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未成年でも異世界には法律がないから、酒飲んでやる

こんばんは。

なかなか忙しく、昼休憩執筆タイムとは言えないものの、オタクシリーズも始動し始めました。


一人称は肩が凝らんでいい。

        ※


 ツンデレ和木が用意していたものは、祝いの席の料理だけではなかった。

「美味しい水だ、これは。わいも正月は飲んどったで」

「は? 何?」

 この世界水は確かに美味しかったけど。


 樫木が買ったゴージャスなテーブルに並んだのは和木の手料理だったが、樽に入った飲み物を見て、僕は首を傾げた。


「こここ、これって酒?」

 あ、またチックが出動した。


 異世界にきてけっこうマシになってきたけど、驚くと出るんだよなぁ。


「普通に飲んでたけどな。なんで正月だけなんだ?」

「うちは御神酒ぐらいしか許してくれやんかったからな。正月の御神酒はたらふく飲んだ」

 和木も樫木も、僕と同じ高校生だったはずなのに。


 こいつら……。

 日本の法律なめてる。


「こっちの酒は主に葡萄を発酵させたもんだ。でもワイン以外に美味い酒ってもっとあるから、儲かる(もうかる)と思って試しに作ってたんだ」

 高校生のいうセリフか?


「わい、日本酒しか飲んだことないから、こっちのワインは肌に合わんで困ってたんや。日本酒作れたんか?」

 目をキラキラさせて体を乗り出す樫木に、和木は言う。

「ひと通りの食材が供給できる庭を作ったと言っただろ?」


 この小さな面積の庭で?

 僕達は必要最低限ってぐらいに過小評価していたんだけど。


「今なら前の世界で食べていた料理、全て再現できる。フォアグラとかは残酷なんでやってないけどな……」

 和木、そこは優しいんだ……。


「米は作った。てかそれは一番最初に目をつけて作ったから、日本酒なんてとっくにできてる」

「はぁぁ?? おまえ麦製品ばっかり出してただろ? パスタとかパンとかそんなんばっかりやったやないか!?」

 樫木のツッコミに、僕もその横でうんうんとうなづいた。


「僕だってさ、食べたかったんだけど、米!!」

 急に味噌汁の味が懐かしくなったよ。


「日本人だからそうなるよな。同意見だ」

 和木はしらっと答えてくる。

「だったらなんでもっと早く、それ食卓に出さんかったんや?」

 そうだそうだ!


「んっとさ、米ってのは暑い国じゃ育ちにくいし、あと育てたところで日本の米みたいに美味くならない。それにこの国の文化では喜ばれないだろうな。金儲けだけ考えるなら、無駄だったからな」

 欧米人や西洋人の文化から考えたら、多分和木の言うことは正しい。


 あいつらは結構、味音痴だった。

 素材の味なんて重要視しない。


 前いた世界で、僕達は知識を持っていた。


「てことで先に暑い国でウケる、麦からできるビールを作った。というかビールは半分できかけていて、でもアルコール度数が強くてまずかったので、それを改良した。たぶん流行る」

「ーー!」

 僕達は言葉を失った。


 和木は何でも商売中心に考えている。

 すっ、すごいんだけど……。


「米とか、それで作った酒は完全に嗜好品。俺たちだけのな」

「それがこれかいな?」

「ああ」


 僕はごくんと息を飲んだ。

「美味しいお水、ね!? 僕達は未成年!!」


「ちゃうちゃう!」

 樫木が僕の肩に手を回した。

「こっちの世界じゃわいらは成人しとるって。合法や」


「そうだな。あっちの世界でも、成人年齢決めてるのって大人の勝手や。日本だって平安時代の成人年齢はもっと若っかった。勝手に変わって行くのが法律だな。だから守るのはつまらない」

 真理だけどさ。

 一般市民って法律が絶対なんで、僕は一人複雑な気持ちになる。


 それが顔に出ていて、僕が目の前の美味しい水を飲まないでいると、和木は不思議そうだった。

「前の世界では、おまえが一番世界に抵抗してきたのに、どうしてだ?」

「はぁ!!?? ぼっ僕のいったいどこが!?」

 くっと和木が口のはしをゆがめた。


「義務教育なのに、不登校の引きこもり。子供なりに、おまえが一番社会に抵抗してきたんだと、思っていたんだけれど、違うのか?」

「そやなぁ。わいは学校は行かなあかんと思って、イヤイヤでも行ったわ」

「単に黒田がいたから学校に行ってただけだけれどーー。少なくとも俺たちは前いた世界で、学校に行くことはあたりまえだったわけだ」


「せいぜい隠れて酒飲むくらいや」

「そうだな。不眠症の若者に酒を飲めって教えてくれる大人はいない、バカみたいな世界だった。薬の方が、体に悪かったとしてもな」


 僕は何だか納得した。

「うん。飲もう!!」

 成人年齢なんて、時代によって違うことは、僕だって知識で知っている。

 まして僕らがいた世界でも、若者に選挙権を与えるだとか何だとかで、成人年齢が引き下げられるって話がニュースになっていた。


 僕にとって初めてできた友達の和木が開発してくれた酒だ。

 一緒に異世界で苦労してきた仲間が囲む祝いの席だ。


 僕はぐいっと、美味しい水(たぶん日本酒)のグラスを傾けた。








感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後

5「炎上舞台」

5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」

6「魔女裁判後の日常」

7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

9「脱冥府しても、また冥府」

10「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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