第21話「貫け必殺の神速剣、敵のスキルを打ち破れ!」
<【神足剣】は、神速の突き技や>
(神速?)
<めっちゃ速いってことや>
(おお!)
<しかも、『物力』がたくさん残っとる敵であっても『魔力』に直接攻撃ができる>
(すげぇ! まさに必殺技!)
とはいえ、速いだけのただの突き技。
だからこそ、一つ目の必殺技って感じだ。
<ただし! 『幸運』を『230』消費する>
(『230』!?)
<ついでに言うと、剣のコントロールは使用者次第や>
(つまり、俺が下手くそなら当たらないってことか)
<その通りや>
(『230』か……)
──ピコン!
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聖剣
対魔攻撃:■■■□□
対物攻撃:■■□□□
幸運:825
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『聖剣』の『幸運』は、ラフィーの『幸運』と連動している。
最大で1000近くあるはずが、既に『825』ってことは、俺たちと別れてからもラフィーはスキルを使っているんだ。
こっちで俺が『230』も消費していいものか……。
<どないする?>
(使おう。早く大将を倒して二人と合流したい。それに……)
<大将の『物力』を削るんは、気が引けるか?>
『聖剣』の言う通りだ。
『物力』を削るってことは、物理攻撃を加えると言うことで、即ち怪我をさせるってことだ。
(ラフィーとの合流が不確定なんだ。大将に怪我をさせずに済むなら、そうした方がいいと思う)
<賛成や。主さんの今の技術なら、【神足剣】当てられると思うで>
(それに、突き技ならチカちゃんを背負ったままでも出せる)
<せやな>
方針は決まった。
あとは、やるだけだ。
<ぬいぐるみはどないする?>
(……考えがある)
<よっしゃ! やったれ主さん!>
「チカちゃん」
「ん」
「ちょっと、激しく動くかも。我慢できそうか?」
「できる」
「よし。すぐ終わらせるから。もうちょっと我慢してくれ」
チカちゃんがしっかり俺に捕まっていることを確認してから、両手で『聖剣』を構えた。
<ミラ・クル!>
再びぬいぐるみが襲ってくる。
今度は、避けなかった。
(俺の読みが確かなら……)
──ポコン! ポコン! ポコン!!!
(このぬいぐるみに、殺傷能力はない!)
俺の予想通りだった。
ぬいぐるみは俺の身体に体当たりはするが、全く痛くない。
避ける必要がなかったんだ。
(この空間は、たぶん女の『傀儡』のスキルだ)
──数日前、リアンと交わした会話を思い出す。
『「傀儡」には、スキルを持ってる奴がいる」
『この前の、先生に取り憑いてたやつは持ってなかったよな?』
『そうだ。ある程度の力のある「傀儡」だけがスキルを持ってる』
『たとえば、どんなスキルなんだ?』
『いろいろだ。それこそ、燃やしたり凍らせたり』
『あの身体能力にプラスしてスキル持ちが来たら……しんどいな』
『ああ。だけど、スキルは必要以上に恐れるなよ』
『どういうことだ?』
『僕やラフィーさんが使うスキルと同じで、「幸運」……「傀儡」の場合は「魔力」を消費する。それに、世界のバランスを崩すようなスキルはあり得ない』
『なんでだ? 「魔王」は、「神」のバランスの外にある存在なんだろう?』
『力の元は「幸運」だからだ。……だからこそ、「魔王」はバランスを崩したいんだろうな』
『なるほど。今はまだバランスに縛られているから、バランスなんか関係なく自分の思い通りにできる世界をつくりたいってことか』
『その通りだ』
『「傀儡」のスキルも、無茶苦茶なやつはない。威力に応じて「魔力」も消費していくから連発もできないってことだな』
『そうだ。それを前提に戦い方を考えるんだ』
『わかった』
この空間を作り出したのが『傀儡』のスキルだとすれば。
空間を生み出し、そこに敵を閉じ込めるスキルなんだと思う。
さらに、空間の中にあるものを動かすこともできる。
そこに殺傷能力まであるのは、バランスが悪すぎる。
<よお見破った! さすが主さんや!>
(だろ?)
そして、今俺が戦っている敵は、たぶんスキルを持っていない。
──ピコン!
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モゴルゴル:魔王の傀儡
魔力:289
物力:395
幸運:0
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こいつの『魔力』は先生に取り憑いていた奴よりも、少ないからだ。
(やれる!)
ぬいぐるみの群れの向こうに、動きを取れずにいる敵が見えた。
俺が攻撃することも避けることもしないから、とっさに動けないのだろう。
(チャンスだ!)
動かない俺に焦れたのか、さらにぬいぐるみが追加される。
──ポコン! ポコポコ! ポコン!!!
敵が見えなくなった。
動かないなら、ぬいぐるみをめくらましとして使おうというわけだ。
(集中しろ)
訓練を思い出せ。
目隠しをして袋叩きにされた日があっただろう。
全く無茶な訓練だが、こういう戦いもあるってことがちゃんとわかってたんだ。
『神経を研ぎ澄ませろ。ちゃんと感じられるはずだ』
──ピリ!
『敵の殺気を感じ取れ!』
(わかってるよ、リアン!)
──ピリッ! ピリリッ!!!
(そこだ!)
──ダッ!!
訓練で鍛えた脚力で、敵の気配のする方へ一気に抜けた。
「見えた!」
真正面、ドンピシャだ。
<ここや!>
「【神足剣】!!!!!!」
俺の声に応えて、俺の足と剣に光が灯る。
白い光は熱を生み、熱は速さを生む。
俺の身体と剣が、神速まで加速する──!
「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
両手で握った『聖剣』で、真っ直ぐに。
敵の胸を、貫いた!!
<ギャーーーーーーーー!!!!>
敵の断末魔と共に、周囲の景色がぐにゃりと歪む。
この空間は、この敵の存在を条件に存在していた。
条件付けによって、バランスをとっていたということだ。
「これが、『傀儡』のスキル……」
必要以上に恐れる必要はない。
確かにそうだ。冷静に対応すれば、勝てない相手じゃない。
崩れる景色の中で、井野口を正面に抱き直す。
神速に巻き込んでしまったからだろう。気絶している。
「ごめんな」
巻き込んで。
だけど。
(俺が、守った)
あとは。
(早く二人に合流するんだ)
『傀儡』は3体。
あっちの二人も、女の『傀儡』のスキルで他の空間に閉じ込められているだろう。
もう1体は強さも持ってるスキルもわからない。
(早く!)
崩れた景色の向こうに、ようやく倒壊したアパートが見えた。
「リアン!!」
聞こえたのは、ラフィーの悲鳴。
と同時に、アパートの前に二人の姿を見た。
血を流して倒れるリアン。
その右足と右腕が、ない──!
「ラフィー! リアン!」
力の限り叫んだが、ラフィーには聞こえていないらしい。
俺は井野口を抱えたまま走った。
──ドンッ!
「いってぇ!」
何かにぶつかった。
「なんだ!?」
透明の、壁?
──ドンッ! ドンッ!
何度か体当たりするが、壁はびくともしない。
ここから先に進めない。
「ラフィー! リアン!」
──ブワッ!!!!
敵のスキルだろう。
黒いモヤが、二人に迫る。
「ラフィー!」
俺の叫びは、届かない──。




