

 不自然だろうが。


「よろしくね」


 ニヤリと笑うロシア風美女。


「よろしくな」


 ニヤリと笑うイケメン・パリジェンヌ。




「……よろしく」




 俺が返事をすると、二人の表情が一変した。

 可愛らしい、(ほが)らかな笑顔。




 だから、最初っからその顔してくれよ……!




 魔王退治に巻き込まれた不幸体質の俺と、性悪聖女と悪魔の子。

 俺たち三人の、新たな冒険が始まる。


 そんな予感がした──。








 完








==========


あとがき


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

初めての現代ファンタジー、しかも異能バトル(?)ものでした。

楽しんでいただけたでしょうか?

私は楽しかったです!


ちょっとでも面白いなあと思っていただけましたら!

感想を頂けますと嬉しいです!

また、★評価をいただけますと幸いです!

↓↓↓↓↓

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