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不幸体質の俺、魔王退治に巻き込まれる〜おのれ性悪聖女と悪魔の子(♀)、可愛いからって なんでも許されると思うなよ!〜  作者: 鈴木 桜
Ⅲ 蹴り飛ばせ、運命!

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第18話「訓練の成果と修羅場、俺は優柔不断じゃねえ!」


「落ち着け」


「は? 落ち着いてるけど」


 『炎帝の剣(エウリリス)』から立ち(のぼ)る炎が、ゆらゆらと揺らめいている。

 怒っている。

 とてつもなく、怒っているのだ。


「違うんだ。泣かせたくて泣かせたわけじゃなくて」


「泣かせたんだろう?」


「そう、だけど。そうじゃなくて。これは、その……」


 全身の汗腺(かんせん)から脂汗(あぶらあせ)が吹き出しているのがわかる。

 これは、マジでヤバい。




「……死ね」




 ガチトーン!

 俺、死んだかも。


<アホ! はよう、ワシを呼び出さんかい!>


(でも!)


<ラフィー(ねえ)さんが落ち着いたら、ちゃんと止めてくれはるわ。コレはチャンスやと思え>


(チャンス?)


<ガチギレのリアン(ねえ)さんとやり合えるんや。特訓の成果、確認しとこ!>


 『しとこ!』ってノリじゃねえだろ!


(マジで死ぬって!)


<ほれ! 急がんと、来るで!>


 ──ヒュンッ! ザッ!


 再び風切り音。

 ()けたが、間に合わなかった。


 左肩が焼けるように熱い。


(軽く(かす)っただけでこれかよ!?)


<そら、天下の『炎帝の剣(エウリリス)』パイセンやからな!>


(俺、やっぱり死んだんじゃ……)


<とにかく、ワシを呼び出せ! 話はそれからや!>


(死んだら元も子もないもんな!)



「『聖剣(ハルバッハ)』!」



 俺が呼ぶと、右手に白く光る剣が現れる。


<今日は、音声ガイドはなしや! 思う存分、やってみい!>


(死にそうになったら、なんとかしてくれよ!)


<そら、ワシには無理やなぁ。ただの剣やもん。気張りぃ!>


(くっそぉ!)



「死ね! 死ね! 死ね!」


 ──ビュン! ビュン! ビュン!


 怨嗟(えんさ)の声とともに繰り出される鋭い斬撃を、とにかく避ける。

 そもそも『聖剣(ハルバッハ)』よりも『炎帝の剣(エウリリス)』の方が攻撃力が高いのだ。それに、『炎帝の剣(エウリリス)』にはスキル【燃焼(エルサフィ)】がある。

 安易に受ければ、『聖剣(ハルバッハ)』が燃えてしまう。

 多少は耐えられるが、スキルによる攻撃を防ぐためには『幸運』を消費してしまう。


 ──ピコン!


----------


リアン:悪魔の子


 魔力:965

 物力:603


 幸運:732



炎帝の剣(エウリリス)


 魔力:0

 物力:520


 幸運:819


----------


 このコンビを、今の俺たちが倒すことは不可能だ。

 だけど、攻撃を無効化することなら。

 それだけに集中すれば。

 なんとかなるかもしれない。


 ──ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 この1ヶ月、俺は避けることに関してはかなり得意になっている。

 なぜなら、痛いのは嫌だからだ!


 とにかく攻撃を避けて、避けて避けまくる!

 そうやって、チャンスを待つんだ。


 ──ビュン!


 リアンの斬撃が、大振りになった。

 攻撃が当たらないことに焦れたんだ。

 いつものリアンならありえないが、今のリアンは冷静さを欠いている。


「ここ!」


(対物攻撃マックス!)



 ──ピコン!


----------


聖剣(ハルバッハ)


 対魔攻撃:□□□□□

 対物攻撃:■■■■■


 幸運:983

----------



 (『炎帝の剣(エウリリス)』先輩、頼むから空気読んでくれよ!)


 ──ガキィーン!


 剣を大振りしたために伸び切った腕。

 その瞬間の『炎帝の剣(エウリリス)』に『聖剣(ハルバッハ)』を叩き込んだ。

 俺の渾身(こんしん)の力を込めて。


「くぅ!」


 まともに受けた剣身から伝わった(しび)れが、リアンの腕に伝わったのだろう。

 リアンの腕は剣の重みに耐えきれずに、体ごと前のめりになる。


 まともに『炎帝の剣(エウリリス)』に当たったが、『聖剣(ハルバッハ)』は燃えていない。


(ありがとう、『炎帝の剣(エウリリス)』先輩!)


 ──ドッ!


 俺は、そのままの勢いでリアンに体当たり。

 (しび)れているであろうリアンの手首を、剣の(つか)で打ち()えた。


 ──ガラン!


 ついに、リアンが『炎帝の剣(エウリリス)』を取り落とした!


 ──ドサッ!


 その勢いのまま、二人して倒れ込んだ。


「ハァ、ハァ!」


 息が切れる。

 なんとか、乗り切った、か?



<ようやった! けど、これは『炎帝の剣(エウリリス)』パイセンのお陰やな!>


(それな)


<ほんでも、回避能力はリアン(ねえ)さんのレベルにも通用するんや。自信持ってええで!>


(おう)



「リアン!」


 ラフィーが駆け寄って来て、リアンの顔を覗き込む。


「ラフィーさん」


「落ち着いた?」


「はい」


「もう。私がちょっと泣かされたくらいで、毎度これじゃあ困っちゃうわよ」


 毎度なんだ。

 ……まあ、二人の出会いのエピソードを思えば、仕方ないかもな。


「すみません」


「いいのよ」


「ユーキは大丈夫なの?」


「無傷だよ」


「ふんっ。訓練の成果、出てるってことね!」


 なんで、素直に安心してくれないんだよ。心配してくれたくせに。



<ツンデレってやつちゃうんか?>


(ツンデレってのは、総合的には可愛いものなの!)


<ほんなら、ツンデレってことでええやん>


(なんで)


<やって、(あるじ)さんはラフィー(ねえ)さんのこと可愛い思てるやん>


(……は?)


<気づいてへんのか? 毎度毎度、憎まれ口叩かれるたんびに『でも可愛い』て思てるやん>


(……やめてくれ)


<なんで>


(とにかく、やめてくれ)






「ユウくん?」






「え?」


 この声は。


 振り返った先にいたのは、井野口千佳子(俺の好きな子)



「これは、どういう状況?」



 リアンの身体に覆いかぶさる俺。

 俺に押し倒されるリアン。

 そして、二人の顔を覗き込むラフィー。


 ちなみに、二本の剣はすでに姿を消している。


<こらあ、あかんな。修羅場(しゅらば)や>


 『聖剣(ハルバッハ)』の呑気な声とは対照的に、俺の体が一気に冷える。

 今夜2回目の滝汗だ。


「これは、その……」


 何か言い訳を、と思うのに舌が上手く回らない。


「とりあえず、どけよ明智」


 リアンが俺の体をグイッと押した。

 されるがままにリアンの上から退く。


「井野口さん、これには色々と事情があるのよ」


 すかさずラフィーのフォロー。

 ナイスだ!



「ユーキが私を泣かせちゃって、それに怒ったリアンをユーキが押し倒したのよ」



 全くフォローになってない!

 (おおむ)ね事実だが!

 

「ユウくん?」


 鋭い視線が、俺に突き刺さる。

 言い訳、なんか言い訳……。



<こら無理やな。何言っても、修羅場や修羅場>


(面白がるんじゃねえ!)


<やって、(あるじ)さん>


(なんだよ)


<揺れてるやん>


(揺れてる?)


<チカちゃんのことが好きやけど、ラフィー(ねえ)さんも可愛いし、リアン(ねえ)さんのこともほっとけへん>


(は?)


<優柔不断は、身を滅ぼすんやで?>




 いやいやいやいや!




 俺に限って、そんなことはないはずだ。

 優柔不断なんて、パリピのための言葉であって、俺に当てはまるはずがない。

 第一、これは事故だ!

 事故の結果、修羅場(しゅらば)になりかけてるってだけのことだ!


 俺のせいじゃねえ!




「ユウくん。ちゃんと、説明して?」




「はい」


 俺たちは4人でアパートに帰ることになった。

 井野口は高校生3人で暮らす俺たちを心配して、夕飯のおかずを届けてくれるところだったらしい。

 彼女が持って来てくれた差し入れが、カラアゲで。

 俺が賄いの代わりに貰って帰って来たのも、カラアゲで。

 おかずはカラアゲのみで。


 とてつもなく気まずい空気のまま、地獄の夕飯が始まった──。



 誰か助けて。

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