ショバ代は儲からないらしい。
気ままに投稿しています。
お付き合いも気楽にお願いします。
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このところ前世で使っていた便利グッツのオーダーが増えた。
すでに噂が噂を読んで、仲間うちだけからではなくなっていた。
僕はリーインリーズに錬金術師?としての腕を認められて、彼女を通して色々なオーダーを受ける。
たとえばこの異世界では、クーラーってもんがない。
イドゥス大陸のキコアイン一族の風土って、割と赤道直下にあるらしく、暑いんだよね。
夏の夜は最悪だ。
でも窓開けたら容赦なく虫が入るし、黄砂も入ってくる。
僕は母に似て色白で、汗をかくとアセモができるんだ。
虫も苦手だ。
朝起きた時にベットが砂まみれになっているのも耐えられない。
でも窓閉めて寝たら、夜蒸し暑くて地獄だし。
アセモでかゆいし。
異世界最低!!
現代社会じゃ冷暖房って常に完備だったもんね。
熱中症予防とかで24時間フル稼働してたあの世界が恋しい。
夏なのに、クーラー効きすぎて、寒って思う。
あの贅沢さ。
和木が言うように大量の電気がないと、快適空間は作れない。
だいたい館が大きすぎるんだよ。
光熱費、考えてないよね。
クーラー作ってもどんだけ電気いるんだよってぐらい、天井も高くて、一部屋も大きい。
僕の8畳一間の部屋なんて、こっちのベットよりも小さいよ。
仕方がないので、僕はベット周りにカヤを作った。
そしてそれを見たリーインリーズ伯爵は、彼女と彼女の妹のセドリーズのためにも同じものを作って欲しいとオーダーした。
和木の目がきらりと光る。
「お値段は少し張りますが、構いませんか?」
「厭わぬ」
ニヤリと笑っている。
こいつこんなに商売根性逞しくなるとは。
僕は呆れていたが、僕たちの財布の紐は和木君が握っていたので、何も言わない。
「この調子で電気でも開発したら、働かずに生きていけそうだ」
和木君には勤労意欲は皆無だった。
そうだよね。
元々893の組長を継ぐ人だったんだもんね。
就活とか縁遠かったと思う。
「あっちにいてもショバ代で稼いでた?」
僕が聞くと和木は冷たい眼差しを向けてきた。
暴力団いわゆる893関係組織が飲食店、風俗店、時には一般企業からも場所代(ショバ代)、用心棒代としてみかじめ料を徴収して得る利益。
いったいどれくらいなんだろう。
「んな甘いもんじゃねーよ」
和木は言った。
「ショバ代だけで生きていけたのはもっと前の世代。うちは花道の家元として得る収入の方が多かったぐらい」
「そうなの?」
「家は潰さなかったけど。親父はめっぽうモテたからな。テレビにも出てたし、明らかにそっちの収入しか多かったと思う」
「893の世界も厳しいんだね」
「そりゃそうさ。だいたい今の土建屋とかが慣れの果て。和歌山でもわりと最近、土建屋の事務所の社員の、拳銃立て篭もり事件あっただろ? 生き残るのはどこでもシビアだ」
「ふうん」
僕オタクなんで、三次元のニュースあんまり興味なかったよ。
なんとなく記憶にあるくらいだ。
「だいたいは足洗って、カタギになってるよ。うるさい時代だから、維持する方が面倒なんだって」
和木君はこれ以上前の世界のことを話すのが面倒になったのか、話を打ち切ってしまった。
とにかく稼げってことね。
今の僕たちは自分たちが暮らす家を持つことが目標。
目標なんて持つことになるとは思ってもみなかった。
ゲームできてればそれでよかったんだけどなぁ。
少しだけ変わりたい。
そんな思いでバスケ部に入部したら、なぜか今異世界転生しちゃったし。
この夏僕たちは、本来ならば高校2年生になっていたはず。
あのインハイに向かう事故から、もう一年と少し経過していた。
「オタク家を建てるまで」:2020年12月15日
気分転換に投稿している作品のキャラが、まあまあ活発に動き始めているので、オタクシリーズを再び。
楽しい間は続けようってことで。